HP200LX
目次
CPU
CPU には「hornet」と呼ばれるものが使用されています。これは 80186 をベースに、良く使われる周辺ペリフェラルを詰め込んで1チップ化したものです。
メモリコントローラ、画面コントローラ、DMA コントローラ、IDEコントローラなどを内蔵しているため、この CPU だけでほぼパソコンが完成するような性能です。
実際、200LX ではこの CPU 以外に目立つ部品と言えばメモリとクロック、電源くらいです。PC カードの信号規格は IDE に近いため、IDE コントローラーでなんとかなっているようですし。
この CPU はクロック15.8MHz まで対応しているのですが、200LX では半分の7.9MHzで動作させています。
これは、電池寿命を考えてのことです。200LX は「単三電池2本で1週間使える」ことを設計の指針にしていたそうで、それを達成するためにあえて性能を落としているのです。
しかし、逆に考えれば、これは「クロックアップの余地がある」事を意味します。
実際、クリスタル(クロック信号を作り出す部品)を取り変えて、CPU 内部の動作を決めるレジスタを少し書換えるだけで、倍速で動作する事が出来ました。
通常のコンピューターの「倍速改造」は、周辺チップの動作速度の問題などもあって危険を伴うのですが、200LX は最初から「本来倍速で動作するものを、速度を落としてある」設計だったため、多くの人が倍速改造して使っていたようです。
メモリ
200LX では、メモリの搭載方法がロットにより多少異なります。メモリはメイン基板とメモリ拡張用のコネクタに搭載できるのですが、コストを下げるために拡張コネクタがつけられていない(基板上につける場所は存在する)ロットがあります。
基板 | 拡張コネクタ | |
1Mモデル | 1M | なし |
2M(前期) | 1M | 1M |
2M(後期) | 2M | なし |
4M | 2M | 2M |
拡張コネクタにつけられたメモリは、もちろん交換可能です。サードパーティ部品や改造代行業者などもあり、メモリを増やす改造も良く行われていました。
ところで、本来 XT 互換機の設計ではメモリは 640Kbyte 以上搭載出来ないはずです。その CPU である 8086 の扱えるメモリ空間も 1Mbyte までです。それ以上のメモリを搭載して、一体なんになるのでしょうか?
実は、hornet は 80186 をベースにしながら、もっと多くのメモリを扱えるように拡張が行われています。そして、200LX では、640K以上のメモリを RAM DISK として使用するようになっていました。
ただし、80186 ですからやっぱり 1M 以上のメモリを扱うのには制限があります。ハードウェア的には接続できても、ソフトウェア的には扱えないのです。
そこで、ソフトから扱う時にはメモリの一部に覗き穴(ウィンドウ)をつくり、そこに見えるメモリ空間を切り替えられる、という方法になっていました。これは EMS と似たような仕組みです。
640Kが上限のMS-DOSで、それ以上のメモリを扱うように考えられたシステム。
640K の中に 16K の「窓」を設け、その窓から別のメモリが見えるようにする。どこのメモリが見えるかは切替可能なので、16K 単位ではあるが複数のメモリを切り替えれば多くのメモリをアクセス出来る。
後には、このCPU の仕様を利用して、RAM DISK の一部を EMS として使用するドライバなども作成されています。
この場合、どうやら 32M づつ 4bank になるそうですが、200LX の BIOS はこのメモリを正しく認識します。(ということは、これだけのメモリを搭載できる設計を最初から持っていたということです)
hornet のメモリ空間がどの程度なのか私は知らないのですが、ROM も積んでいるわけだし、32M x 8bank の256Mかな?
その他
拡張性については、JEIDA 4.1/PCMCIA 2.0 TYPE II ソケットを1基搭載しています。今で言う「PCカードスロット」ですね。
また、IrDA 赤外線ポートを1つ、特殊なコネクタによる RS-232C を1つ搭載しています。
PC カードは IDE と似たような信号規格になっているため、PC カードコネクタの制御はCPU が行っています。また、RS-232C 制御機能も、CPU が搭載する物を直接使っているだけです。つまり、これらの機能を実現するために、特に LSI などを追加することなくスマートに行っているようです。
内蔵のメモリはすべて RAM なので、電池が切れると内容が消えてしまいます。しかし、ここには重要なファイルなどが置かれているため、バックアップ電池も入れておくようになっていました。
電池はニッカド電池も使用可能で、本体に ACアダプタをつなぐことで直接充電も出来ました。
もっとも、急速充電などは無いですし、充電するなら一晩かけて…という感じでしたが (^^;
こんなところでハードウェアの話は終わりたいと思います。
200LX が「名機」であるというのは、もちろんハードのことではありません。良いハードと良いソフト、そして良いユーザーコミュニティを持った機械だけが「名機」と呼ばれるようになるのです。
次回は、ソフトウェアの話題をお伝えする予定です。