時計の話(2)

先日、東急ハンズでおもしろい時計を見つけました。

おもちゃ会社のトミーから発売されている、「ギルドクロック」というシリーズの「マイクロ・フライングモデル」というものでした。

ギルドクロックシリーズは振り子発見以前の時計を再現しているようで、時計の精度は実用にならないほど低いです。

調整が難しい上、うまく調整しても一日に15分は狂うと思ったほうがよいでしょう。(調整がうまくいかないと、2時間くらいは簡単に狂います)

その一方で、仕組が単純で動きの面白さがあるので、トミーとしてもインテリアとして販売を行っているようです。


今回は、ギルドクロックの単純な構造を題材に、時計の仕組についてお話ししようと思います。



機械式時計の構造を誤解を恐れずに言い切ってしまうと「進もうとする機構」と「止めようとする機構」のバランスで成り立っているといえます。「正確に進もうとする」なんていう機構はありません。

進もうとする機構の動力源はゼンマイであったり錘であったりしますが、とにかく針をぐるぐる回そうとします。放っておけば、ほんの数秒で1日分動いてしまうでしょう。


今回題材にとった「ギルドクロック」シリーズでは、ゼンマイを動力にしています。ゼンマイをいっぱいに巻いて、動作時間は1日をわずかに超える程度です。

止めようとする機構は、もちろんこの針を止める働きをします。これを「脱進機」といいます。

時計の正確さはほとんどここで決まるわけですが、振り子の等時性(一定時間で動く性質)が発見される以前の機械式時計では、ここに工夫がこらされていました。


フライング振り子式の時計は、ぐるぐる回るアームの先に糸で振り子がつるされています(時計上部)。アームの周りには糸に引っかかるように棒がついているため、この振り子はたえず棒に巻ついたり、離れたりしています。


フライング振り子の動作。
 回転する振り子は、まず左図の様に短棒にひっかかり、下にある長棒に絡み付き、勢いを失ってほどける。
 勢いを失った振り子は、次に右図のように逆回転で長棒だけに絡み付く。
 この後、ほどけた振り子は逆サイドにある棒で同じ動作を行う。振り子が1回転するのに、およそ4秒弱。


これは結果的に「回転を止める」動きをしますから、脱進機として働くわけです。調速(時計の動く速さを調節すること)は、糸の長さを変えることで行います。


調速を行う機構のことを調速機といいます。現在の時計では正確さを確保するために脱進機と調速機は別々の機構になっていますが、初期の機械式時計ではこの2つは一体化していました。

動力と脱進機があれば、時計の基本的な構造は完成です。あとはこの2つによって「正確に」動き続ける軸に、針をつけてやれば時間を目で見る事ができます。

普通は針は1日に2回転しますから、調速機の性能とあわせて考えたときに丁度良くなるように歯車で速度を変えてやります。


今回取り上げたモデルでは、針は時間を示す1本だけです。これだけでも15分単位くらいには時間が計れますから、「正確でさえあれば」実用になります。


歯車と針。
左:この時計では針は1本しかないが、写真の位置では9時45分を示しているのがちゃんとわかる。
右:文字版の裏には歯車が並んでいるが、これらは単純に針の回転速度を調節するだけのものである(歯車の一番手前にあるのはゼンマイ)。


分針を追加したり、秒針を追加したりしたければ、歯車を増やして60倍の速度で動く針を追加してやれば良いだけです。また、1日に針が1周する「24時間時計」や、針が逆に回る「逆転時計」も歯車を変えれば作れるわけです。(複雑な機構は、限られた空間に歯車を収めなくてはいけないため、理論ほど簡単には作れないのですが)


私も最近まで時計の詳しい仕組は知らなかったのですが、調べて見ると拍子抜けするほど単純でした。今回はちょうどいい題材もあったので説明して見ましたが、理解できましたでしょうか?

今ほどの「工夫」がされる前の単純な時計であれば、原理を勉強するにはちょうど良いと思ったのですが…

(ページ作成 1996-11-16)

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