御来光を待つ

山頂について一休み。息を整えます。

富士山頂奥宮神社富士山奥宮浅間神社がありますが、すでに閉まっていました。ご来光と共に開き、夕方は早めに閉まってしまうようです。

富士山8合目より上は、この神社の私有地だそうです。8合目過ぎから鳥居が多かったのもそのため。神社の隣りには山頂郵便局も有りますが、こちらも閉まっています。

予約を入れていた「頂上富士館」も神社の前にあります。…どこから入るんだろう? ガラス扉の奥のほうに明かりが見えますが、なんか扉締め切っている?

奥のほうに明かりが見えるということは奥が入り口かな? と回り込んでみます。目の前には富士山の火口が広がっていました。さすがは頂上。でも、山荘の裏手はトイレのみ。

再び戻り、扉を開けます。やっぱりここが入り口でいいみたい。「予約の方のみ宿泊できます。チェックイン午後4時〜6時」と書いてあります。登ってくる途中で会った家族連れは「予約してないけど、まさか断られないでしょ?」と言っていたけど、どうするのかな…他人事ながら気になります。


薄暗い中を奥の明かりまで進み、予約してあることを告げます。素泊まり5,000円、2食つき7,000円。もちろん2食付にします。

布団は2人で1つしかないこと、御来光の4時半にはチェックアウトとなること、トイレが使えるのはチェックアウトまで、食事は夕食6時前後、朝食4時…などと細かな説明があり、布団のある部屋に案内されます。もちろん相部屋。


部屋には先客はまだ一組しか居ませんでした。6〜7合目で抜きつ抜かれつで登ってきた見覚えのあるグループ。…5〜10歳くらいの子供3人と、その父親です。こんな子供が登るなんて、富士山はすごい山だ。

砂だらけで汚れた体で布団の上に乗るのは悪いので、靴下を履き替えます。ついでに大判のウェットティッシュで全身を拭きます。風呂がないのはわかっていたのでウェットティッシュを持ってきたのですが、体を拭くだけで非常に気持ちいいです。

特にやることも無いので、布団に入って時間が過ぎるのを待ちます。部屋の中も結構寒いのですが、布団に包まっていれば暖かいし。隣りの親子はお弁当を食べて、もう眠っています。


夕食 牛丼しばらくたって、夕食の準備が出来たといわれて食事を食べに行きます。

牛丼。いや、「御飯と牛皿」と言うべきなのかな? ともかく、そういうお弁当です。紅しょうがのパックは、気圧差でパンパンに膨れています。付け添えの卵スープは、非常に薄味。

こんなに標高のあるところでは、御飯を炊くのにも技術がいります。3700m超では、水は85度で沸騰します。しかし、こんな低い温度ではお米は炊けません。多分圧力釜とかを使っているのだろうし、そういうことを考えるとこんなお弁当が1,000円でも安いもの。


食事を食べている間にも、続々と宿泊客がやってきます。チェックイン時刻にはぎりぎりだけど、なんか予約入れている様子ではなさそう? 午後6時を過ぎても宿泊客は受け入れていたようだし、入り口の表示はなんなんだ。

食事が終わると、また暇。仕事先にi-modeメールなんぞ入れてみます。山頂でもつかえるって、携帯電話の技術のすごさを感じます。

明日の朝は早いし、まだ午後7時にもなっていませんが寝てしまうことにします。


暗闇の中目が覚めます。非常に窮屈な中で寝ていたのでなかなか寝付けなかったのですが、しばらくは眠っていたようです。

時間を見ると…まだ夜11時前。すでに寝ているのに飽きました。妻も起きていたようで時間を聞かれます。「暇だ〜」などと話をしますが、寝るより他に仕方ないので無理にでも寝ます。

次の記憶は11時過ぎ。次は少し飛んで深夜2時、途中記憶が飛んでいるので、どうやら寝てはいるようです(笑) 寝ている間はさすがに意識的な呼吸は出来ないのですが、そうすると頭が痛くなるので困ったものです。


富士山の上では、空気が冷たく乾燥しています。そのため、寝ていても非常にのどが渇きます。途中で我慢できずに荷物をあさってペットボトルを取り出しましたが、寝る前に枕元に置いておいた方が良いかもしれません。

最後に起きたのは3時40分頃。4時には起きないといけないし、トイレが込む前に行って置こう…とトイレに行きます。その後は布団の中でじっと4時を待ちます。…4時を過ぎても食事の案内がありません。まぁ、少しくらい遅れるだろうけど、暇なので1分でも早く起こしに来てほしい (^^;


4時5分、部屋の明かりがついて「お食事の準備が出来ました」と山荘の人に言われます。一斉に起きる人々。みんな、声を出さないだけで起きていたらしい。あっという間に出発の準備を終え、食事を取りに行きます。

朝食 ふりかけ御飯朝御飯は、白いお米に味付け海苔、キュウリの漬物、おかかふりかけ。味噌汁付です。質素な朝御飯ですが、これで十分。5分ほどで食べ終え、さぁ、御来光を拝みに行きましょう。

…と思ったら、扉が閉まっています。「4時半に開けます。勝手に開けないで下さい」とかかれて居ました。仕方ないのでまとうか…と思ったら山荘の人が10分早く開けてくれました。一番乗りで山荘の外に出ます。


山荘前には徹夜登山組が沢山居ました。…ここなら風もよけられますし、しばし休息中の様子。

山荘前の小高く丘になったところに人が集まっています。空もそちら側が明るいし、御来光を拝むのに良いポイント?

しかし、そこに行ってみると、目の前に大きな丘があります。どうもあの丘の向こうに日が昇るような気がしてなりません。まだ周囲は薄暗く、日の出まで時間が有りそう。「あっちの山まで行ってみよう」と妻に言います。「移動してる間に日が登らない?」「大丈夫、まだまだ時間有りそう」

山荘は「富士宮口」登山道の一番上にあったわけですが、そこから隣りの登山道である「御殿場口」の頂上をとおり、さらに向こうにある山に登ります。山荘の前よりもずっと風が強く、寒いのですがどうやらここらへんからだと御来光が良く見られる様子。


DAWN PERPLEはるかに下に雲海が見えます。まだ下界は夜のようですが、富士山の上からは地平線が明るくなってきているのがわかります。

「ここらへんが見やすそうだ」というところに腰をおろします。周囲にはすでに多くの人が御来光を待っています。風が強く、とにかく寒い。気温は0〜2度くらい、と聞いていたのでそれなりの服装をしていたのですが、風があまりにも強いため体感温度はもっと下がります。なにせ、ここは日本一高いところ、周囲に風をさえぎるものは何も無いのです。


さむい〜さむい〜 と言いながら御来光を待ちつづけます。東の空が明るくなってきて、今か今かと思うのですが、まだ出てきません。もう日の出なんて何年も見てないけど、たしか日の出る前は「東」だけではなく、空全体が明るくなってくるはず。まだまだ御来光は先の様子。

御来光もう、体が芯から冷え切った頃、4時50分に小さな光のきらめきが見えました。「出た!」みんな一斉にそちらの方を向いています。だれもが心待ちにしていた瞬間です。

日は見るみる登ります。いろいろなところで日の出を見たけど、日が昇る速度というのは結構早く、光が見え始めてから太陽が完全に現れるまでわずか2分です。

日が半分も昇った頃、体に当たる光の暖かさに気付きました。さっきまですごく寒かったし、いまでも風は強くて寒いのですが、日差しがとても暖かいのです。

太陽が完全に昇る頃には、体に受ける光ははっきりと「暖かい」とわかるものになりました。お日様の恵みをこんなに感じられる経験はなかなかありません。頭で知識として知っているのではなく、体感できる経験。みんなが御来光を拝みに富士山に登る理由が良くわかりました。


完全に日が昇り、地平線を離れる頃、みんなばらばらと立ち上がり、道を戻り始めます。暖かくなってきたといってもまだまだ風は強いです。僕らも戻りましょう。寒いから、山荘で暖かいものをいただいてもいいかも。


山荘はまだ開いていませんでした。5時には開くようです。とりあえず山荘前は風がないのでそこに居ると、先に神社が開きました。

杖印神社の中に入ってみます。金剛杖に印を押してくれるそうで、「印を押される方は杖を出してください」と神主さんが呼びかけています。

9合5勺の山荘のおばさんが「頂上に焼印は無い」と言っていました。…たしかに、焼印ではなく「杖印」ですね。朱肉をつけた印を、金剛杖に鎚で打ち込んでくれます。

僕も杖印をもらいました。印とお守りの札で300円。杖を石の台の上に置き、1本づつ鉄の印を使って刻み込んでくれます。神事のように淡々と繰り返される作業を見ている間に、ずいぶんと体も温まりました。


妻は僕が杖印をもらっている間、暇だからと景色を見に行っていました。印をもらった後「寒くない?」と聞いても、別に大丈夫との様子。山荘で暖かいものでも飲もうかと思って居ましたが、その必要もなさそうです。

さて、それでは御来光後の予定であった「御鉢巡り」に出発しましょう。

(ページ作成 2002-08-09)

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