世界初の…
目次
まとめ
今回紹介したゲームを、歴史の流れを考慮してまとめると右図のようになります。上に書かれたものほど、時代が古いです。
一番上の、赤字で書いた2つは、テレビゲームではありません。しかし、テレビゲームに強い影響を与えています。
背景が黄色の部分は、アナログコンピューターによって作られたものです。水色はデジタルコンピューター上のソフトウェア。ある意味では、今のテレビゲームに一番近いです。緑は回路によって作られたもの。
ゲーム特許は、ゲームの詳細がわかりませんが、現状では詳細な文献の残る一番古いものです。世界初のテレビゲームと呼ばれる十分な根拠です。
しかし、誰にも知られずに忘れ去られています。もちろん「源流」ではないため、現代のテレビゲームの先祖、と言う意味では世界初ではありません。
OXO や Tic-Tac-Toe は一応勝敗がありますが、勝つための戦略と言うものが特になく、「引き分けにする」のが最善手です。
多くの人にとって、楽しくありません。この意味では、ゲームではありません。
しかし、楽しいかどうかは主観によるものなので決定的ではなく、これらを世界初のゲームと呼んでも問題はありません。
ところで、OXO は「源流」ではなく、Tic-Tac-Toe は「迷路のねずみ」に影響を与えた源流です。
それを考慮すれば、OXO と Tic-Tac-Toe は別の観点から、それぞれが「世界初」です。
Tennis for Two や、SPACE WAR! 、BROWN BOX / ODYSSEY は、勝敗をゲーム機が判定してくれるわけではありません。
しかし、人間を相手として遊ぶゲームなので「相手との了解により」勝敗が決まります。
片方が勝てば、もう片方は負けるのです。
Tennis for Two はこれらの中で一番古いものですが、「源流」ではありません。
SPACE WAR! は次に古く、源流です。
BROWN BOX は「家庭用」の源流ですが、試作機で広く認知されません。
ODYSSEY は実際に発売された「世界初の家庭用テレビゲーム機」です。
この4つもまた、別の観点から「世界初」と呼べることになります。
COMPUTER SPACE では、対戦相手をコンピューターにすることで、1人用でありながら擬似的な「対戦」を行い、勝ち負けを判定したうえで、その回数をカウントします。
PONG では二人対戦であるうえ、やはりどちらが勝ったのかをコンピューターが判定し、その回数をカウントします。
コンピューター上で、ゲームに必須の「勝敗」を判定した最初のゲームでした。
この2つは、「世界初の業務用テレビゲーム」です。
しかし、「業務用」である以上、商業的に成功することは条件の一つとなります。
COMPUTER SPACE は業務用を目指したが失敗し、PONG で成功しました。
ここでもまた、別の観点からそれぞれが「世界初」と呼べます。
特に PONG の影響力は強く、PONG がヒットしたために「類似のゲームが入っている」ODYSSEY の売り上げが急に上がったそうです。
そして、これ以降「ゲーム業界」が形成されます。
多くのゲームの源流と言う意味では、今回挙げた中で最後発の PONG を「世界最初のゲーム」と呼ぶことに違和感はありません。
ここまでに挙げなかった唯一のものが「迷路のねずみ」です。このゲームは対戦したり、なにかを破壊するものではありません。そのため、勝敗判定がわかりにくくなっています。
そもそも、当初からゲームを目指したわけではありません。
しかし、当時このプログラムを見た多くの人は、「ネズミがゴールする」ことが勝利であり、「空腹で動けなくなる」ことが負けというゲームとして認識したようです。
時代的には SPACE WAR! よりも古く、SPACE WAR! に影響を与えています。
ソフトウェアで作られ、最初にキャラクター表示を利用した、現代的な意味でのテレビゲームでもあります。
そのため、「迷路のねずみ」もまた、世界初のテレビゲームの1つとなります。
以上、登場したすべてのゲーム(構想だけのチェスマシンと、デモだった Bouncing Ball を除くもの)が、いずれも「世界初」と呼ぶのにふさわしいことがご理解いただけるでしょうか?
世界初のテレビゲーム、というネタは興味を持つ人が多いようで、研究内容も探すと結構見かけます。もちろん、僕だって興味を持つから調べているわけです。
しかし、どうも「時代が一番古ければ世界初」と考えている人が多いようです。現代に影響を全く与えていなくても、ただ古ければよい。…その考え方は、非常に危険です。「世界初」の方にとらわれ過ぎて「テレビゲーム」の定義を忘れてしまっているためです。
先に「将棋倶楽部24」の例を挙げていますが、この「テレビゲーム」は事実上将棋盤にすぎません。
事実上の将棋盤がテレビゲームであるなら、本物の将棋盤を世界初のテレビゲームと認定しよう、という論法も可能です。
それを許してしまえば、いくらでも古い時代に「世界初」を作り出せてしまうでしょう。
実際には、何かが急に登場する、なんてことはあり得ません。技術や思想は、少しづつ進歩し、洗練されるのです。
テレビゲームは「誰かが」発明したものではなく、徐々に形作られたものです。だから、世界初は多数ありますし、あって当たり前なのです。
これ以上はあまり多くを語る必要はないでしょう。それぞれが世界初であるとする根拠はすでに示しました。まだ見ぬ「世界初」が新たに発掘されたときも、同じように世界初の栄誉を与え、だからと言って他の作品が世界初であることを否定する必要はないのです。
ゲームに一番大切なのは「遊び心」だと思っています。これは、余裕を持った心、寛大な心です。
ゲームを研究しているのに、「こっちが世界初で、そっちは違う」なんて考えは野暮ってもんです。
参考文献 | |||
ハッカーズ | スティーブン・レビー | 1987 | 工学社 |
その他、WEB上の各種ページ |
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