IHについて

目次

IHの使い勝手

IHは火力が弱い?IHはエコロジーではないIHの電磁波は人間に害がある

そのほか

IHで料理すると、臭いが部屋に充満するトッププレートが熱くなるので危険IHは鍋が振動するのがいやIHで使える鍋は限られるの?IHは微妙な火加減ができないのでは?IHは故障しやすい?IHだって火事が起こると聞いた子供が本物の火を知らない状態にしたくない

IHの利点

揚げ物が楽手入れが楽湯沸しが速い

IHの欠点

ガスコンロではない


IHの電磁波は人間に害がある

まず、「IHの」かどうかはともかく、電磁波に害があるのかどうかが問題です。

電磁波で小児ガン・小児白血病が引き起こされる、という噂は有名です。IHが人間にとって害がある、と考える人も、多くはこの噂を信じてのことでしょう。

実際、国際がん研究機関(IARC)は、家電品からでる電磁波のうち「磁界」(磁力波)にガンを引き起こす疑いがある、と発表しています。また、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)は電磁波の強度を制限しており、IHからはこの強度にちかい電磁波が出ている、という測定結果もあります。

そもそも、ICNIRP のガイドライン自体が危険で、そのガイドの強度では小児ガンを引き起こすとされる強度を遥かに上回ってしまう、という主張もよくみかけます。


…が、安全です。少なくとも現在のところ、IHの電磁波に害は無いと考えられています。

ICNIRP のガイドラインは、小児ガン・小児白血病の噂も含め、十分に正しい調査が行われたうえで定められていますし、IARC の「ガンを引き起こす疑い」も、今のところ気にする必要はありません。


そういわれても安心できない、という方は、別ページに詳細をまとめましたのでお読みください。

白血病の疑い、という噂は何なのか? IARC も「疑いがある」としているのに、なぜ安全だといえるのか? ICNIRP のガイドラインは、なぜ妥当性があるといえるのか? …などなど。電磁波の害についての科学的調査の歴史と、現状認識をまとめてあります。




というわけで、納得していない人は詳細を読んで納得してから先に進んでください。

詳細ページは「電磁波の害」について一般論を書いたものでしたが、以下はIHに限定して話をします。


まず、IHクッキングヒーターからは、2種類の周波数の電磁波が出ています。電源に使用されている50~60Hzの「極低周波」と、加熱に使用される 20kHzの超長波、オールメタル対応機種では 60~90kHzの長波も使用しています。


各社の「よくある疑問」などのコーナーから、IHの電磁波に対する説明を読んでみましょう。

ナショナルは「心配ない」というだけで、IHから出る電磁波の強さについて、説明していません。

日立の説明もナショナルとほぼ同様です。心配ないとするだけで、その根拠は説明されません。

東芝の説明によれば、IEC62233にしたがって測定した結果、磁界強度は電源部で 5μT以下、加熱部分で 1μT以下で、ICNIRPの基準以下である、となっています。根拠を示した真摯な態度です。


日立は、このページを作成した2009年時点では、東芝と同様な詳細情報が書かれていました。非常に良い態度だと感心したのですが、データを掲げるのは一般に理解されにくいのでしょうね。根拠のない説明になってしまったのが残念…

財団法人家電製品協会が、平成19年(2007年)にIEC62233に従った方法で実際の測定を行っています。結果は最後のほうにグラフの形で載っており、ICNIRPの基準に対して、どの程度の強さだったか、で示されています(複数の周波数を同時に計測しているため、個々の磁界の強さは示されません)。しかし、ICNIRPガイドラインよりはずっと低い(1割以下の値しか出ていない)ことがわかります。

日本電機工業会では、詳細な情報が示されています。ただし、メーカーのページではないので一般論に始終していて、具体的なデータが書かれていないのが残念です。


このページの作成時には、日本電機工業会のページはありませんでした。このページがあれば、私もここまで詳しい解説ページを作らなかったでしょうね。
ところで、日本電機工業会のページ、いたるところに「ビラ」や「ある書籍」の存在が書かれています。なんか、都合の悪いことが書かれたビラや書籍が存在したので、慌てて作られたページのようです。
だとしても、そんな「特定の論説への反論」である事を明示しないでもいいのに。後手後手で応戦しているようで格好悪いです。


個人の方で、自宅のIHを計測した結果を公表している方が居ます。これは IEC62233に従った計測方法ではありませんが、距離による「実測値」がわかるため、興味深いものです。

これによれば、IHコンロの前に張り付いた状態でも 27.4mG (=2.74μT)です。IEC62233では、IHの場合「30cm離れて」計測することになっていますから、これだと 1.51mG (=0.15μT)です。(実際のIEC62233では、IHの周囲4方向で、30cm離した場所で、上下方向に移動した箇所でも計測し、最大値を採用します。)

これは「極低周波」はカットして、「超長波」だけで計測した値…つまり、加熱周波数だけを計測した値ですね。(写真のモードダイアルの位置でわかります)

いずれにせよ、ICNIRP の定める、加熱周波数での6.25μTよりは、低い磁界しかでていないようです。


同じく実測した値を公開している別のページもありますが…IHのトッププレートに乗せてしまう、というのは計測方法が明らかにおかしいですし、30cm離した時の計測方法でも、値が変です。

おそらく、これは極低周波用の電磁波計測器を使って、超長波を計測してしまっています。超長波のほうが周波数が高く、エネルギーも高いために、このような使い方をすると計測器が異常な値を表示してしまうのです。道具は正しく使いましょう、としか言いようがありません。他にもこのようなページが多数ありますが、冷静に見分ける必要があります。


さて、ここまで書いたところで、「ガイドラインに準じている」ことしかわかっていません。懐疑派の人は「ガン発生リスクはどうなんだ」ということが気になるでしょう。

疫学的な研究によれば、50~60Hz で、4mG 以上の磁界に「恒常的に」さらされている子供は、小児白血病の発症リスクが2倍程度に高まることになっています。

ただし、これは現在では否定される傾向にあります。IARCは「念のために」疑いがあるとリスク評価していますが、IARCの立場では完全に否定できる証拠がそろうまでは、リスクがあると考えるしかないためです。

また、50~60Hz の周波数以外では「研究はされていません」。つまり、リスクが有るか無いか、まったくわかりません。

懐疑派の人たちによれば、IHの加熱周波数は50~60Hz の周波数よりもエネルギーが高いので、害は「あるに決まっている」ようです。しかし、周波数が高ければ害がある、という主張では、もっと周波数の高い可視光線などは危険きわまりないことになってしまいます。根拠の無い推定はおこなわず、科学的に議論しなくてはなりません。




ちょっと話が脱線します。

第二次世界大戦後、まだ台所で薪を使うのが当たり前だった時代、GHQは「女性の地位を向上させる」施策の一環として、ガスコンロを普及させようとしました。

薪の火は火力調節が難しく、近くで見守らないといけない上、煤なども出るために視力を落とす女性が多かったためです。

しかし、これに対して世の多くの男性が反対しました。「昔からの日本の伝統を守れ」「薪の強い火力でたかないと、米飯はうまく炊けない」などの主張に混ざって、「ガスは人間に害がある」というのも広く信じられた説でした。

実際、ガスは爆発しますし、不完全燃焼で一酸化炭素を発生させることもあります。ガス火を燃やしている部屋にネズミを入れると、やがて二酸化炭素が充満して死んでしまう、というような実験も、害があることの証拠にされたようです。

しかし、不完全燃焼は薪でも起こりえますし、二酸化炭素は薪でも出ます。結局、ガスが普及して薪を駆逐したのは多くの人がご存知の通り。


僕としては、IHの電磁波を問題にするのは、これと同じ問題だと思います。出始めだから、いたずらに不安を煽る人もいるでしょうが、普及してしまえば別に怖いものではない、という結果に終わると思います。実際、揚げ物をする時など、IHのほうが遥かに安全だと感じています。

(過信するのは禁物で、IHだから大丈夫、と揚げ物中にコンロをつけっぱなしにして離れてしまい火災になったような事例もあります。IHのほうが安全ではあるが、絶対大丈夫ではないという、当然の話)




そのほか

ネットで良く見かける主な主張は上の3つなのですが、他にも細かな「疑問」や「質問」などもあるようなので…


IHで料理すると、臭いが部屋に充満する

あぁ、ガス会社のキッチン比較で説明されたのですね。そうでしょうとも、ガスキッチンと同じ設備でIHを使うと、換気扇が効果を発揮できず、臭いが部屋に充満します。

ガスの場合、周囲の空気を温めるため上昇気流が生まれ、上にある換気扇に向かってにおいも一直線に進みます。これに対し、IHでは上昇気流が弱いため、「ガス用の換気扇」までは届きにくいのです。

だから、IHを利用する際はIH用の換気扇を使用してください。IH用の換気扇は、換気扇の下のほうから空気を送り、上昇気流の流れをサポートします。これらの換気扇は、「屋外から取り入れた空気で巻き込んで、屋外に空気を排出する」構造なので、冷暖房で整えられた部屋の空気も無駄にしません。

…新築の場合ならともかく、コンロだけ変えたい場合にはリフォームが必要になってしまいますね。ガス線しか来ていないところに200V の電源を持ってこないと、IHへの交換は出来ないので、どちらにせよ工事は必要なのですが。


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(ページ作成 2009-03-19)
(最終更新 2012-06-20)

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