サターンのCPU

目次

候補リスト

動作速度

命令長

さらに絞り込む

SH1

乗除算

まとめ


さらに絞り込む

さて、残ったのは次の CPU です。

名称速度命令長最大クロック
PA-RISC2832bit
R30002532bit
ARM602432bit12MHz
V8102116/32bit25MHz
SPARC2132bit
i9601932bit

ここまでに速度と命令長を比較しました。

もっと細かな比較を行うことも可能ですが、詳細検討はもう少し候補を減らしてから行いましょうか。


ここで、PA-RISC を選外にしなくてはなりません。一番高速で魅力はあるのですが、PA-RISC はヒューレット・パッカード社が自社のコンピューターに使うために社内で開発している CPU で、他社に供給していないのです。

供給は交渉次第…かもしれません。今は想像で追体験をしているだけなので、セガが交渉を行ってみたのかどうかもわかりません。

ただ、性能が高いにも関わらず実際に使用されていませんし、このあと未練を感じさせるようなことも起きていない、ということだけは判明しています。もしかしたら、最初から比較の俎上にすら登っていなかったかもしれません。


2014.6.28追記
PA-RISC は、SH-2を作成した日立が、セガに売り込みをかけていました…冒頭に書いた「日立側のストーリー」に載っていたのに見落としてました。
ただし、セガに売り込んだのは、ゲーム機と言うことで組込み用途の PA-RISC。PA-10という型番で 10MIPSだったそうです。
28MIPS の最高性能の品を売り込まなかったのは、電力を食いすぎるとか、高すぎるとか、とにかくゲーム機に使えるようなものではなかったのでしょう。どちらにせよ選外です。


ARM60、SPARC、i960 もここで選外とします。理由は単純です。R3000 よりも速度が遅く、命令長が変わらないのでプログラムが特に短くなるわけでもないためです。これでは、候補として残しておく理由は特にありません。


ここで追記しておくと、i960 は「MODEL 2 でも使われた」と書きましたが、少し嘘があります。
i960 は非常に多くのシリーズがあり、MODEL 2 で使われたのは 25MHz までしか速度の出ない廉価機種です。
ここでは、28.64MHz で動作できるように、33MHz が使える機種のうち、もっとも性能が低い(=安い)もので比較しています。
金に糸目をつけずにもっと高級機種を投入すれば R3000 の性能を超えられますが、家庭用ゲーム機にそれはないでしょう (^^;

SH1

これで、R3000 と V810 の2機種に絞り込まれました。

速度は R3000 の方がわずかに高く、プログラムサイズは V810 のほうがわずかに小さいです。どちらも差はわずかで、決め手に欠けます。


おそらく、日立が SH1 を持ち込んだのはこのタイミング。日立のストーリーには「V810 に決まりかけていた」とありますが、多分決め手に欠けるから値段の安いほうにしようかと思っていた、程度なんじゃないかと思います。


当時の両者の値段は判りませんが、R3000 は主にワークステーション用、V810 は最初から組み込み用を想定していますから、V810 の方がずっと安かったのではないかと思います。

SH1 も V810 と同じく、組込み用途を想定した CPU でした。命令長は完全 16bit 。性能は 20MHz で 16MIPS でした。もし 28.64MHz で動かすとすると、23MIPS となり、V810 の性能を超えます。

名称速度命令長最大クロック
R30002532bit
SH12316bit20MHz
V8102116/32bit25MHz

SH1 は、V810 よりもプログラムが小さくできるのに、V810 よりも性能が良い。この時点で V810 は選外です。

ただし、懸念材料が一つありました。SH1 は V810 よりも動作周波数が遅いのです。「28.64MHz で動いたら」と言う前提で性能を比較していますが、実際には動くかどうかもわかりません。

しかし、可変命令長の V810 よりも構造は単純そうですから、動作周波数の引き上げは、十分実現可能性がありました。


日立のストーリーにはなぜか書かれていないのですが、サターン発売時の雑誌インタビューでは、セガの担当者が「28.64MHz で 25MIPS になるよう改良を依頼した」と語っています。

日立のストーリーでは、セガから出された条件の筆頭は「乗算器の性能向上」なのですが、セガ担当者の語った内容とは少し異なります。

多分、セガの要求仕様は「NTSC信号と同期して25MIPS」ということが重要で、実際の設計の現場だとこれを実現する方法として「乗算器の性能向上」が筆頭の課題となったのではないかな、と想像します。


日立は他の条件として「ゲームソフトを想定したベンチマーク結果の提示」も頼まれています。
後でかきますが、3Dゲームを前提とするならば、乗算は重要でした。これも乗算器の性能向上が筆頭課題になっていた理由ではないかと思います。

ともかく、NTSC信号と同期することは最重要課題でした。恐らく、SH1 が 28.64MHz にクロックが引き上げ可能であれば、それだけで V810 のかわりに選定に残ったでしょう。

しかし、「選定に残る」というのは採用を意味しません。あらためて、R3000 との比較になり、性能を取るか、プログラムサイズを取るか…という問題に戻ってしまうだけです。


採用を決定するには、V810 と R3000 の両候補を超える必要がありました。命令長で V810 はすでに超えているので、残るは速度で R3000 を超えること。これが「28.64MHz で 25MIPS」という条件にあたります。


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(ページ作成 2013-11-11)
(最終更新 2014-07-27)

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