2020年04月15日の日記です


【訃報】ジョン・ホートン・コンウェイ氏  2020-04-15 18:22:50  コンピュータ 今日は何の日

数学者の、ジョン・ホートン・コンウェイ氏が、11日に新型コロナウィルスによる合併症で亡くなったそうです。



…さて、僕は氏のことをほとんど知りません。

それでもここで取り上げるのは、「ライフゲイム」の考案者だからです。




あえてライフゲイムと書くのは、日本に最初に紹介した本が「ライフゲイムの宇宙」というタイトルだったため。


まぁ、一般的には「ライフゲーム」です。

ただ、英語で The Game of LIFE といえば、一般には「人生ゲーム」のこと。

そのため、「コンウェイのライフゲーム」とも呼ばれます。



で、そのライフゲームが何なのかといえば、「生物群をシミュレートする初期の方法」であり、「セルラーオートマトンの初期のもの」です。



非常に単純なルールで、生物群の存在をシミュレートします。

ここでグダグダルール書いたりしても面白くないので、興味持った人は自分で調べてください。


ルールは単純なのですが、非常に広い範囲…理想的には、無限の広さを持った盤面の、1マス1マスにそのルールを適用する必要があります。

1回適用すると「1世代」と呼ばれ、最低100世代くらい繰り返すと面白みが出てきます。


とすると、無限の広さは無理なので 100x100 の盤面だとして、同じ操作を 1000000 (百万)回くらい繰り返す必要があります。

人間が手動でやるのは、とてもじゃないが無理。



でも、ルールは単純なので、初期の… 1960~70年代くらいのコンピューターを使い、研究されました。


特に中心的に研究していたのが、ビル・ゴスパー。

当時 MIT の学生で、自由に使えた PDP-6 でライフゲイムの研究を行っていました。


ここらへん、時々僕が名著として挙げる「ハッカーズ」の中に、1節丸ごと使って様子が描かれています。


彼は、コンウェイ自身が「存在しそうだけど見つけられない」という、「永久に増え続けるパターン」を見つけ出そうと一生懸命になり…ついに見つけ出し、コンウェイの懸けた懸賞金 50ドルを勝ち取ります。



今でもライフゲームの研究者はいて、続々と新発見が報告されたりしています。


単純ですが、非常に奥深い世界です。




全然関係ない話題なのだけど、昔、私鉄の自動券売機の表示画面でライフゲームが動いているのを見たことがあります。


当時は今とは違い、細かな LED 表示のディスプレイだったのですが、長い間同じ表示を出し続けていると、点灯時間が長い LED から寿命が尽きてしまいます。


なので、誰もいないときは表示を消すと良いのですが、消してしまうと電源が入っていないようにも見えます。



そこで、「動いている」ことを示しつつ、常にランダムに動き続ける模様として、ライフゲームが使われたようなのです。


人感センサーがついていて、近づくと普通の表示に戻るようになっていました。




ライフゲームに類似なものを、セルラーオートマトンと呼びます。

「マス目に区切った世界に対し、一定のルールを適用し続ける」ものです。


「セルラー」の語源は、生物の細胞、セル。

実際、生物の細胞は同じような仕組みで動いているかもしれない…という研究報告もあります。


ヒョウ柄とか、トラ柄とか、キリンの柄とか、熱帯魚の柄とか。


あれ、遺伝子で柄が指定されているわけではないです。「偶然」で出来上がっている。

でも、この偶然の指定は、遺伝で決まっている。


その偶然の指定が、どうもセルラーオートマトンのルールみたいになっているようなのです。

ライフゲームのルールをちょっと変えて適用してやると、いろいろな動物の柄に似たものが浮かび上がってきたりします。


こうした研究も、コンウェイのライフゲームの研究の上に成り立っているものです。




セルラーオートマトン自体は、マス目に区切った世界にルールを適用し続けるものなのですが、ここから派生して「人工生命」という研究も生まれました。


コンウェイのライフゲームは、非常に単純なルールを適用するだけで、生物の「ようにみえる」状況を生み出すものでした。


でも、もう少しちゃんと「生命らしい」ものを作ってみたら?


マス目にルールを適用するのではなく、生命としてふるまうプログラムを作って、いろいろな研究をするのが「人工生命」の分野です。



遺伝的アルゴリズムとか、人工生命分野から生まれた発想で、今では別の分野でも使われます。


「少しづつ違ったランダムパラメーターを用意して、それらどうしを戦わせ、優れたものだけ残していく。

 残った者同士のパラメーターをかけ合わせたり、ランダムに突然変異を入れたりしながら、さらに強いものを残す。

 最終的には最強のパラメーターが出来上がる」


という考えかた。


例えば、2000年を過ぎたころから、急にチェスや将棋、囲碁の AI が強くなってきたのは、この考え方を取り入れたためです。





まぁ、僕はこうした世界は「好き」ではあるのですが、研究者ではないので薄っぺらな知識しか持っていません。


亡くなったコンウェイ氏の業績としては、ライフゲイムなんてのは「ほんの僅かな手遊び」みたいなもので、非常に偉大な数学者だったようです。


でも、そちらについても僕はちっとも理解していませんので、紹介できません。



しかし、ライフゲイムだけでも、上に書いたように後に続く様々な研究の礎となっているわけです。



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