太陽系の惑星たち

サターンの名前の由来については、いろいろなところに書かれていますが「セガの6番目の家庭用ハードなので、太陽系の第6惑星の名を取った」と言うことになっています。


第6惑星は土星、英語でサターンですね。「開発中の仮称」だったのが、そのまま製品名になりました。

でも、6番目…って? セガのハードをどのように数えても、サターンが6番目になりません。


サターンと同時期に作成されたハードには、太陽系の惑星や、土星の衛星などの名前が付けられています。サターンが6番目、とされる謎の鍵もここら辺にあります。


今回は、サターンや周辺ハードのお話です。

目次

セガ・サターン(別ページ)

サターンの3D性能(別ページ)

サターンのCPU(別ページ)

サターン

ジュピター

マルス

タイタン

ヤヌス

ネプチューン

ビーナス

プルート

細かな話題(別ページ)

もう一つのライブラリ(別ページ)

次世代ゲーム機戦争(別ページ)

反論紹介(別ページ)


サターン

サターンさて、まずは「6番目」のことから書きましょうか。

6番目ってどう数えているの? というのは、発表時から謎でした。通説に良く挙げられるのは、以下の7機種。


SG-1000 SC-3000 SG-1000II

SEGA MarkIII

Master System

MEGA DRIVE TERA DRIVE


同じ行に書いたものは、ゲーム機としての性能は同じでマイナーチェンジを行ったものです。

機種として数えれば7機種。でも、性能が同じものをまとめると4機種になります。

…ここが悩みどころで、何か無理やり理由をつけて同じ性能の物をカウントしないと、サターンが6機種目にならないのですね。この部分で、人によって見解が別れてしまう。


でも実情は、セガサターンの前に発売されなかった機種が一つあるんだそうです。


その機種の開発名が「ジュピター」。太陽系の第5惑星、木星です。これで無事、「サターンが6機種目」になります。

ただ、このジュピターの詳細は謎に包まれています。まぁそれも当然の話で、開発中は企業秘密で、発表以前に中止されてしまったのですから、詳細は闇の中。


…とはいえ、噂や状況証拠を丹念に調べ、おぼろげな概要は判ってきています。以前には「ジュピターは後のスーパー 32X」という説があったのですが、これは現在否定されているようです。


ジュピター

1980年代後半、メガドライブはスーファミの陰に隠れて日本では残念ながらあまり売れず、8bit 機である PC Engine にも販売台数で負けました。

しかし、アメリカではメガドライブがヒットし、マスコットキャラクターであるソニックは、任天堂のマリオやミッキーマウスを抜いて、「一番人気のあるキャラクター」となります。

(メガドライブのアメリカ名はジェネシスですが、混乱するのでメガドライブで統一します)


メガドライブ人気も落ち着いた 1990年代初頭、次の機種について興味深い取材が行われています

アメリカの雑誌、Electronic Gaming Monthly (略称 EGM) の1991年2月号は、Gigadrive と呼ばれる家庭用ハードウェアの開発が始まった、と報じています。

ここでの情報はわずかなもので、System32 を元に家庭用にした機械になる、ということのみ。

また、同じくアメリカの雑誌 Gamepro の1991年11月号には、Megadrive/32 と言う名前で、同じような記事が掲載されています。

この頃にメガドライブの後継機の開発が始まっていた、それは System32 の家庭用を考えていた、というのは全然不思議なことではなく、おそらくは事実だったのでしょう。


System32 は、セガの業務用基板です。フレームバッファスプライトを拡大・縮小して表示する機能があります。

さらに、この「拡大」の際に表示位置の計算などが楽になるように、スプライト表示の「原点」を9つの点から選べる機能がありました。

…サターンにも、スプライトの拡大縮小と、原点位置を選べる機能があったのを覚えてますでしょうか? おそらくは、Gigadrive として開発が始まった機能は、サターンにも受け継がれているのでしょう。


この後しばらく開発の噂はありませんが、どうもある時期から、開発コードネームが「惑星名」に変わったそうです。

つまり、Gigadrive と呼ばれていたものが、名称変更されて「ジュピター」になったのではないか、ということ。


その後、名称はジュピターからサターンに変わります。

…どうも、ソニーが開発中の PSX、のちのプレイステーションの噂が入ってきたようなのですね。


当初予定が大幅に変更され、System32 の家庭用、ではなく、ポリゴンを出せるハードに変わったようなのです。

それに合わせて、名称も変更になったのですね。


そう考えると、サターンのポリゴンがプレステに比べて弱いのも理解ができます。

半透明で破綻するのも、もともと拡大縮小だけだった予定なのに、自由変形まで入れたから破綻したのでしょう。




イギリスのゲーム雑誌、EDGE の5号(1994年2月号)では、「ジュピター」の噂を伝えています。

まず、前提としてすでに「サターン」の話は知られていました。それとは別にジュピターが発売される、と言う噂。

それによれば、ジュピターはサターンと互換性を持つが、RAM は半分、メディアはカートリッジである、とのこと。コストの高い RAM と CD-ROM を切り詰めることで、3万円まで値段を下げています。(この時点でのサターンの予価は5万円)


詳細は後日書きますが、実は発売されたサターンのメイン RAM には奇妙な点があります。搭載メモリの半分が高速で、半分が低速なのです。なぜこんな中途半端なことを?
ジュピターでは高速メモリのみを搭載して低速メモリはカット、その代わりに ROM 直接アクセスができる設計だった…と考えると、奇妙な設計の説明がつきます。

先に書いた通り、アメリカではメガドライブは大人気でした。せっかく広めた人気を受け継がない手はありません。

しかし、5万円は高すぎます。…日本でだって高すぎる、と言う印象でしたが、アメリカではありえない値段なのです。

アメリカは、日本と違って階層社会です。裕福な上流層は忙しく、テレビゲームなど遊びません。中級層はテレビゲームを遊びますが、実は娯楽を一番求めているのは貧困層。

ジュピターは、なんとかコストを抑えてメガドライブの後を引きつごう、という戦略商品として考えられていたようです。


ところで、故マイケル・ジャクソンは熱心なテレビゲームコレクターだったことで知られます。
元々マイケルは貧困層の黒人出身。貧困層こそ求めたがる「娯楽」である音楽を提供して成功しました。
多くの人は、成功して金持ちになると上流階級の仲間入りをしたがるのですが、それでは重要なファンを失うことになります。
金持ちになってもゲームのコレクションを続けるというのは「僕は貧困層の仲間だ」という、ファンに対する意思表明でもあったのだと思います。



EDGE 5号の編集などが行われていた頃だと思いますが…1994年の1月に話が遡ります。

その時期、冬の CES (コンシューマ・エレクトロニクス・ショー。世界最大の家電品見本市)が行われたため、セガの中山社長がアメリカを訪れています。

この際にセガアメリカ支社の社長らも集まって会議が行われたようですが、この会議の際にジュピターの開発は正式に中止されます。


理由はよくわかりませんが…おそらく、当初は Gigadrive という名前で開発されており、メガドライブとの互換性を考慮していたのではないかと思います。

しかし、CPU の MC68000 はサターンにも入っているとはいえ、とても互換性を保てそうな設計ではありません。PS-X の噂で高性能化をはかった結果、互換性が失われてしまったのではないでしょうか。

メガドライブの市場を引き継ぐことができず、サターンとの互換性も中途半端(RAM などが少ないため、ゲーム開発は苦労しそう)であれば、存在価値はありません。




EDGE の6号(1994年3月号)では、日本でサターンの正式発表があったことと、その席でジュピターは発表にならなかったことを伝えています。

しかし、EDGE ではジュピターは近いうちに登場するだろうし、その時にはサターンにバージョンアップするための「別売り部品」も同時に発表されるのではないか、と期待しています。

特にアメリカ市場を考えると、メガドライブとメガCD が別売りになっていたように、ジュピターと CD+RAM でサターンにバージョンアップできる、という売り方に期待したい、という評価です。


しかし、この後いつまでたっても、セガがジュピターを発表することはありませんでした、


EDGE 5号、6号の写真は探しても見当たらなかったのですが、7号の記事写真が海外の掲示板にありました
まだこの時点では、 EDGE は「Jupiter」も発売される前提で記事を作っていることがわかります。



EGM の1994年7月号では、当時のセガサターン事業部長、岡村秀樹さんへのインタビュー記事が載っています。

これが、「ジュピター」の核心を突く、一番の証言です。長いので、該当部分だけ意訳しておきます。当時の資料として面白いので、興味のある方は全体を読むことをお勧めします。


EGM: スーパー32Xのカートリッジはサターンでも使えますか?

岡村: できません。両機種には互換性がありません。

EGM: すると、メガドライブのソフトもサターンでは使えない?

岡村: そうです。

EGM: ジュピターは死んでしまったのですか?

岡村: カートリッジのみのサターンのこと? そんなものはありません。

EGM: 今後もずっと?

岡村: ありません。


重要なのは「ジュピター」と言っただけで「カートリッジのみのサターン」と言い返している部分。

本当に存在しない、もしくはジュピターがスーパー32X を意味するものであれば、このような会話にはならないでしょう。

ジュピターは廉価版のサターンとして存在していたが、1994年1月の CES の際に中止決定がなされ、この時点の公式見解として「そんなものは存在しない」ものになったのです。


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(ページ作成 2013-11-22)
(最終更新 2016-01-22)

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