綱一本の魔法

野外生活では、何かをしようとしても道具や材料が無い、という事がよくあります。その逆に、たったひとつのものが道具にも材料にもなる事も多いです。

後者の典型、便利な装備のひとつにロープがあります。日常生活ではあまり使う事の無いものですが、野外でロープの使い方を知っているのと知らないのでは、出来る事に雲泥の差があります。


どの文化でも、文明が未発達な時には、特別な結びには魔法が宿ると信じられていたようです。西洋にもその結びを解いたものが世界を支配する、という「ゴルディアスの結び」という伝説がありましたし、ネイティブアメリカンの一部部族では結び目を使って計算をしたり文字のかわりにしていたりしました。

現代の日本でもこのような習慣は残っていて、新年に締め縄をしたり、お祝いごとのときに水引を結ぶのはその名残です。


このように、各文化が伝えてきた結びというのは非常に奥が深く、その一部を紹介するだけでも分厚い本が書けてしまうくらいですが、ここではキャンプで応用が利きやすい結びをいくつか紹介したいと思います。

目次

本結び 蝶結び ひとむすび 巻き結び ふたえ巻き結び 張り綱結び


本結び

もっとも基本的な結びです(図左)。しかし、これすらも出来なくて結び目が縦になってしまう人もいますが、それはたて結びという別の結びになります。

(たて結びは非常に弱い結びで、簡単にほどけてしまいます)

本結びはしっかりとした結びである一方、ほどきたいときには簡単にほどける特徴を持っています。

同じ側のロープ2本を持って思いっきり引っ張ると、ほら、そのロープがまっすぐになるでしょう? あとは結び目を横にずらせば簡単にぬけます。(図右)



蝶結び

本結びよりもこちらの方が普段から親しまれているかも知れません。花結びとも呼びます。(有名なので図は省略)

単純な結び方のわりに出来上りの形が美しく、ほどくときも簡単だと言う特徴を持ちますが、結びの力が弱いために簡単にほどけてしまいます。


ひとむすび

これは単体で使われることのない結びですが、この後紹介する結びと組み合わせて使ったり、それらの結びの基本となるものです。

木などに巻きつけたロープに作る結びで、ロープの先に輪を作ります。

結びを2個連続して作ると、「ふたむすび」と呼ばれ、こちらは引っぱられている限りほどけない強い結びになります。



巻き結び

おぼえておくと非常に便利な結びです。ふたむすびをロープではなく直接木などに作ったのが「巻き結び」ですが、ロープが引っ張られている限りゆるみません。また、結ぶときには、締めやすくゆるみにくいという特徴があります。

(図は、上から下に結びの手順です)


単純なだけに応用範囲は非常に広く、2本の木をロープで結んで物干しを作ったりするときにも使えますし、薪のような細いものを束ねるのにも便利です(薪束をゆすりながらロープを引き締めていくと、非常に強く結べます)。

ロープが引っぱられていないとゆるみやすいので、薪を束ねたりする場合は最後に本結びをしてとめておきます。

また、ロープの片側だけが引っぱられるときは、余った側の端を引っぱられるロープの回りにひとむすびで止めておくとゆるまなくなります。


巻き結びは巻く向きの違う2つの輪が組みあわさっただけの結びですので、棒の端の近くにロープを結ぶときは

・ロープの途中で2重の輪をつくる

・片側の輪を、逆の側に来るようにひねる

・結びたいものに輪を通す

という手順で、ロープの端を探すこともなく簡単に結べます。


この方法は昔から干柿をつくったりするのに使われています。(1本の紐にたくさんの柿を結び、つり下げます)

また、キャンプではポールの上に張り綱を結ぶときに使われます。


ふたえ巻き結び

それほど使われる結びではありませんが、巻き結びを強くした結び方です。

最初に巻いた部分は上から2重に押さえつけられていますので、簡単にはゆるみません。そこで、この先に重いものを結んで木にぶらさげたりすることが出来ます。

一般的な用途は、このように「木に取っ掛かりを作る」ことでしょう。

巻き結びやふたえ巻き結びを木に直接行うと木の表皮を傷めることがあります。巻くときは木を新聞紙などで保護し、そのうえから巻くように心がけましょう。



張り綱結び

構造的には、ひとむすびの先でロープに対してふたえ巻き結びをしたものです。通常は、左端の輪の中に木やペグ等が入ります。

応用範囲はそれほど広いと言えませんが、便利な結びです。その特徴は、伸縮自在でありながら、勝手にゆるむことはない事です。その名の通り、張り綱・・・テントを支える綱を、伸縮させて張りを調節出来るように使います。


これをおぼえておくと、テントに付属の専用ロープがなくても物が建てられます。たとえば、長い棒に旗をつけて建てておく事も出来ますし、棒2本をロープで結んで建て、物干しにする事も出来ます。


余談になりますが、前回のタープもそうですが、張り綱はたいてい2本がひと組みになります。(というか、1本のロープの中央に巻き結びをつくってポールに結び、その両側を張り綱結びでペグに結びます)

張り綱が結び付けられているポールはどちらかの方向に倒れようとするでしょうから、その力に対して左右均等な角度にペグをうつようにします。こうすれば、力に対して逆向きに支えられるはずです。(変な打ち方をすると、余分な力が加わってテントが歪んだり、倒れたりします)


力学ベクトルの問題ですね。2つのベクトル(張り綱)の力は、そのベクトルを2辺とする平行四辺形の対角となります。


お伝えしたい結びはもっとあるのですが、だんだん複雑になるのでここまでにしておきます。

お伝えできなかったものでも、連続8の字、もやい結び、腰掛け結び、など、災害救助や自分が避難するときに非常に役立つ結びもあります。このようなものはキャンプをしない人間でも覚えておくにこしたことはありません。


また、1本のロープに絡めあうように複数の結びをして、端を引っぱると出した以上に強い力で締められる・・・というまさしく魔法のような結びもあります。

(トラックの運転手が荷台のシートを締めるのに使っている結び方です)


ロープ結びに興味をもった方は、ぜひ本を買って学んでください。ロープ結びの本はたくさん出ていますから、簡単に見つかると思います。

2004.1.19 追記

さまざまなロープワークを紹介するページを発見

トップページからも、うちのページとずいぶん共通した興味を見受けます。興味がある人はどうぞ。

(ページ作成 1997-04-13)
(最終更新 2004-01-19)

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