エコキュートとオール電化

目次

エコキュート

湯切れの心配があるガスよりも給湯効率が悪い2階ではお湯が使えないお湯が直接飲めない設置面積が大きい冬は効率が落ちる

エコウィル・エネファームとの比較

オール電化

ライフラインを電気だけに頼るなんて怖いオール電化はピーク電力を上昇させる


冬は効率が落ちる

空気の熱でお湯を沸かすので、気温の低い冬は効率が落ちる…

といわれていますが、まぁ、余り気にすることはない…とおもいます。効率は落ちていると思うのだけど、気温が低いことよりも、水道水が冷たい事のほうが重要。冷たい水を温めるのだから、ガスだって効率が落ちます。

一応、エコキュートは CO2 を圧縮して圧縮熱を得ていますが、氷点下20度からでも130度の熱を作り出すのだそうです。その熱で90度のお湯を沸かすことを目的としているので、効率としては十分。




エコウィル・エネファームとの比較

書かないとまずいかな? やっぱ。

上では、基本的に「エコキュート」と「エコジョーズ」で比較していますが、むしろ比較すべきは最新技術であるエコウィル(エンジン発電と廃熱給湯の組み合わせ)・エネファーム(燃料電池と廃熱給湯の組み合わせ)なんでしょうね。

でも、僕自身エコウィルを使ったことも無ければ、使っている知り合いも居ません。エネファームは執筆時点でまだ発売前。だから、フェアな比較が出来ません。

自分はエコキュートを使っているわけで、使っていないものに対する迂闊な評価は、「悪口」となりかねませんが、調べられる限りで冷静に書いておこうと思います。




エコウィル・エネファームとも「発電しながらお湯を沸かす」と宣伝されていますが、メインは発電ではなく、お湯を沸かすことです。発電はエコウィルの場合、ガスのエネルギーの20%程度。エネファームでも33%。残りは「廃熱」としてお湯を沸かすことに回されます。

発電効率が低いので、発電のみを目的として考えた場合、エコウィルで作られる電力は、電気会社から買う電力よりも高くつきます。だから売電なんかしたらもったいないですし、そもそも法的な根拠がないため、売ることはできません。(法律は主に「自然エネルギー」を、買電単価と同額で売電できるようにすることを求めている。ガスで発電しても売れないわけではないが、単価が安くなるためメリットが無い。)

売電できないので、発電した電気を「使いきれる」と判断できる時しか発電を行いません。これは、過去の電力使用量の実績から推測しています。推測なので外れることもあり、電力が余った場合は…お湯を沸かすのに電力を使用しますが、これは明らかに効率が落ちます。捨てるよりはマシ、という程度。

発電だけで考えると却って高いわけですが、廃熱でお湯を沸かす部分まで考えると、やっと従来のシステムより得になります。そのため、あくまでも「お湯を沸かす」ことをメインに考えなくてはなりません。




お湯を沸かすのがメインなので、お湯が十分に溜まったら発電はそれ以上しません。ガスなら瞬時にお湯が沸くので無駄がない、と宣伝してきたガス会社ですが、エコウィル・エネファームの給湯速度は遅いので、瞬間湯沸しではなく貯湯式です。ガス会社がエコキュートの「弱点」のように悪口を言っていた貯湯式です。(補助熱源として瞬間湯沸かし器も付いていますが、これはエコジョーズのような高効率タイプではないようです)


エコウィルは140ℓ、エネファームは200ℓの貯湯タンクを備えますが、ここに満たされた水をエコウィルで75度、エネファームで60度のお湯になるまで沸かしていきます。以下、計算が多いのでエコウィルだけを対象にしますが、エネファームでも同様に計算できます。

スペックによれば、エコウィルは 2.8kW の湯沸し能力があります。1kW = 860kcal/h なので、2408kcal/h の熱を発生することになります。水1gを1度温めるエネルギーが 1cal、140ℓ(140kg)の水を1度温めるのには140kcalが必要です。2408/140 = 17.2 、1時間で17.2度上げることができます。別の言い方をしましょう。15度の水道水を75度のお湯にするとして、2408/(75-15) = 40.13 、1時間に40ℓのお湯を作り出せます。


エコウィルはお湯が溜まれば止まります。140/40 = 3.5、このままではおよそ3時間半しか動作できません。

午後5時から電気使用量が増えたとして、8時半にストップ。この前にお風呂のお湯張りをしたとして、75度のお湯80ℓで、大体41度のお湯が湯船いっぱいになるはずです(水道温度15度、湯船いっぱい180ℓで計算。(75*80+15*100)/180=41)。これで、あと2時間、10時半まで発電できます。

食器洗いに手洗いで40度のお湯を50ℓ使ったとして、75度換算だと21リットルほど。…11時には発電終了。大体この時間に寝るようなご家庭であれば、無駄がないかも。一応、この計算ではタンクの中は水なのであと3時間半は発電できますが、そうすると翌日の発電時間が減ります。


冬の暖房として温水床暖房を考えている、というのであれば、効率が非常によいかもしれません。暖房をしている、ということは家に居るのでしょうから、電気も使うでしょう。こういう「電気もお湯も使い続ける」状態が一番よいのです。温水床暖房の場合、大体1分間に60度のお湯を10ℓほどつかうそうです。冬なので水道水が10度として、2408/(60-10) = 48.16 、60度のお湯なら1時間に48ℓ供給できます…供給のほうが多いな。やっぱ、床暖房使ったとしてもエコウィルがずっと動いているわけではなさそうです。(実際には、60度のお湯が「なくなる」のではなく、循環して戻ってきますし)


最悪の場合を考えて見ましょう。5時から発電して、8時半にストップ。お風呂は前日の残り湯を沸かしなおし。この場合、貯めたお湯は使わずに、補助熱源…つまり「普通のガス給湯器」で沸かしなおしを行います(注:エンジン廃熱や、貯めたお湯で沸かしなおすシステムもあるようです)。食器洗いは水、または食洗機で…。この場合も、お湯は使いません(お湯を使う食洗機もあるけど、その場合の使用量は手洗いよりずっと少ないでしょう)。

これだと3時間半しか発電できず、お湯は翌日に持ち越します。翌日は、あるていど冷めたとはいっても、まだお湯があるのでさらに発電時間が短くなります。

これだと、せっかく高いシステムを導入しても、非常に効率が悪い状態になります。




エコキュートは「発電所の余剰電力」を使ってお湯を貯め、エコウィル・エネファームは「ガスで発電した廃熱」でお湯を貯める。どちらも、いままで捨てられていたものでお湯を沸かして貯めておこう、という発想で、根本的な部分は似ています。

根本的な部分が似ているので、いままでエコキュートに対して言われていたデメリットは、そのままエコウィル/エネファームのデメリットにもなります。もちろん、システムの違いにより多少の違いはありますが。

多分、一番の違いは「床暖房に向いているか」なんでしょうね。エコキュートで温水床暖房をすれば、すぐに湯切れを起こして昼間の高い電力で追い炊きします。これだとエコキュートの意味がない。逆にエコウィルで温水床暖房をしないと、すぐにお湯が満タンになってしまって発電できなくなる。これではエコウィルの意味がない。

エコキュートは空気の力でお湯を沸かすので、冬場は効率が悪くなります。エコウィルはお湯が沸いたらシステムがストップするので、夏場は効率が悪くなります。

ここらへん、どっちが良いとか悪いとかではなく、自分の生活スタイルに合うかどうかです。




オール電化

以下は、オール電化全体に対する批判に対する回答。そもそも、IHのことを書こうと思っていたら、「IHに対する批判」と「オール電化全体に対する批判」を混同している人が多いことに気づいたので書いておきました。

ライフラインを電気だけに頼るなんて怖い

電気が停電したらどうするの…というご心配ですが、実際に大規模な停電が起こることは、日本では近年稀になっています。

地震等の災害を伴わない大規模停電は、首都圏では、前回は2006年完全復旧に3時間ほど、その前は1999年に6時間ほど、さらにその前は1987年で4時間ほどだったそうです。10年に一度、半日程度を多いと見るか少ないと見るか…

大地震などの際は長期にわたり停電するわけですが、その場合でもライフラインの復旧が一番早いのは電気で1週間程度、ガスはかなり遅くて3ヶ月程度、というデータがあります

2011.3.28 追記。

2011.3.11に起きた震災により、東京電力管内、東北電力管内では計画停電が実施されています。

このことは、記事に明記すべきだと思いますが、まだ計画停電は進行中であるため、データが揃ってから追記します。


2016.11.25 追記。

その後の追記をしていませんでした。

結局、計画停電はほとんど行われず終了

電力状況は5年たった今でもあまり改善していませんが、生活する上では問題ないように見えます。


ここではエネルギー問題を扱いたいわけではないので深入りはせず、「ライフラインとしてどうか」だけを書いておきますと、あの震災の混乱の中でも、相変わらず電力はライフラインとして優秀でした。

「復旧」の定義にもよりますが、電力は3日で8割の世帯、1週間で9割以上の世帯が復旧しています。水道は9割越えまで3週間、ガスは5週間でした。


また、ガス機器といえど、近年のものは電気がないと動作しません。ガスコンロなどは電池式が多いのでよいとして、ガス給湯器やガス発電機は、ガスと電気の両方が復旧しないと使えないのです。

「どちらかが復旧すれば生活が元に戻る」ということであれば、リスク分散としてガスと電気の併用もよいかと思うのですが、「両方が復旧するまで生活が戻らない」のだと考えれば、併用は却ってリスクを高めることになります。

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(ページ作成 2009-04-09)
(最終更新 2016-11-25)

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