NHKで、スイスの独立時計師の話をやっていた。
独立時計師…その存在自体、初めて聞いた。彼らはどこの企業にも属さず、自分の作りたい時計だけを手作りする「芸術家」だ。
全部で30人ほどしかいないらしいが、一人が1年で3つ程度の時計を作るのみ。当然その時計は高価で、安くても数百万円になる。
しかし、存在は始めて聞いたが、その仕事は知っているものがあった。
11億円の懐中時計。その存在を聞いたのは13年前だったと思う。この時計は正確な時間を刻むだけでなく、一定時間ごとにチャイムで時間を知らせたり、ボタンを押したときに現在時刻をチャイムの数で示すことができる。もちろん、アラームの機能もついている。
さらに、うるう年まで考慮した正確な日付を刻む。100年に一度のルールだけでなく、400年に一度のルールも折込済みだ。
天体の動きも同時に示す。月齢表示はあたりまえだ。現在の太陽の位置も表示する。季節によって高さが変るのももちろん考慮してある。
さらに、太陽系の惑星の位置まで示すことができる。
他にもいろんな機能があったと思うが、これだけの機能が、すべて手巻きのゼンマイ仕掛けで動いている、というのがすごい。もちろんその「機能」が欲しいだけならコンピューターを使えばいい。目的は、これをゼンマイで動かしてしまうことなのだ。
独立時計師っていうのは、そういう時計を作りつづける人たちなのである。
話が大きくそれた。上に書いた時計の話は、別に NHK の番組には出てこなかった。
NHKで取り上げていた時計と時計師は、2組。
1組目は、完全な自作を目指す人。小さな歯車1個から、自分で削りだして作ってしまう。
そして、目指すのはシンプルな時計。一生使いつづけられる強さを持つように、すべての部品を丁寧に磨き上げる。
歯車は普通のものより厚く、頑丈に作る。その分摩擦抵抗が増すので、ぶつかる部分を綺麗に磨き上げる。
これを、すべての部品、ネジ一本に至るまで徹底させるのだ。
構造は非常にシンプルで、普通の時計技師でも見ればわかるようになっているらしい。それでないと、いざというときに修理がきかないから。「一生使える」というのはそういうことだ。
もう1組は、最高の美しさを求める人。
この人はチームで時計を作る。自分の設計した時計を作るために、最高の技術者を探して仕事を任せる。
わずか 0.5mm の大きさだが、ちゃんとブリリアントカットされたダイヤを2000個発注。この仕事をこなした職人がいるというのもすごい。
出来たダイヤを、プラチナに埋め込んでいくのは彫金職人の仕事だ。微妙にサイズの違うダイヤを、調整しながら埋め込むことで表面を滑らかにする。本物の職人にしか出来ない仕事だ。
すべての部品が出来上がったとき、組み立てるのは時計師の仕事だ。彼は、彼でないと作れないような複雑な機構の時計を、ダイヤをちりばめたプラチナのケースに収めていく。
個人的にはシンプルな時計を作る人のほうが好きだ。
僕は過度の装飾は好きじゃない。それよりもシンプルにまとめられた機能美のほうが、ずっと美しい。
あそこまでいいものがほしいなんて贅沢は言わない。
でも、いつか歯車の動きが美しい懐中時計が欲しい。
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