MSX2に限界はないのか?

前回までで、ハードウェア面のMSX2の話は終了しています。今回は、スペックだけでは語れないMSX2の話をして締めくくろうと思います。ほとんど「落ち穂拾い」と呼ばれるものですね(笑)

目次

MSX2アダプタの存在 ゲーム HALNOTE 今後


MSX2アダプタの存在

1回目2回目の説明で大体わかっていただけるかと思いますが、MSXとMSX2の最大の違いはVDPが変わったことです。そしてそれ以外の違いはMSXでも多くの機種が備えていたものを規格化しただけだったり、MSX2でもオプション扱いだったりしました。

では、MSXにMSX-VIDEOを積んだらMSX2になるのか? ・・・なるんですね、これが。

それがNEOSから発売されていたMSX2アダプタです。29800円という低価格でバージョンアップが可能だったため、当初は非常に注目されました。

残念ながら、松下のFS-A1(29800円のMSX2)の登場で存在価値はなくなりましたが、新機種が出たら旧機種のユーザーは見捨てられるのがあたりまえだった当時のパソコン界では画期的な商品でした。


もっとも、このアダプターを使ったとしてもMSX2の完全互換品になるわけではありませんでした。当然MSX2では標準のプリンタポートはありませんし、カートリッジにVDPを乗せるために、VDPのアドレスは少し違っています。

MSX2のソフトウェア基準ではVDPアドレスの違いを吸収するための手順が定められていましたが、初期のころはともかく、低価格のMSX2が出始めてからはあまり守られていなかったようです。


現在までシリーズが続くゲームたち

MSX、MSX2で始めのバージョンが作られ、その後各機種に移植されながら現在まで続いているゲームシリーズは、非常にたくさんあります。

当然、当時ブームだったファミコンの方がそのようなシリーズは多いのですが、MSXは仮にもパソコンであったため、対象年齢層が比較的高く、今の次世代ゲーム機戦争になってから急に復活したシリーズもあります。


たとえば、今は有名になったコンパイルが作った、魔導物語シリーズ。

これはもともとディスクステーションというディスク配布の雑誌(現在もDS for Windowsとして存続中)の特別号として作られたRPGだったのですが、人気があったために後に続編である「魔道物語1-2-3」が発売され、さらにそのキャラクターを使ったパズルゲーム、「ぷよぷよ」が制作されます。

魔道物語のほうは、さらに「魔道物語ARS」がつくられ、その後はゲーム機向けに1-2-3が移植され続けています。

一方、ぷよぷよは多くの人がご存じのように、ゲームセンター版でコンピューターとの対戦モードをつけたところからブームに火がつき、「ぷよぷよ通」「ぷよぷよSUN」および「なぞぷよ」シリーズとして続編・移植が作られています。


また、コナミのパロディウスシリーズももとはMSX版でしたし、最近次世代ゲーム機に移植された「スナッチャー」も、最初はMSX2版でした。

このころ、コナミの開発の偉い人が雑誌のインタビューに答えて「MSX2は8bit最後の砦だ」という発言をしています。(MSX2第1回連載のタイトルはここから来ています)


当時は一番人気だったNECのPC-8801シリーズもPC-9801に人気が移りつつあり、二番手を追っていたシャープのX1シリーズも、やはりX68000に移行しつつありました。また、ゲーム機の方をみてもファミコンからスーパーファミコンに、SEGA MarkIIIからメガドライブへの移行期でしたから、まさしく8bitはMSX2しか残っていなかったのです。


ほかにもいろいろと挙げることは出来ますが、あまりマイナーなタイトルを挙げてもしかたがないので、これだけでやめておきます(笑)

ただ、MSXこそ日本のゲーム界を支えた影の役者だ・・・と言うのは、案外知られていない事実なのかもしれません。


HALNOTE

これこそ、MSX2の心意気を示したソフトだと思います。今はなきHAL研究所(現在任天堂に合併執筆当時の勘違いでした。現存してます。)によって作られた「統合グラフィカル環境ソフトウェア」、それがHALNOTEでした。


簡単に言えば、MSX2を Macintosh にしてしまおうというソフト。

当時は Windows なんてありませんし(実際は 2.0が出ていたけど)、Macintosh も非常に高価で見たことがある人はほとんどいませんでした。


その時代に、マウスだけで操作が可能で、ファイルをアイコンとして整理し、ワープロ・ドロー・ペイント・データベース・表計算などをほぼ同じ感覚で使うことができ、デスクアクセサリとして小さなソフトを同時に作動することもできる・・・

これだけのソフトを、なんと、8bit機の小さなメモリと遅いCPUで行ってしまったのです。


もちろん、これだけのものですから安くはありません。標準ではワープロとドローと、いくつかのデスクアクセサリしかついてこない状態で、一般的なワープロの1.5倍ほどの値段がついていました。

その一方で、商品のコンセプトは理解されず(16bit機でもやっていない先進的なことをしているのだから、理解できない人を責めることはできませんが)、雑誌などでは「ワープロ」として紹介されていましたし、WISYWIGであることが理解されずに「16dotの文字(=16point)が印刷すると中途半端に大きくて、使いにくい」などという批評がされることもありました。


最近のGUI環境をお使いの方にはおわかりかと思いますが、一般的な印刷文字の大きさは12pointです。これは、画面上では12dotで示されることが多く、HALNOTEもその作法に従っていました。

一方、当時の多くのワープロでは、処理のしやすさを考慮して文字の大きさは16dotでした。そのため、HALNOTEでもわざわざ16dotで書いておいて、印刷すると文字が大きいといって「駄目ソフト」の烙印を押す人が多数存在したのです。


HALNOTEはZ80A(4Mh)で駆動され、ファイルシステムはフロッピーディスクで運用されたため、64Kしかないメモリにキャッシュを持っていた(!)にもかかわらず、非常に遅いものでした。

HALNOTEの開発者は、この苦情に対してこのような答えをしていました。(すでに載っていた雑誌がないため、記憶によるもの)

「HALNOTEでできることは、Macintoshとそれほど変わりません。ほかのパソコンをみても、8bitはもとより、16bitでもここまで完成度の高い統合環境はないでしょう。

個人で使う分には速度はそれ程問題ではなく、必要なのは表現力ですし、値段を考えるとHALNOTEは、ただ遅いだけなのです」

僕はこの言葉が大好きです。速度よりも表現力を大切にし、「ただ遅いだけ」と言い切ってしまう。

現在では速度競争が盛んですが、この言葉は今の時代にこそ必要なのではないかと思います。


2015.1.26追記

10年くらい前、岩田さんが任天堂の社長になった直後に「岩田さんは HALNOTE 作った人」という 2ch の書き込み見つけていました。

たった一人で、8bit 機を Mac のような環境にしてしまうソフトを作った天才、という文脈でした。


岩田さんは HAL研究所出身ですし、話としてはあり得ます。でも、裏付けの取れる情報が無くて、ここには何も書いていませんでした。


今日、ツイッターで、外国の方の「28年前の岩田」だというツイートが RT されてきました。

MSX マガジン 1988年3月号の記事だそうです。HALNOTE の開発者インタビューで、答えているのは岩田さんです。


インタビュー内容によれば「中心となったのは4~5人で、ピークの時で7人くらい」だそうです。

たしかに、岩田さんは開発に関与していますが、たった1人で作った天才、というわけではないようです。


なお、記事本文でHALNOTE開発者のコメントを伝えていた「雑誌」と書いてあるのは、当時 HAL研が HALNOTE のユーザー登録者のみに販売していたディスクマガジンの、「Lab Letter」のことで、MSXマガジンではありません。

HALNOTE のバージョンアップや、HALNOTE 上で動く小さなプログラム、開発者からのメッセージなどが入った濃い内容だったように覚えています。



最後に、現在、そして今後のMSXを支えていくであろうソフトを紹介しましょう。

すでにご存じの方もいるかもしれませんが、MSX2のソフトを現在のパソコン上で動作させるためのエミュレーター、「fMSX」が各機種用に公開されています。


このfMSX自体はフリーウェアです。だれでも自由に使うことが出来ます。ただし、fMSXが再現しているのはハードウェアだけですので、BIOSやBASICの入ったROMのイメージは各自用意する必要がありますし、MSX上で動作するソフトも当然自分で用意する必要があります。

これらは、MSXの規格を定めたアスキー、および各社の著作物です。

インターネット上ではこれらのソフトウェアも配布されていますが、それらを利用する場合は

違法行為ですので覚悟の上で

お使いください。


もっとも、現状ではエミュレーターと同時にROMイメージが配布されることが多いようです。

興味を持った方にはぜひfMSXを使っていただきたいのですが、その反面、私自身ソフトウェアの代価で生計を立てている身ですので、違法行為を助長するfMSXの存在場所を教えることは控えさせていただきます。

もっとも、検索ページで fMSXをさがせばあっという間に見つかるとは思いますが・・・


ところで、私もこのページの読者の方からご指摘があるまで深く考えていなかったのですが、fMSXが移植されている機種はJAVAが動作する機種よりも多いのです。

JAVAは「WindowsでもMacでも動く」という点がクローズアップされがちですが、そのことだけをいうのではれば、fMSXはJAVAに勝る環境です。

実際、その点に注目して、fMSX用にゲームを作っているかたもいらっしゃいます。

MSXが共通規格だというのは、これからの時代も有効なのでしょうか?


追加情報 2002.4.30

MSXユーザーは現在でも非常に多く、記事を書いてから5年たった今でもMSXを取り巻く環境は変わりつづけています。

毎年「MSX電遊ランド」というイベントが開かれています。

2000年のイベントではASCII公式のMSXエミュレータ−の作成が約束され、 2001年のイベントで実際にベータ版が発表されました。

2002年イベントはまだ開かれておらず、バージョンはベータのままとなっていますが現在多くの機種に対応しているようです。携帯電話にMSXを搭載できないか?という動きまであります。


携帯電話にMSXを…という動きのある一方で、MSXにより強力なOSを…という動きもあります。

MSX用UNIXの作成計画であるUZIXがそれです。

すでにMSX上で機能限定のUNIXが動き、その上でTCP/IPプロトコルが動き、当然のようにWEBブラウザが動いています。なかなか驚きの環境です。

追加情報 2002.11.19

上に書いた公式エミュレータですが、ついに完成してMSX マガジン復刊という形で配布されるようです。

(ページ作成 1997-02-01)
(最終更新 2015-01-26)

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