世界初のテレビゲーム

TX-0 の記事は全部終了したはずだったのですが…

その後、興味が高じて TX-0 エミュレータを作成しました。


TX-0 の調査時にたくさん資料が見つかっており、その中には「ソフトウェア」も含まれていたためです。

ぜひ、そのソフトが動いているところを見たかったのです。


特に見たかったのが、1959年に作成され「世界初のテレビゲーム」と呼ぶ人もいる、「迷路のネズミ」(Mouse in the Maze : 以下 MOUSE)でした。


これ以前にも、「世界初のテレビゲーム」と呼ばれるものはあります。


ここでは、どれが最初か、なんて論争はしません。

ただ、MOUSEが明らかにテレビゲームであったことだけを示そうと思います。


というのも、過去に MOUSE を説明した資料では、大抵「迷路の中にネズミを入れ、ゴールまでたどり着くのを眺めるプログラム」と書かれているのです。

この説明を元に、これはテレビゲームではなく、デモンストレーション用のプログラムだった、とする人も多いです。


僕も、実際に遊んでみるまではそう思っていました。

でも、遊んでみるとわかります。これは、明らかに「テレビゲーム」です。


目次

TX-0 の概要(別ページ)

初期のTX-0の命令(別ページ)

改造後のTX-0の命令(別ページ)

NOP命令の誕生(別ページ)

ゲームの遊び方

目的障害要素ネズミの動きチーズの置き方

ゲームの操作方法

迷路を作るゲームの開始迷路を作り直す

その他のこと

ネズミの体力について隠れキャラ

僕の見解


ゲームの遊び方

これは「ゲーム」ですから、目的と、その目的を阻む障害、さらには障害を越えるため戦略があります。

まずはそのことから説明する必要があるのですが…

言葉で説明してもわかりにくいので、ビデオ作りました。

最初にビデオを見てもらうと、イメージが掴みやすいかもしれません。


目的

ゲームの目的は、ネズミがゴールまで行くこと…ではありません。


MOUSE は、動物実験でネズミが迷路を学習する過程を真似する、人工知能プログラムです。

そのため、目的は「ゴールまで行く」ではなく、「ゴールまでの道を学習する」になります。


「ゴールまで行く」と「ゴールまでの道を学習する」の違いはどこにあるのでしょう?


単にゴールに行くのが目的なら、どんなに道に迷っても構いません。

しかし、記憶する、と言うのであれば、迷いなく進まなくてはなりません。


ところで、ネズミは勝手に動いて、学習します。

ユーザーができることは、学習のための場となる迷路を作ることだけです。


以上のことをふまえ、もう一度ゲームの目的を書き直します。


・1度目と2度目で、ネズミの動きが明らかに違う迷路を作ること。


MOUSE は、ネズミの動きの変化を楽しむものなのです。

ただし、これはゲームですから、目的を阻む要素が用意されています。


障害要素

ネズミには「体力」があります。

体力は内部的なパラメータで、表示されることはありません。


先に書きましたが「実験動物」を模倣したのが MOUSEです。

本物の動物にステータス表示はありませんよね?


迷路を歩きすぎると、ネズミは疲れて動かなくなります。

特に判定はありませんが、こうなるとゲーム終了ですね。


ネズミの体力は、「チーズ」にたどり着くと増加します。

ちなみに、ゴールは1~3個置かれたチーズを全て食べることです。


体力はネズミの行動ごとに減ります。

1マス動くと1減るのは当然として、移動しないでも「壁にぶつかり、方向転換した」だけでも減ります。


上手な迷路を作るためにはネズミの動きを熟知している必要があります。


ネズミの動き

ネズミは、基本的には壁に当たるまで直進します。

壁に当たると、右か左に曲がろうとします。そして、進みながら「通った道」を記憶していきます。


ネズミが「道がループしている」とか「袋小路に入った」と気づいたときは、通った道を元に戻っていきます。そして、まだ通っていない道を見つけるとそちらに進みます。

後戻りするときのネズミは、かなり慎重に行動します。このため、普通に直進するときに比べ、多目に体力を消耗します。


「袋小路」の記憶は、2回目のゲームの際には「壁」と同じ作用を持ちます。

つまり、2回目にはネズミは一切無駄な道に入らず、チーズを効率よく食べて回ります。


時折、ネズミの記憶がおかしくなるようで、2回目のゲームで壁を乗り越えたり、その結果迷路の外に逃走したりすることがある。
当時の文書にも「4次元に行ってしまう」とか、「迷路から逃げ出す」と記されている。


チーズの置き方

チーズに関しては、実は多少バグ含みです。

チーズが1つならなにも問題はないのですが、複数置くとバグが出やすいのです。


そのため、慣れるまではチーズ1個で遊ぶことをお勧めします。それでも十分楽しめますから。

当時の資料などを見ても、公式にデモをするときは、バグを避けるために「チーズ一個」で動かしていたようです。




さて、2個以上のチーズを置くときの注意です。

まず、ネズミは2回目のゲームのときには「袋小路には入らない」ように進むので、袋小路となる道の途中にチーズを置いてはいけません。

全てのチーズを、一筆書きで結べること。これが鉄則です。


チーズを食べた時、ネズミはそれまでの進行方向を忘れます。基本的に「直進」するように作られているのに、必ず画面左方向を向いてしまうのです。

もちろん、そちらに壁があったり、そちらから来た場合には進みません。


チーズが袋小路には置かれていないことを保証するため(?)か、チーズを見つけると、今まで進んできた道には「見えない壁」が作られます。つまり、戻れなくなります。

それだけならいいのですが、どうもここにバグがあるようで、直進方向にも壁ができます。

このため、直進通路にチーズを置いてはなりません。動けなくなります。


じゃぁ、曲がり角ならチーズを置いていいのか?

…素直にその通り、と言えないのがつらいところです。どうもここが最大のバグ含みで、曲がり角でも動けなくなることがあるのです。

いろいろ実験しているのですが、どうも規則がわかりません。大丈夫な場合もあるし、動けなくなることもある。

試行錯誤してみるしかないようです。


この記事の最後に詳細を書きますが、ネズミの体力の初期値は、チーズの数で変わります。

ところが、ここにもバグがあって、「チーズ1個なのに、複数チーズの体力」になってしまうことがあります。

この場合、一度すべてのチーズを消してから、あらためて1つだけ置いてください。




…などなど。他にもバグがあるかもしれません。

でも、このバグがゲームをつまらなくするかと言うと…むしろ面白くなっている、と言うのが微妙なところ。

ゲームの真の目的は、「見ていて面白い迷路を作ること」ですから。

バグがあっても、ネズミの動きはランダムではなく、必ず同じになります。だから、バグを見事回避して面白い迷路を作ることができるなら、そのほうが「良い迷路」なのです。





ルールは以上です。まとめなおすと、次のようになっています。

・ネズミが迷路を歩き回り、すべてのチーズを食べればゴール。

・ネズミには体力があり、無くなるとゲームオーバー。

・ネズミの体力はチーズを食べることで回復する。

・ただチーズを食べればよいのではなく、2回目は学習効果が表れるようにする。

 そのためには、できるだけ道に迷うようにする。

・ただし、道に迷うと激しく体力を消耗する。

・ネズミの動きは規則性があるので、規則を理解して上手に迷路を作ること。


一番上に目的を書きましたが、実は真の目的は一番下です。

これを達成するのが一筋縄ではいきません。工夫していると結構楽しく遊べます。

(ほかにも、迷路のデザインで絵を描いたり、いろいろ工夫の余地があると思います)


次ページ: ゲームの操作方法


1 2 3 次ページ

(ページ作成 2013-08-01)
(最終更新 2013-08-03)

前記事:NOP 命令の誕生     戻る     次記事:訂正・NOP命令の誕生
トップページへ

-- share --

25012

-- follow --




- Reverse Link -