世界初のテレビゲーム
目次
その他のこと
以上で説明はだいたい終わりです。
以下、知っておくとより楽しめる…かもしれない、細かな話題です。
ネズミの体力について
あらためて、ネズミの体力について書いておきます。
スタート時のネズミの体力は、チーズの数により異なります。
チーズが1つ…つまり、ゴールまでの間に「体力回復」することがない場合は、300で始まります。
チーズが2つ以上の場合は、100で始まります。
体力回復する場合(つまり、チーズが2つ以上置かれた場合)は、食べるごとに +100します。
途中にチーズが置かれた場合でも、置かれない場合でも、ゴールまでの最大体力は 300 と言うことになります。
ところで「300」および「100」は、8進数表記です。10進数でいうと、192 と、64。
迷路は 8x8 で構成されているので、64マスです。
あり得ないことですが、一度も方向転換せずに全マスを通ると、体力は64減ることになります。
袋小路から戻る際には、1度通った道を通ることになるので、ネズミはくるくると方向転換を繰り返し、周囲を確認しながら戻ることになります。かなり体力を消耗します。
ゴールまで 192 の体力で行かなくてはならない、というのは、実は結構厳しい制限です。
おそらく、「全マスを通る」という迷路を作ることはできないでしょう。
この制限の中で、どれだけ「ネズミが面白い動きを見せる」迷路を作れるか、というのが勝負となります。
隠れキャラ
MOUSE には隠れキャラが存在しています。
…ゼビウスの28年前にですよ!
MOUSE のプログラムを、アドレス 4400 から開始すると「VIP版」として遊べるのです。
後で追加された機能ではなく、オリジナルからこんな遊びが入れられていたのだ。
この時、ネズミはチーズを探すのではなく、マティーニグラスをハシゴする、アル中ネズミとなります。
まぁ、キャラクターが変わり、チーズを「食べる」アニメーションも変化する、というだけなんですけどね。なにぶん世界初のテレビゲームなんですから、遊び心としては十分かと思います。
どうやったらプログラムをその番地から始められるのかって?
それは、あえて説明しないことにします。隠れキャラですから。
TX-0 エミュレータの説明書には、TX-0 の詳細な使い方も書いてありますので読んでみてください。
僕の見解
以上、「迷路のネズミ」の楽しみ方を記してみました。
どう思ったでしょうか? これはゲーム? それとも違う?
自分でできることは、ゲームの「開始前」に、フィールドをくみ上げることだけです。あとは見ているだけ。
見ているだけだからゲームでない、という人もいます。
でも、それだと「インクレディブル・マシーン」はゲームでないことになります。結構人気あるシリーズなんですけどね。
または、シムシティ。あれだって、フィールドを「デザイン」したら、あとはほおっておくだけのゲームです。
いろんなタイプの経営シミュレーションとか、古くはプリンセンスメーカーみたいなゲームもそうかもしれませんね。
好き嫌いがはっきり分かれるジャンルのゲームであることは事実です。
これらをゲームでない、と考える人にとっては、残念ながら MOUSE もゲームではないことになります。
まぁ、考え方は人それぞれですし、構いません。
ただ、目的があり、それを阻む障壁があり、工夫することで楽しめるものは「ゲーム」だと僕は思っています。
そして、それがコンピューターを使わないと楽しめないタイプのものであれば、コンピューターゲームです。
ディスプレイがないと楽しめないのであれば、テレビゲームです。
冒頭に書きましたが、MOUSE 以前にもテレビゲームとされるものはあります。
1952年に EDSAC で作られた3目ならべ(Tic-Tac-Toe、日本でいう「マルバツ」)である「OXO」と、1958年に作られた「Tennis for Two」です。
前者は、「工夫することで楽しめる」と言う点が足りないように思います。
その点で後者は、文句の付けどころないものです。ただし、テレビゲームではあっても、コンピューターゲームではありませんでした。
Tennis for Two は、アナログコンピューターで作られていました。
面白くないといけないのか? デジタルコンピューター上のソフトウェアでないといけないのか?
もちろん、そんなことはないと思います。ゲームは「遊び」なのですから、遊び心…広い心を持って接しなくてなりません。
だから、こうでなくてはならない、なんて決めつけはいらない。OXO も Tennis for Two も、それぞれが別の基準において、「世界初の」テレビゲーム。
そして、MOUSE も世界初のテレビゲームだったと考えます。
現代人が一般的に考えるように、コンピューター上のソフトウェアで実現され、楽しむことができる最初のテレビゲーム。
同時に、世界初の「キャラクターゲーム」でもあります。
アナログコンピューターでは表示キャラクターに凝ったりすることは難しく、絵が表示できるのはソフトウェアの利点でした。
隠れキャラがある、というのも、はじめてキャラクター表示を行ったことと無縁ではないでしょう。
ソフトウェアで簡単に絵が変えられるから、遊び心で違う絵も入れてみたのだと思います。
自分で確認するまでは、僕も「これはテレビゲームではないだろう」と思っていたのですけどね (^^;
遊べる環境は揃えましたから、同じように思っている人には、ぜひ自分で遊んでみてほしいと思います。
その時は残念ですが、「ゲームでない」と思ってもらっていて結構です。
先に書いたように、好みの問題はありますから。
参考文献 | |||
ハッカーズ | スティーブン・レビー | 1987 | 工学社 |
MOUSE--Preliminary Instructions | John E. Ward | 1959 | MIT |
MOUSE Program punch tape | John E. Ward | 1961,1966 | MIT |
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