高速化のために

目次

SSEC の速度

メモリと演算の速度紙テープ装置の速度非同期式

高速化の工夫

VLIWパイプライン装置の読み込み同時アクセス遅延書き込み

低速装置への配慮

表引き装置テープ装置への同時アクセス

終わりに


終わりに

IBM が SSEC を作る原因となった「ハーバード・マーク1」は、歯車計算機で非常に遅いものでした。

開発開始は 1939年。完成は1944年です。


「リレー回路で計算ができる」ことを、クロード・シャノンが修士論文として示したのは1937年。

この論文は重要性が認められ、翌年には IEEE の前身である AIEE が発行する学会誌に掲載されています。

さらに、この論文を元に、ベル研究所では1940年にリレー式計算機を完成しています。


パンチカードシステムを作っていたIBMも、この一連の流れは知っていたようです。

どうも、エイケンにマーク1をリレーで作ることを提案したようなのですが、エイケンは歯車式であることにこだわりました。


当時としては、リレー計算機はほとんど知られていない「未知のテクノロジー」で、エイケンには理解できなかったためです。

エイケンは、速度が上がる可能性よりも、確実に役立つ計算が出来ることの方を重視したのです。




エイケンが IBM の名前を出さずに「自分が発明した」と表明したのも、IBM との設計段階での行き違いが原因に思います。

IBM が主張するリレー式ではなく、歯車式で立派に完成してみせた、という自信の表明だったのでしょう。


実は、IBM は SSEC の前にもリレー式のプログラム可能な計算機を作成しています。

マーク1の完成した 1944年に軍に納入されているようなので、歯車計算機と同時期に、リレー式計算機も作っていたことになります。


こちらはマーク1ほど機能が多彩ではありませんが、20倍高速でした。1秒間に6回の乗算ができた、とされています。

このような機械で2進法で計算が可能なことを確認して、SSEC の設計に入ったのでしょう。




歯車式で動作するものを作り、リレー式で動作するものを作り、そしていよいよ真空管へ。

ちゃんと経験を積んでいるから、遅くなりそうな部分も理解していましたし、その遅さをカバーする仕組みを作り上げたのでしょう。


今回の話で VLIW やパイプラインと言った単語を使っているのは、現代から見て似た技術を出しただけの、遊び心です(笑)

本当は、物理的な動作が多い時代の機械設計者は、遅いことがわかっているから無駄なく動く方法を常に考えている。

非同期式でクロックもないし、当時としては「当然の方法として」これらを考えたのだと思います。現代技術を先取りしているというわけではない。


でも、時代を超えて、制約となる要件も変わっているのに同じような発想にたどり着く、ということが面白いと思います。




次回はプログラム方法の説明です。



参考文献
SSEC特許書面(1982年に書かれた解説付き)F.E. Hamilton1953/1982IBM
その他、WEB上の各種ページ


前ページ 1 2 3 4

(ページ作成 2015-06-08)

前記事:IBM - SSEC     戻る     次記事:SSEC のプログラム方法
トップページへ

-- share --

2000

-- follow --




- Reverse Link -