2017年01月26日の日記です


後藤英一 誕生日(1931)  2017-01-26 10:10:44  今日は何の日

今日は後藤英一さんの誕生日(1931)


パラメトロンの発明で有名な方ですが、他にもコンピューター関連の素子を多数発明しています。



まずは、パラメトロンから説明しましょう。


その昔、コアメモリというメモリ素子がありました。

フェライトコア…鉄粉を焼き固めて作ったドーナツ型の焼き物を、電線で多数編んだだけのものです。


こんなものが、非常に優れたメモリ素子になる。

真空管は高価だし、水銀遅延線は不安定で有毒だし、ウィリアムス管は思ったより記録密度が低いし…という時代に現れ、一躍メモリの主役になりました。


パラメトロンは、このフェライトコアに電線を巻いて、二つ組み合わせ、コンデンサを付けただけの素子です。

…ちゃんと動作原理を理解していないのだけど、コイルとコンデンサなので LC回路(発信回路)が出来上がります。


2つのコイルは、半周期ずらした逆位相になるのだけど、これが「どちらの位相になっているか」を制御することで、0と1を表現できる。


この回路は非常に安定していて、弱くても位相を決めてしまえば、後は勝手に発振しながら定常状態を作り出し、しっかりした波になる。

つまり、弱い波を増幅する効果がある。


この効果を使って、複数の素子からの入力を同時に別の素子に入力すると、逆位相の波は打ち消しあい、同位相の波は強めあう。

これにより、入力された回路の「最初の状態」が決まる。最初の状態が決まれば後は勝手に増幅して状態を保持するので、多数決の論理回路になる。


これで、論理回路が完成します。論理回路があれば、後はコンピューターを組み立てられます。



後藤さんは、大学生の時にコンピューターを作ろうとし、予算が足りないためにできるだけ安く、論理回路が作れる素子としてパラメトロンを発明します。

素子を使ったコンピューターとして、最初に完成したのは電電公社・電気通信研究所の MUSASINO 1号 (1957)。


後藤さんの所属していた東大高橋研究室でも、1957年に9ビット加算器が動作することを実験で確認し、翌年には 36bit コンピューター PC-1 を完成させます。


#当時は、1byte = 6bit が普通なので、1word = 6byte のコンピューターとなる。


この方式は国内のコンピューター会社でも採用され、日立の HIPAC 103、日本電気の NEAC 1101、富士通 FACOM 212 などが作成されます。


しかし、パラメトロンは真空管や、当時新素子だったトランジスタよりずっと安く、安定性もあったものの、速度が致命的に遅いという問題がありました。

パラメトロン自体が発振回路ですから、外部から与えるクロックを上げて高速化…などは出来ないのです。


この頃最新のトランジスタコンピューターでは、動作速度 1MHz 程度。

それに対し、パラメトロンは最高でも 60KHz 程度でした。


パラメトロンコンピューターを各社が作っていた期間は 2年程度…広く見ても 5年程度で時代は終わりました。




1957年、日本人の江崎玲於奈博士が、エサキダイオードを発明しています。

量子トンネル効果を利用したダイオードで、この研究により江崎博士は 1973年のノーベル物理学賞を受賞しています。


後藤さんも、このエサキダイオードにすぐ注目し、パラメトロンコンピューターの研究を続けている最中に、並行して研究を行います。

そして、パラメトロンと同じように動作する素子を、エサキダイオードでも完成させるのです。


…またすみません。僕、回路には疎いので、説明できない。


一応、エサキダイオードを2つ直列に組み合わせることで、2安定回路というものを作れるのだそうです。

出力電圧が2つあり、高い電圧か低い電圧の、どちらかで安定するようになっている。だから2安定回路。


安定したところから多少離れた電圧を入れても、回路自体が「安定」を作り出すようになっているので、すぐに安定状態に戻ります。


2つの状態があるのですから、2進数を表現できます。

そして、これはパラメトロンと同じように、多数決回路として動作するのです。



2つのダイオードを組み合わせただけで論理素子となることから、ゴトーペアと呼ばれています。


#ダイオードなら何でもいいわけではなく、エサキダイオードのようなものでないとダメなんだそうです。




後藤さんは 1960年代前半に、ワイヤーメモリを発明しています。


コアメモリは、ワイヤーの交点にフェライトコアを配置したものでした。

これに対し、ワイヤーメモリはあらかじめ磁性体を塗布したワイヤーを編んだものです。


これもまた、資料が少なすぎて解説できない。

フェライトコアの代わりに磁性体を塗っただけで同じもの…なら話は速いのですが、どうもそうではありません。


コアメモリは、読み出し時に書き込まれていた値を「破壊」してしまいます。

そのため、読み出し直後には必ず書き込みを行う必要があり、メモリアクセス速度の低下につながります。


しかし、ワイヤーメモリは非破壊で読み出しが行えるのだそうです。


しかし、この発明もすぐに半導体メモリの時代が来てしまったために、国内で使われた程度で終わっています。




後藤さんは、単にパーツを組み合わせて何かを発明するような「発明家」ではなくて、素子の物理特性などを調べ、その性質を組み合わせることで目的にかなったものを作り出そうとする研究者です。


興味は主にコンピューター素子だったようですが、それだけではありません。



1933年のノーベル物理学賞は、ポール・ディラックが受賞しています。

彼は「ディラック方程式」として、複数の力学を1つの数式にまとめようとしました。


この数式に従うと、磁石のN極とS極は、「片方だけでも存在し得る」ことになります。

ディラック以前は、磁石の両極は不可分のものと考えられていました。


こうしたものを「単極子」、英語では「モノポール」(モノは「1つの」という意味。ポールは棒、軸、極性…両端があるものを意味する)と呼びます。


後藤さんは、モノポールの探究にも情熱を注いだらしいのです。




さて、これで後藤さんの話になるとよく出てくる言葉が説明できます。

ある時、外国人の研究者に名前を名乗るとこういわれたそうなのです。


「私はこの分野で後藤という名前の日本人を3人知っている。パラメトロンの後藤、ゴトーペアの後藤、磁気モノポールの後藤。お前はそのうちのどれか?」


パラメトロンとゴトーペアは、論理的にはある程度似ている素子です。

しかし、その物理特性などは全く違い、全く違う研究と思われていたのでしょう。


もちろん、モノポールは全く畑違いの分野です。

だから、この質問をしたくなる理由もわかります。


もちろん、後藤さんの返事は「そのすべてだ」だったそうです。





これだけ幅広い研究を行う人ですから、時には脱線…のように見える研究も行います。

彼の中ではひとつながりなのでしょうけど。



ジョセフソン素子、という論理素子があります。

超電導状態になる極低温でしか動作せず、エサキダイオードにも見られる量子トンネル効果を利用しています。


このジョセフソン素子を使い、パラメトロンの「安定性」を導入したのが、磁束量子パラメトロン素子。

パラメトロン自体が発振回路なので速度を上げられない…と先に書いていますが、発振回路はコイルの大きさなどにより発振速度が変わります。


磁束量子パラメトロンでは、通常のシリコン素子よりもスイッチングが高速で、テラヘルツ越えで安定して動作します。

元となったジョセフソン素子よりも低電力で動作するなど、優れた特性を持ちます。


この素子は 1986年にはすでに開発され、動作が確認されているのですが、なにぶん超低温でないと動かないため、実用化はされていません。



しかし、後藤さんは実用化を目指し…晩年は、液体ヘリウムによる極低温冷凍庫を安く作ることができないか、という研究に熱心だったそうです。

液体ヘリウム自体が非常に高価なものですが、普通の冷凍庫のサイズで、普通の2倍くらいの値段に収めることができれば、超電導コンピューターが実用化できる、と研究を続けていたとか。


しかし、残念ながら 2005年に亡くなられています。




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【雷更新世】 どうやら「棒」のpoleと「極」のpoleは別語のようです。 https://en.wiktionary.org/wiki/pole (2017-01-27 00:38:59)


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