今日はテレワーク・デイらしい。
3年後の今日に東京オリンピックが開幕するそうで、3年後に向けてテレワークを増やそう、という意図。
オリンピックは、海外からも多数の人が来ると予想される。
タダでさえ過密な東京が、もっと過密になる。
じゃぁ、東京で働いている人のうち、東京に来る必要がない人が、東京に来なければいい。
実際、ロンドンオリンピック(2012)ではそういう理論で、テレワークを推奨したところ普及したのだそうだ。
日本もそれに倣おう、という試み。
1990年代後半がインターネットの普及黎明期なのだけど、2000年に入ると ADSL が普及し始め、家庭でも常時接続が増える。
これにより、情報だけであれば、家庭にいても気軽に入手できるようになった。
会社に出向かないと仕事ができない人…営業とか、直接顔を合わせないとどうしようもない人はともかくとして、そうではない人は家にいても仕事ができる。
情報ではなく「もの」を相手にしていたとしても、時々成果物を提出すればいいことにして、在宅作業を増やせる。
そのようにすると、会社は大きなオフィスを維持する必要がなくなる。
家賃・土地代、さらにはオフィスの電気代などの光熱費、社員が集中することで社員食堂を用意しなくてはならない福利厚生費、社員に使わせるパソコンや机などの機材費…
その他、多くの出費を抑えられる。
「顔を合わせない」ことの効率の悪さがあったとしても、それを補って余りある節約効果がある。
これで、アメリカではテレワークが一気に広まった。
実は、会社がパソコンや光熱費に金を使わなくなった分、個人がパソコンを購入し、回線契約し、クーラーをつけて快適に仕事をしなくてはならない。
一極集中させればスケールメリットで安くできるところを、分散しているので効率が悪いともいえる。
でも、普段から趣味で良いパソコンを買い、速い回線を求めるような「技術者」にとっては、わざわざ仕事のために出費が必要、とは考えない。
それどころか、アメリカでは納税は個人で行うから、「趣味のもの」が「仕事のもの」に変わることで、必要経費となって税金が圧縮される。
何と言っても、快適な我が家から出なくてよいのだ。
会社では「眠いから昼寝」なんて許されないけど、自宅ならそれも可能。
依頼された仕事を、期日までにちゃんと仕上げれば何も問題はない。
会社側にも、労働者側にもテレワークのメリットがあった。
アメリカではいち早く普及したが、イギリスでは普及が遅かった。5年は遅れていた。
そこで、先に書いたように、ロンドンオリンピックに関連付けて、テレワークの導入が推進された。
…イギリスの事情は詳しくは知らないのだけど、それで定着したというのだから、成功だったのだろう。
そして、日本だ。5年遅れていたイギリスよりも、さらに8年送れている。
干支一回りしているのだから、周回遅れと言っていいだろう。
実のところ、これまでにも何度も、テレワークの推進策が取り入れられている。
でも、全く定着しないままここまで遅くなった。
技術的な問題ではない。今や多くの家で常時接続が普及しているし、パソコンだって普及している。
テレワークは「全員に」強要するものでもないので、技術が不得手な人間はやらなくてもいい。
それでも普及しない。
つまりは、日本人のメンタルに徹底的に合わないのだ。
でも、メンタルって、結局「理由はない」ってことだからね。
会社の人事部と総務部と技術部が面倒を背負い込む覚悟があれば、十分に導入できる。
たぶん、それこそが一番難しいことなのだろうけど。
#これらの部署は会社を回す屋台骨だと思うのだけど、事務仕事だと思われ、軽んじられている。
十分な人員も配備されないので、面倒を背負い込むことなんてできない。
以前にも書いたのだけど、多分日本で一番テレワーク導入を難しくしているのは、「月給」という給与体系。
月給とは言っているけど、実際には時給で、1日の勤務ノルマがある。
勤務ノルマは、労働内容ではなく、時間だ。8時間会社にいればよい。
逆に言えば、有能な人でも仕事をさっさと終わらせて自由にすることができない。
それどころか、有能だから手が空いたら、別の仕事が持ち込まれる。
無能な奴の作業までやる羽目になって、給料は一緒。
だから、有能な人は「爪を隠す」必要がある。会社としては労働効率が上がらない。
労働効率が上がらないとわかっているから、残業することを前提に、基本給は低く抑えられている。
残業が前提なので、勤務時間管理が必須で、タイムカードを押す必要がある。
これがテレワークと恐ろしく相性が悪い。
基本給をあげ、残業せずとも残業代「以上」の給与が出るようにして、時間ではなく「労働内容」を重視しないといけない。
作業の目的を明確に与え、そのミッションをクリアすることで成功報酬を出す、という給与体系。
確実に作業が行われる前提なので、会社にとってもリスクが少ない。
そうなると、仕事さえできれば勤務時間は関係ない、という話になる。
ここに来てやっと、テレワークが可能になる。
アメリカでは元からそうした労働形態だし、イギリスでも同じようだ。
日本ではまだそうなっていない。…一部の企業はそうしているようだけど、多数派ではない。
ここら辺の話、以前に詳しく書いた。
僕は自分でも勤務形態がよくわからないのだけど、まぁテレワークなのかな、と思う。
企業に雇用されているわけではない、フリーランスの立場だ。
でも、仕事を受けている間は密接に連絡を取り、与えられた「要求仕様」にかなうプログラムを作っている。
期日までにモノが完成すればよい。
この期日だって、無理難題を押し付けられるのではなく、合意のうえで決めている。
金銭面も含めてね。
だから、手に余ると思えばお断りすればいいし(報酬はなくなるが)、納期が短いと夜遅くまで作業したりもするが、その苦労に見合う報酬をいただければ問題はない。
仕事を自分でコントロールしている、ということ。
…と言うと、聞こえは格好いい。
大抵は、納期に間に合わなかったらどうしよう、と思いながら、頑張って前倒しで作る。
早く完成してしまわないと不安だからね。納期より早く完成して困ることは、なにもない。
だから、必要なら夜遅くまで作業するし、それで眠ければ昼寝する。
そういう「柔軟な生活」ができるのも、テレワークの良さだ。
昼寝していると、依頼主(そこそこ大きい会社)の副社長がいきなり電話かけてきて、ビビったりするけど。
直接の担当者は別にいるのだけど、副社長がフットワーク軽い人で、質問があると末端の技術者にも気軽に電話してくるのね。
その姿勢は嫌ではないのだけど、「みんなが働いているはずの時間」に昼寝している、テレワークの悪い面でもあります。
数時間後に追記
総務省・厚生労働省が作ったテレワーク推進企業ネットワークのページを見ると、テレワークの導入の問題を
・技術と、その技術を導入・運用するコストの問題
・見えない場所での勤務時間をどう管理するか
に分けて考えているようだ。
後者、このページに書いてある僕の主張とは異なるのだけど、日本で導入しようと思ったら、やっぱり勤務時間管理をしたくなってしまうのかもしれない。
でも、そもそも勤務時間で縛る日本の管理方法のままテレワークを導入しようとすると、面倒(コスト)ばかりが増えて、メリットがあまり得られないように思う。
(というか、アメリカで話題になった 2000年代後半には、日本でもこの方法で導入しようとした企業が結構あり、コストの増加に耐えかねてみんなやめてしまった。
失敗に学ばなければ、同じことを繰り返すことになるだろう)
新聞などで見る限り、時間管理をやめて労働内容に対する報酬、という賃金体系に移行する会社も、大企業・中小企業問わずに出てきてはいるようだ。
でも、そうした企業は、わざわざ新聞報道されてしまう程度には珍しい。
労働方法に対する意識を変える、いい機会だと思うのだけどな。
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