予定していた2つ目の場所へ。
地下鉄丸ノ内線有楽町駅…コメダ珈琲の前からさらに階段下がると繋がってるのね。
ここから、飯田橋まで。
飯田橋からは歩いて10分ほど。凸版印刷内の「印刷博物館」が目的地です。
ここでやっている特別展「名著誕生展 ヴァチカン教皇庁図書館Ⅲ+」を見に来ました。
現存する世界最古の図書館が「バチカン教皇庁図書館」だそうで、2世紀ごろの写本から収蔵しています。
凸版印刷はそのデジタル保存技術に協力しているのだそうで、通常ではとても借りられない貴重な本を借りてきて、展示しています。
で、先回りして書いておくと、この特別展はそれほどすごくありませんでした。
というか、十分にすごい内容だったのだけど、特別展の前に見ることになる「常設展示」の方がはるかに面白かったので、期待値を高めて行ったら肩透かしを食らった感じ。
常設展示は、印刷の歴史です。
まず入ると、「プロローグ」という展示がある。ここの展示は一切解説がない。
ハンムラビ法典を刻んだ石柱とか、ロゼッタストーンとか…まずは「情報を文字として伝える工夫」がごちゃ混ぜに置いてある。
その後、展示物の下部にはミニチュアで「情報を伝えようとする人」の造形が付き、その頃の「情報物」が上に並ぶ。
洞窟壁画から始まり、石に碑文を刻み、写本の時代があり、活字が発明されて、グーテンベルグの印刷機、輪転機、電子植字に至る…
あ、これ、「本好きの下剋上」のアニメ第三期 ED で見た奴だ。
今調べたらやっぱりそう。ここのミニチュアにインスパイアされて作ったのだそうです。
ここで「大まかな流れ」を掴んだうえで、実際の細かな説明が始まります。
ところで、プロローグの広場の端に、現存する中では最古級の印刷機…の「レプリカ」が置いてあります。
実物を持っているドイツの博物館があり、共同研究で凸版印刷がレプリカを2台作ったのだそうです。
1台はドイツの博物館にあり、1台はここにあります。
実物は貴重品だけど、レプリカなら実際に印刷してみせることができます。
というわけで、毎日15時から10分間、説明して印刷の実演が行われます。
この日は14時ごろに博物館に入ったので、途中で戻ってきて実演を見ました。
まぁ、機械を見れば想像つくようなことしかやらないのですが、実際の印刷を見せてもらえるというだけでも、なかなか興味深いものでした。
さて、プロローグの次は、その内容が実際に解説されます。
この説明部分が本当に素晴らしい。大きな部屋に、古い「印章」などの技術から始まり、印刷が発展していくさまが、実物と解説で分かりやすく示されています。
技術の発展には時代の要請もあるので、それがどういう時代で、なぜその発展が必要だったか、ということも示される。
そして、発展した技術がそれまでと違って「何が良いのか」も書かれている。
一方で、壁には大きな年表が作られ、そこで展示されているものと、「それ以外」の印刷関連の事柄がまとめられています。
展示などには入っていないのだけど、「プルシアンブルーの発明」なども入れられている。化学合成顔料・染料は、印刷を大きく前進させたからね。
木版活字が最初に作られたのが韓国だとは知らなかった。中国だと思ってた。
でも、ハングルは「活字にしやすい」ことも考慮されて考えられた文字体系なのか、と思うと妙に納得。
江戸時代の草紙本とか、崩し文字でつながっているので、手でいちいち彫っているのだと思っていた。浮世絵版画作るような職人もたくさんいるので、文字を彫るのも大変ではなかったのだろう、と。
しかし、つながった崩し字一つながりごとに活字になっているのだそうです。つまりは「単語ごと」の活字。木版活字なので、同じ文字でも微妙に形が違っていたりして、だからこそ「全部手で彫っている」のだと思っていました。
また、活字は「文字しか扱えない」ので、絵を表現する印刷技術の話も同時に進んでいきます。
線を「彫り残す」凸版よりも、線を「彫り込む」凹版の方が細かな線を表現しやすい。
解体新書の初版は凸版だったけど、後に凹版で再出版されているそうで、両方が並べて置いてあります。同じものが並んでいるので、技術の違いの利点がよくわかる。
そして、凹版でも「彫る」必要があるのを、「描く」だけにした平版印刷へ。
すごく細かく説明されているのに、ほぼ最後付近にあった「写植機」のイメージ復元では説明なし…
僕は理解しているので子供に教えながら操作したのですが、多くの人が「操作してみたが、意味が分からん」という感じで通り過ぎていきました。もったいない。
解説も細かく読んでいたのでたっぷり時間をかけました。
目当ての「ヴァチカン教皇庁図書館」の展示に入ったのは、もう16時近く。
先に書いたけど、基本的にはラテン語などで書かれた本が並んでいるだけです。
ここまでの展示が解説もあるし、場合によっては手を動かして学べる内容だったので、見てもよくわからない言語の本を見るだけ、というのは少し退屈。
あと、「ヴァチカン教皇庁図書館」展ですが、もともと印刷博物館で収蔵していたものが多めです。バチカンから借りてきた本と、それに関連する収蔵書籍を一緒に並べることで深みを出している、という意味で悪くはないですが、思ったほど希少本がなかったのも事実。(印刷博物館収蔵の本も、十分希少ではあるのですが)
いくつか印象に残っている物だけ解説します。
最初に、過去に行われた展覧会の振り返りが、概要で示されていました。
まず、凸版がバチカン図書館のデジタルアーカイブ作成に協力していること。
羊皮紙の本は、羊皮紙自体が高価で貴重なものだったので、「書いたものを消して使いまわしている」ことがあること。
そして、以前の内容を、赤外線撮影で読み出せる技術があること。
そうやって多くの本を赤外線で記録した結果、人の手には負えないほどのテキストが出てきたため、現在 AI を使った解析プロジェクトが進行中であること。
すでに、完全に失われたと思っていた福音書の一部が再発見されたり、成果が上がっているのだそうです。
最初の方には、非常に古い時代の写本なども置かれていましたが、僕が気になったのは「禁書目録」。
なんかオカルト方面ではすごい力を持つ本だということになっているのですが、実物は「教皇庁によって禁止と決定した本のリスト」なんですね。まぁ、禁書目録という名前から当然か。
教会では昔ながらのやり方を守ることが重視されていて、聖書なども写本を良いものとしていたのだけど、禁書目録は「どんどん増える禁書」を速やかに、多くの教会に示すために、活字印刷でたくさん作られたのだそうです。
教会も必要に応じて最新技術を取り入れる。
さて、そんな「禁書」とされたものも展示されています。
コペルニクスの「天球の回転について」や、ガリレオ・ガリレイの「星界の報告」など。
先の禁書目録と合わせ「生爪はがされそう」とは妻の言葉。
(「チ。」ですね)
デカルトの書籍に関しては、初版本に、デカルト自身が直筆で欄外に直しを入れたものが展示されています。
次の版からはその内容に変わっているらしい。
デカルトって、「我思う、ゆえに我あり」の人ね。
「当たり前」を徹底的に疑って、周囲にある目に見えるもの、触れるものも否定して、それでも「それを考えている自分は否定できない」というところから世界を構築しようとした哲学者。
ニュートンの「プリンキピア」もあります。
複雑な数式が並んでいる。ここで、数式を組版することがいかに大変か、解説ビデオが流されています。
クヌース教授とか、組版時に数式に間違いが入りやすいのにイライラして、全く新しい「コンピューター組版システム」を作り上げていますからね。
これは1980年代の話ですが、今でも数式を多く含む書籍を出版する際のスタンダードになっています。
あと、世界初の百科全書「エンサイクロペディア」もあります。
今では「エンサイクロペディア」という言葉は一般名詞で百科事典の意味ですが、元は本のタイトルとして作られた造語だったのね…。
最後の方は、だんだん時代を現代に近づけていって、ヨーロッパで出版された書籍が日本の文壇にどのような影響を与えたか…というような展示になっていきます。
最後には鉄腕アトムや鉄人28号もある。ほぉ、当時は鉄人の方が人気あったのか。
で、ヴァチカン教皇図書館展は終わり。
出口付近に印刷工房があります。見学や体験は予約が必要。
この日は時間がないだろうと思って予約していませんでしたが、ガラス越しに見るだけでも十分面白い。
いろいろな時代の印刷機が並んでいます。
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