パスカリーヌの仕組みと操作
以前に「パスカリーヌ」を紹介した後、読者の濱本克大さんよりパスカリーヌの操作方法の資料を御提供頂きました。
(本文にも書かれていました、内山昭教授の著書「計算機歴史物語」がそれで、現在は絶版のようです。貴重な資料をありがとうございました)
大変遅くなりましたが、その内容をお伝えいたします。
パスカリーヌの操作
操作盤には、数字表示とダイヤルが並んでいます。数字表示は上下に2段になっているうちの片側を目隠し板で隠すようになっており、その上下は足して9になる関係になっています。
ダイヤルは溝(図の青い部分)に鉄筆を引っ掛けてまわすように作られているのですが、手前側にはこの鉄筆を止めるための金具(図の黄色い部品)がついています。
そして、ダイヤルの周囲にはこの金具から反時計周りに、0から9の数字が書き込まれています。
この数字表示とダイヤルは歯車で繋がっており、ダイヤルを1目盛り回転させると数字が1つ動きます。
つまり、数字に対応した溝に鉄筆を差し込んで時計周りにまわすと、金具で止まるまでに数字のぶんだけ表示が変化します。
ダイヤルの下にはピン歯車があり、90度の角度で別の歯車と組み合わさっています。その先には0〜9の数字が上下2段に並んだ円筒があり、その数字が1つだけ見えるように窓があいています。
この変化は、すなわち「足し算」もしくは「引き算」に相当します。先ほど書いたように表示は2段に別れていますが、このうち片側に注目すれば足し算、もう片側に注目すれば引き算になるようになっているわけです。
また、表示が9から0に切り替わるところでは、計算機内部で隣の桁の歯車に引っ掛かるような突起がついており、桁上がりを正しく処理します。
基本的には、パスカリーヌでは足し算か引き算しか出来ません。
しかし、筆算の原理を使えば、これで乗除算も計算ができることになります。
私が疑問に思っていたことの一つに、「なぜ複雑な機構をつかってまで、パスカルは計算を機械で行おうと考えたのだろう?」ということがありました。
有名な話としては「税務官吏であった父のため」となっていますが、ここまで面倒な機械を使うくらいなら、手で計算した方が楽でしょう。
しかし、その答えもこの本にはのっていました。
パスカルの住んでいたフランスでは複雑な貨幣体系を使っていたのです。
一番小さな単位、ドゥニエは、12で1スーとなります。スーは、20で1リーヴルとなります。そして、リーブルは10進法で表記されるのです。
つまり、税務官吏の仕事は、10進数と12進数と20進数の混ざった単位を、ただしく四則演算出来なくてはならないのです。これでは数字に強い人でも音をあげるのも当然です。
実際、作成されたパスカリーヌのいくつかは、貨幣計算用の歯車がついています。
さて、3リーブル18スー8ドゥニエの品物と、8リーブル12スー11ドゥニエの品物を買って、15リーブル払いました。おつりはいくらでしょう?
あなたがこの計算を瞬時に出来ないのであれば、パスカリーヌを必要としているわけです。
参考文献 | |||
計算機歴史物語 | 内山昭 | 1983 | 岩波新書 |