魔法使いとはなにかって?

やぁ、久しぶり。その後の旅はどうだった。・・・いゃ、なにも君が旅ばかりしているのでないことは知っているよ。しかし、人生というのは常に旅のようなものだからね。

どうせ、ここに来る前にもいろいろな家によってきたのだろう?


まぁ、お茶でも飲んでゆっくりしていってくれよ。


それで、何の話だっけ。あぁ、魔法使いのことか。

なにも、魔法使いというのは迷信深い中世に活躍しただけではない。むろん、現代になって活躍を始めたわけでもない。

どんな時代にも、魔法使いはいたのだよ。ほんの一握りだがね。魔法を使う者の呼ばれ方は時とともに変わり・・・共通することは、彼等がつねに差別の対象になってきたということだけだ。


そうだよ。差別だ。彼等は、豊富な知識を持ちすぎるがゆえに差別されてきた。為政者にとってじゃまだったからということもあるし、深すぎる知識が周囲に理解されなかったということもある。

最近の用語でいえば、エンスー、マニア、ハッカー、オタク・・・すべて周囲の人間が注目しない分野について深い知識を有したものたちを指した呼び方だ。彼等が差別されてきたことは周知の事実だろう?


多くの場合、彼等は単に探究者であり、技術者であるだけなんだ。

共通しているのは、人一倍知識欲が強かったというだけさ。


もっとも、これらの人々・・・面倒なので一番古い用語を使って「魔法使い」と呼ぶが、魔法使いには2つのタイプがある。

学んだ知識や技術を人々に広めるために腐心する者と、研究だけを生きがいに、周囲との接触を絶ってしまう者とだ。いわゆる「白魔法使い」と「黒魔法使い」と呼ばれる区分だな。


前者の場合でも差別を受けることは多いが、後者になるとほぼ確実に差別を受ける。当然いわれのない差別だ。


私はどちらかだって? 当然前者だよ。それでなければ、森のこんなに入り口に近いところに小屋を構えてなんかいないさ。

まだコンピューターというものは、人々に十分理解されていない。本当はもっと使いやすい物になるはずなのだが、商売のためにそのことを隠して、現状を「素晴しいもの」として売り込む輩が多すぎる。

私の仕事は、困っている人々に道を示し、より良い未来へ導くことだと思っているよ。


哲学者か。そうだね。知識欲という点では、魔法使いというより哲学者なのかもしれないな。

哲学というのは、なんでも新鮮に感じ取り、その感覚を保ったまま物のことわりあらわにすることだよ。これは知識欲としては究極の形だ。周囲にあるものすべてに対して深い知識を持とうというのだからね。

そして、これは非常に難しいことだ。

常識を持たない人間は生きていけないが、常識というのは物事を新鮮に感じ取れなくなったときにでき上がることだからね。哲学者はあらゆる先入観・・・常識を捨てされる者でなくてはならないんだ。


え? あぁ、気がついたか。

そう、新しきを保ち、理を顕わす。私の名前だよ。


私の名は新保顕理しんぽあきよし。魔法使いとしてこの森に暮らしている。


この名前は本物かって? さぁ、どうだろうね。

昔から、魔法使いの名前は謎に包まれているのさ・・・・

(ページ作成 1997-01-19)

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