限りなく近い
目次
1に限りなく近い数
ここまでに書いたとおり、実数は「非可算無限大」の個数が存在します。
非可算無限の濃度は非常に濃いため、その一部をとっても非可算無限です。
0 から 0.00001 の間に入る実数の個数は「非可算無限大」です。
これは、どんなに範囲を狭くしても同じです。
どんな数の間にも、無限に実数が入り込む隙間があります。
では、また別の問題。
0.9999999… と、小数点以下に 9 が無限に並ぶ「限りなく1に近い数」と、1 の間には、どれほどの実数が入り込めるのでしょう?
これまた厄介な問題です。
先ほど、どんな数の間にも無限に実数が入る、と書いたばかりです。
でも、 0.999…が、「限りなく」 1 に近いのであれば、どれほどの実数が入るのか?
答えは、1つも入らない、です。
なぜなら、0.999… と、1 は、同じ数だから。
0.999… は「限りなく 1 に近い」だったはずなのに、実は 1 と同じ、とは。
これまた、狐につままれた気分。
説明 その1
こちらも、理屈を説明しておきましょう。
1/3 を小数点であらわすと、 0.333… となります。3 は無限に続きます。
小数点表記は、10進法です。言い換えれば、1/10 や 1/100 でないと綺麗に表記できません。
1/3 というのは、10進法にとっては中途半端で、うまく表記できません。
そのため、無限に同じ数字が現れてしまうのです。
しかし、「無限に同じ数字が続く」場合でも、計算はできます。
ここは「無限大」が計算できないのとは違うところです。
1/3 = 0.333…
は正しい式です。
では、両辺を2倍してみましょう。
2/3 = 0.666…
無限に続く「3」は、それぞれの桁が 2倍されて「6」になりました。
1/3 は、2倍されて 2/3 になりました。
これも正しい式です。
では、同様に3倍ではどうでしょう?
3/3 = 0.999…
無限に続く「3」は、3倍されて「9」になりました。繰上りなどはありませんから、これで正しいです。
そして、1/3 は、3倍されて 3/3 になりました。
ところで、3/3 というのは、1のことです。
ですから、次の式も正しいです。
1 = 0.999…
というわけで、「1に限りなく近い」と思っていた 0.999…は、限りなく近いのではなくて「1そのもの」でした。
…これも納得できない人が多いでしょう。
0.333… には丸め誤差が入っているのではないか?
だから、3倍したときに 0.999…になってしまうだけで、丸め誤差がなければ 1 になるのでは?
一応書いておけば、丸め誤差というのは「有限の桁数」で小数点以下を表現した場合に、計算しきれなくて値を「丸める」(四捨五入などをする)ことを言います。
電卓やパソコンなどでは、有限の桁数しか扱えません。そのため、1/3 の結果を 3 倍しても、0.9999999 などと表示されて、1 にはなりません。
しかし、0.333… * 3 = 0.999… には丸め誤差はありません。無限に続いているので、どこにも「丸め」は存在していません。
掛け算は、各桁ごとに掛け算を行い、足し合わせることで答えを出せます。
(筆算を思い出しましょう)
ここでも、各桁を構成する「3」に、3 を掛けただけで、計算上のトリックはどこにもありません。