その2
目次
強力な「武器」
ひたすら引き算する方法だけでは、大きな数の平方根を求めるには手間がかかりすぎます。
また、小数点以下を求めることもできないので、あまり実用的ではありません。
まずは、大きな数の平方根を求める方法を考えていきましょう。小数点以下、はまた後で。
ここまでに書いた知識は総動員されるから、ちゃんと理解してから読み進んでね。
まず、大きな数…という「ボス敵」に挑む前に、こちらも強い武器をそろえておきましょう。
交換則
まず、平方数の大切な性質をひとつ。
平方とは「掛け算」です。同じ数の掛け算。「二乗」っていうと特別に思えちゃうけど、別に特別ではありません。
何気ないことだけど、これ、すごく重要。
いくつもの掛け算があるときは、どの順番に行っても同じ結果です。
このことから、次の重要な事実が浮かび上がります。
2つの数それぞれの「平方」を掛けたものと、
それぞれの数を掛けてから「平方」を求めたものは、
同じ。
わかるかな?
ある数 A があって、平方 A × A があるとします。
別の数 B があって、平方 B × B があるとします。
(A × A) × (B × B) という数と、
(A × B) × (A × B) という数は、同じ、ということ。
普通は、数を計算するときは「最初に括弧の中」を計算して、それから外を計算します。
でも、掛け算は順番が違っても答えは同じになることがわかっています。
掛け算だけや足し算だけの場合は交換則を満たしますが、引き算・割り算や、掛け算と足し算が混ざった計算は、交換則を満たしません。
これは、3×5と、5×3が同じ、ということと同じです。
括弧は、「計算の優先順位」を示すものです。でも、順序が違ってもいいのだから、括弧をはずすことができます。
そこで、先に挙げた式のうち、片方
(A × A) × (B × B)
この式の括弧をはずしてみよう。
A × A × B × B
掛け算は順番を変えても同じなのだから、こう書いても答えは同じ。
A × B × A × B
括弧をつけたって、やっぱり答えは同じ。
(A × B) × (A × B)
というわけで、先にあげた二つの式は、同じだということがわかります。
これが
2つの数それぞれの「平方」を掛けたものと、
それぞれの数を掛けてから「平方」を求めたものは、
同じ。
ということです。
今の話は「平方」でしたが、平方の逆である「平方根」でも同じことが言えます。
なぜって? 平方根は、平方をただ逆にしただけだから。平方根は掛け算の仲間、それも「二乗」によく似たものなんです。
ここでは詳しくは書かないけど、次の交換則が満たされる、ということだけ覚えて置いてください。
A×B の平方根は、 A の平方根と、 B の平方根を掛けたものと同じ。
平方根の掛け算は、交換側を満たす。これが、すごく重要です。
100の平方根
もうひとつ、大切なことを確認。
10×10=100
です。すごく大事。
さっきの「交換則」のややこしさに比べて拍子抜けするほど簡単だけど、忘れてはいけません。
これも、逆にして平方根でも同じことが言えます。
つまり、100の平方根は10です。すごく重要です。
大きな数の平方根
さて、「交換則」と「100の平方根は10」の2つの武器がどんなに強力か、試してみましょう。
いよいよ、大きな数の平方根を求めてみます。
先ほどの計算例で、9の平方根は3であることがわかっています。
では、900の平方根は何でしょう?
ここで、900は 9×100 を使います。
交換則があるので、こうやって分解して、それぞれの平方根を求めてから掛け合わせても構いません。
9の平方根は3。100の平方根は10です。
この二つを掛け合わせて、30。これが、900の平方根。
もうひとつ、「とても大きな数」の平方根を求めてみます。
250000の平方根は何でしょう?
これは、25×100×100 。
25の平方根は、5。100の平方根は、10。
5×10×10 = 500。
つまり、250000の平方根は、500です。
ほらそこ、「100の倍数でずるい」とか言わない。
ここで重要なのは、「500の平方数を作るために、500回の足し算をする必要はない」ということです。
これがないと、大きな数の平方根なんて、とても求める気になれません。