世界初のMML

「今日は何の日」で MML の話書いたら、思った以上に好評でした。

えーと、ごめんなさい。僕自身はコンピューターの歴史の研究は好きなのですが、音楽関係はからきしです。ただ、TX-0 に興味があって調べていたら音楽演奏プログラムに日付が入っていたので紹介した、と言う程度。

でも、いろいろと興味深く、もっと調べたくなりました。…調べるうちに、MML の成立が案外複雑だとわかったので、どの話題も切り捨てられなくなり、非常に長くなりました。

全体を3つ程度に分けます。今回は PC登場以前、コンピューター黎明期からミニコンの時代までです。


目次

最初に謝辞を…

基礎知識

音階音長コンピューター以前の演奏機械

CSIR mkI(1951)

演奏データ形式もっと知りたい

MUSIC-N(1957)

もっと知りたい

TX-0 の MUSIC-X(1958)

演奏データ形式もっと知りたい

PDP-1 の Harmony Compiler (1963)

演奏データ形式もっと知りたい

PDP-8 の MUSYS(1969)

演奏データ形式もっと知りたい

次回へ続く…

PC以降の音楽演奏(別ページ)

MMLの成立(別ページ)


関連記事

世界初の○○って?


最初に謝辞を…

「今日は何の日」で書いたときにも、PC-6001以前の MML を調査した MORIYA Ma.氏のページを紹介しました。

氏のページ「パピコニアンの倉庫」は PC-6001をテーマにしたものです。

PC-6001は、国内では「音楽演奏ができた最初のコンピューター」という印象があるのは事実で(詳細は後述)、しかしそれ以前にも演奏ができたマシンがあった、ということを取り上げていました。

しかしこのテーマ、深追いすると PC-6001 の話題ではなくなってしまう…と、ある程度の調査で打ち切っています。氏のページは PC-6001 の話題に絞っているので当然の判断です。でも、僕はコンピューターの歴史が好きなので深追いしてみたくなった。

…というわけで、勝手に引き継がせてもらいました。

氏の研究がなければ、このページは作られませんでした。改めて謝意を示します。


基礎知識

僕も音楽の素養はたいしてないのですが、話を読み進めるうえで音楽の話が必要なので…


音階

・ドレミファソラシ、の7つの音を、英語では CDEFGAB で表現します。(厳密には違うのですが、詳細は必要な時に書きます)

・ミとファ、シとドを除く、5つの音の隙間には、さらに半分の「半音」があります。そのため、実際には12種類の音があります。

・A(ラ) の音は 440Hz で、これが基準音となります。

・周波数がちょうど半分や、丁度倍になると、1オクターブ違う音です。同じ A でも、 220Hz は基準音に対して「下の(低い)オクターブ」、880Hz は「上の(高い)オクターブ」と表現されます。

・1939年に提唱された「科学的表記法」では、440Hz の A の音を A4 と表します。A4 の上は B4 、その次は C5 です。つまり、科学的表記では C~B を1つのセットとして、セットが変わるとオクターブの数字が変わります。


音長

・音の長さは、一番よく使う音長を4つあわせてセットにして考えます。以降、音の長さを、それを表す記号の名前で「音符」と書くことにします。

・一番よく使う長さ4つ分…つまり、セット全部の長さが「全音符」。全音符を2つに分けると「2分音符」、4つに分ける…つまり、一番よく使う音の長さが「4分音符」。以降、8分音符、16分音符、と続きます。

・音符の右横に点を付けると「付点音符」と呼ばれ、長さを 1.5倍にします。付点4分音符は、4分音符と8分音符の長さをあわせた長さです。


コンピューター以前の演奏機械

プログラムで音楽を演奏させてみよう、というのは、コンピューターができたから生み出された概念ではありません。それ以前から、機械による自動演奏と言うものがあり、それをコンピューターでも模倣しただけです。

ここでいう「プログラム」は、演奏する音楽を変更可能、しかもその気になればオリジナル音楽の作成も可能、と言う意味です。


僕のページでも紹介している「オルガニート」は、そうしたものの一つ。パンチカードに穴をあけて機械にかけると、音楽を演奏してくれます。

同じような機械に、ストリートオルガンや自動演奏ピアノ、自動演奏ピアノの中にドラムセットや木琴なども入れてしまったオーケストリオンやニケロディオンもあります。

こっちの歴史も非常に面白いのですが、コンピューターの話ではないので今回は語りません。

しかし、プログラムによって音楽を奏でる、と言う行為は、 MML どころか、コンピューター以前から存在していたわけです。


CSIR mkI(1951)

CSIR mkI (後に CSIRACと改名:以下 CSIR と表記) は、オーストラリアで開発されたデジタルコンピューターの第1号です。プログラム内蔵方式としては、世界的にも Baby mkI、EDSAC、Manchester mkI につづき、4番目でした。

プログラム内蔵方式のコンピューターにメモリは不可欠です。CSIR は水銀遅延管メモリを使用した機械としては EDSAC に続いて2例目です。

水銀遅延管は、スピーカーから超音波を出すことでデータを記録します。CSIR では動作確認のために、別スピーカーからも同時に、人間の可聴域で音を出すようにしてありました。

じゃぁ、メモリ内容を適切に書き変えれば音を制御でき、音楽が演奏できるのではないか? そうして作られたのが、CSIR の音楽演奏プログラムでした。

演奏データを基に、スピーカーに繋がったメモリに、適切なデータを書き込んで音楽演奏を行います。


演奏データ形式

CSIR は 20bit を1ワードとするコンピューターでした。この 20bit は、内部で 5bit づつ、4つに区切られています。(アスキーコード以前、1文字は 5~6bit で、5bit 区切りは珍しくありません)

音楽データとしては 5bit で音階を、5bit で音長を表現します。10bit 残りますが、これは音量を示したそうです。(詳細不明だが、おそらく 10bit = 1024段階)


A=440Hz は、10進法で 22 。半音ごとに 1 つづつ数字をずらすと、1オクターブ上の F# が 31 となります。5bit なのでこれが上限。

同じように、1オクターブ下の C が 1 で、その下の B が 0 。これが下限で、音域は3オクターブ弱。

音長は、全音符が 31 。半分の 16 が2分音符で、8だと4分音符。 1 だと32分音符になります。0 は使いません。

32分音符を単位として、何個分の長さかで示すわけですね。全音符だけ少し足りなくなりますが、元々演奏はそれほど正確ではないので「誤差範囲」のようです。


トッカータとフーガ ニ短調」の冒頭を記述すると次のようになります。


トッカータとフーガ ニ短調
トッカータとフーガ ニ短調。
…この楽譜は、練習曲として単純に編曲されたもの。
有名で、難しすぎず、いくつかの音長、休符、半音が入っているものとして選んでいます。
以降の話題でも、サンプル曲として使用します。

22 02 31 31
20 02 31 31
22 04 31 31
22 16 31 31
20 02 31 31
18 02 31 31
17 02 31 31
15 02 31 31
14 08 31 31
15 16 31 31
01 08 00 00


上に書かれた内容を、おそらくは5穴パンチテープに2進数でパンチして、読み込ませると音楽を演奏します。


プログラムでは、紙テープにパンチされたデータを「直接」演奏します。

(メモリに読み込み、メモリ内容を演奏することも出来ました)


穴の開いた紙テープを演奏するのですから、電子化されたオルガニート、と考えるのがしっくりきます。

これが世界初のコンピューター演奏でした。


もっと知りたい

The Music played by CSIRAC

CSIRの音楽演奏について書かれたページ(英語)。

当時の説明(タイプライターで印字されたもの)をスキャンした画像があります。


Reconstruction of the music played by CSIRAC

上記ページの関連記事です(もちろん英語)。

CSIR の音楽演奏を「再現」したことを伝えています。当時の演奏を限りなく忠実に行ったそうです。(詳細不明だが、おそらくソフトウェア・エミュレーターによる再現)

一番下に、曲データへのリンクがあります。演奏データは当時の紙テープから読み取られたもので、曲目は「ボギー大佐」(クワイ河マーチ)。再生には Quicktime が必要です。


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(ページ作成 2014-07-17)

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