伊豆大島 旅行1日目(4/5)
目次
ぱれ・らめーる
貝の博物館「ぱれ・らめーる」は、大島町勤労福祉会館の中にあります。
勤労福祉会館って…つまるところ、公民館だな。
一階には食堂とボーリング場があります。
そして、一階の奥と、2階が「ぱれ・らめーる」になっています。
これが、想像以上に素晴らしいものでした。
何が素晴らしいって、個人のコレクションが町に寄贈される形で作られた博物館なんですって。
つまり、集めてあるものは個人の趣味丸出しです。
お勉強色の強い博物館ではなくて、「どうです、すごいでしょう?」って、個人のセンスがさく裂した展示内容。
これ、誉め言葉ですからね。
「博物」って「なんでも」って意味ですけど、博物館が本当に何でも集められるわけではありません。
何かの指標で集めるものを絞り込んで、それだけを収集します。
この時に、うすぼんやりと収集したら面白いものにはならないんです。
だれか、強烈に取捨選択を行える指針を持った人がいたほうがおもしろくなります。
そして、その個性が展示内容にも活かされてれば、なおよいのです。
ぱれ・らめーるは、そうした博物館でした。
1階入り口前…入館料の不要な食堂の一角には、コレクションの一部が置かれています。
ただ、ここにあるコレクションは「貝」ではないものもあります。
貝をテーマにした工芸品と、工芸品のような貝、といえばよいでしょうか。
かわいらしいカタツムリの置物…世界各地で収集されたものが置かれています。
カタツムリは貝だけど、それをかたどった置物は貝ではない。でも、個人の収集家としては集めたかったのでしょう。
また、本来小さな貝を、その美しさをそっくりに、大きな木工製品として作った置物があります。
これは、本物と木工細工を並べて置いてあり、その精巧さがわかるようになっています。
かとおもえば、「テンシノツバサ」なども置いてあります。
これは、工芸品かと思うほど美しい貝殻。名前の通り、絵に描かれる天使の翼のようになっています。
テンシノツバサは有名な貝なので知っていたのですが、近縁種に「ペガサスノツバサ」などがあるのは知りませんでした。
というわけで、我が家的には博物館に入る前の展示だけで充分盛り上がりました。
中に入ります。
「海の中にようこそ」ってことなのですが、伊豆諸島で昔からテングサ漁で使われているものなのだそうです。
一階の展示は、難しいこと抜きに、貝の色の美しさ、形状の美しさ、奇妙さなど、「面白い」ことを中心とした展示でした。
ヒオウギガイを色ごとに分けてワイングラスに入れてあったり、食べられる貝をザルに盛り合わせにしてあったり。
色が美しい貝は色を見せるように展示していますし、形がおもしろい貝は形がわかるように展示しています。
断面を見せるように、わざわざ切ってある貝もあります。
とにかく「魅力を伝えたい」という気持ちが伝わってきます。
最後のほうに、オキナエビスを集めたコーナーがありました。
オキナエビスのいろいろな種類を並べてあるのはもちろん、「盛り合わせ」と称してザルにごちゃっと入っているんですけど…
オキナエビスって、原始的な貝が生き残っているグループで、生きた化石とされます。珍しいです。
このグループでも、リュウグウオキナエビスは、ギネスブックにも記載された「世界一高価な貝殻」で、1万ドルの値がつけられたことがあります。
そんなわけで、貝の収集家にはよく知られた貝です。
それを、ザルに盛り合わせに…まぁ、これは比較的珍しくない、ベニオキナエビスなのですけど。
2階は2部屋に分かれていました。
まず、いろいろなタイプの貝の標本が並べられている部屋。
比較的小さな貝が多いですが、端のほうには巨大な貝も置いてあります。
1階で十分に貝の面白さを知ってもらったら、ここで自分の好きな貝を探してほしい…そういう感じの展示です。
そして、最後の部屋は、貝についてのお勉強の部屋。
生物学的な分類に従って各種の貝を並べてあります。
ヒトデに寄生する貝など、奇妙な生態を持った貝についても言及されます。
タカラガイの断面もありました。
長女はタカラガイの仲間が好きで特に集めているのですが、以前から、あの「口」の部分はどうなっているのだろう? と考えていました。
巻貝ならだんだん成長していくのですが、タカラガイの、両側から巻き込んでいるような形状は、成長で作られるように思えない。
明らかに巻貝で、ある程度成長すると成長が止まり、「口」の部分が作られるのです。
なるほど。長年の謎が解けました。
特に興味を持ったのが、生息環境によってサザエの貝殻の形状が大きく異なる、という話。
波の荒いところではサザエの棘が発達するのに対し、波の穏やかなところではあまり発達しないのだそうです。
それを裏付ける、「水槽で育てた」貝殻とともに、3種類の生息環境での成長がわかるように並べられていました。
水槽で育てると、棘がほとんどありません。
ということは、あの棘は波で転がらないように発達するものなのか…
ここではその答えまでは示していませんが、事実だけでも十分に興味深いものです。
非常に小さな貝の仲間を見ていた長女が「あー、これ、さっき砂浜にたくさん落ちてた」と声を上げました。
砂の浜で貝を採取していた時、小さくて丸くて半透明なものがたくさん落ちていたのだそうです。
でも、プラスチックビーズのゴミが打ち寄せられているのだと思って無視してしまった、と。
小さな貝の仲間でした。
こんな感じで展示は終了。
貝という狭い世界をテーマにして、非常に深くて広がりのある展示内容でした。
…まぁ、うちは貝が比較的好きで、貝の研究者であるチェンさんの講演会を聞きに行ったりしたこともあるので、こんなに楽しめたのかもしれませんけどね。
先に、火山博物館のことも書きました。
火山博物館も、集めている資料は悪くないんですよ。ただ、展示の見せ方が面白くないだけ。
貝の博物館は、個人で収集したものを、その本人が展示方法を決めて作られたものです。
だから、貝に対する愛を感じますし、「魅力をほかの人にも伝えたい」という気持ちが伝わってきます。
火山博物館のほうは、どうもそうした思い入れを感じないのです。
資料はそろっているのに、その魅せ方で失敗している。それが残念です。