可算と非可算
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可算と非可算
前のページと似たような問題を考えます。
実数と自然数では、どちらが多いでしょう?
実数と言うのは、連続した「すべての数」のことです。
これも、先の問題と同じように「対応」を考えてみます。
先ほどと同じように、0に近いところから対応付けていきましょう。
0 は、先ほどと同じように1番目とします。
つぎに1を2番目に…?
いや、1よりも 0.1 のほうが、0に「近い」から、それが2番目?
0.1 よりも 0.01 のほうが、…いや、0.001 のほうが…
実は、これを考え出すとキリがありません。
小数点以下に0が百個並ぼうが、千個並ぼうが、もっと小さな数を作るのには、0を増やすだけでできます。
先ほど、0から近いところから対応を…と書きましたが、0 の次、2番目を決めることができない状態になります。
2つのものを対応付けて、どちらかが先に無くなれば、そちらが少ない。
これが、「比較」の本質でした。
自然数と整数の個数を比較する場合も、同様に「比較」を行いました。
ただ、どちらも無くならなかったので「同じ」と判定しただけです。
しかし、自然数と実数では、そもそも対応をつけることができません。
その理由は明白です。実数のほうが、自然数に比べてはるかに数が多すぎるのです。
0に「一番近い」と仮に考えた数字は、0との間に無限の実数を持っているのですから。
整数の個数は、無限大でした。これは「これより大きなものは無い」という概念です。
でも、それは自然数と対応付けられる、言い換えれば「数えられる」程度の無限大でした。
それに対して、実数は数が多すぎて、どこから数えてよいのかもわからないほどでした。
無限大の大きさは比べられないけど、整数の個数の「無限」と実数の個数の「無限」は、明らかに違うもののようです。
それぞれを「可算無限大」と「非可算無限大」と呼びます。
「算」というと、計算、という言葉が思い浮かびますが、前のページに書いたとおり計算はできません。
漢字の「算」には、「かぞえる」という意味があり、そちらの意味で使われています。ちなみに、英語では countable infinity と uncountable infinity。
可算無限大よりも、非可算無限大のほうが、はるかに大きな無限大です。
…いや、大きい、というのは適切ではありません。数として大きいわけではありませんから。そもそも、無限大は大きさを比べられません。
より適切に言うなら、非可算無限のほうが、はるかに「濃い」と言われます。これは、一部を取り出してみても、無限大という性質が変わらないためです。
自然数は、可算無限大の個数が存在します。しかし、「0~100の間の自然数」と限定されると、個数は無限大ではなくなります。
それに対し、非可算無限大の個数が存在する実数は、「0~1の間の実数」と限定されても、やはり非可算無限大の個数が存在するのです。
このように、「ほんの一部を取り出しても性質が変わらない」ことから、濃いといわれます。