AM放送を縮小しよう、という話が出ているらしい。
この話題を知って、AM 放送受信機は簡単に作れるし、災害時のためにやめるべきではないのでは…
と思ったのだけど、そういう日記を書くつもりで調べていたら、自分の認識違いに気づいた。
子供のころはラジオの主役は AM だった。
しかし、ビル群が立ち並ぶところが増え、電波雑音を出す機器が増え、そもそも FM しか受信できないラジオも増え、AM が受信できない地域・環境が広がっている。
複雑な話は避けるが、ビルの構造である「鉄筋コンクリート」は、電波を捕まえる網のようなもの。
網の目が電波より細かくなると、捕まって通れなくなってしまう。
電波は目に見えないけど「大きさ」があって、FM だとだいたい 4m だ。
4m の隙間があれば電波は通れる。ビルの中でも、何とか受信できるかもしれない。
これに対し、AM はだいたい 300m だ。ビルの中は絶望的で、場合によってはビル街の中でも受信できない。
また、FM は原理上雑音の影響を受けにくいが、AM は雑音の影響を受けやすい。
コンピューターからの雑音を使って、AM ラジオで音楽が演奏できる、というくらい雑音の影響を受ける。
だから、ラジオ付き携帯電話などでは、FM にしか対応しない。
携帯電波の雑音が邪魔で、AM は使い物にならないからだ。
2016年には、AM 局が FM に「引っ越し」できるように、アナログテレビ電波の跡地を使った「ワイド FM」も準備された。
対応した機器が必要、とされているけど、特に「ワイド FM 対応」である必要もない。
1980年代後半からは当たり前になった、アナログテレビ 1~3ch の音声を聞ける FM ラジオなら、すでに「対応」になっている。
ワイド FM が使うのは、テレビ電波 1~3ch の跡地だからね。
まぁ、必ず対応しているとも言い切れないので、「対応機器が必要」という言い方は間違えていないのだけど、特別な機械ではない。
AM ラジオなら自作で簡単に作れる…も、今では過去の話のようだ。
昔は、学研の「6年の科学」の定番人気付録に、ゲルマニウムダイオード1石ラジオがあった。
非常に単純な部品…IC とかは使わず、ダイオードとイヤホンとコンデンサとコイルを組み合わせるだけで完成する。
電池もいらない。でも、ちゃんと受信して聞こえる。
小学生が簡単に組み立てられるくらい、ラジオの基本は単純なんだ。
だからこそ、災害時でも情報を得るのに有効、と言われていた。
でも、現在は自作に向いたダイオードや、クリスタルイヤホンは、すでに「特別なもの」になりつつある。
その気になればまだ入手可能だけど、わざわざ入手する必要はある。
いずれも、昔は、どこの家庭にでも探せば(適当な機械を分解すれば)あるようなものだった。
今は、機械を分解しても IC だらけで、ラジオを作り出したりはしにくい。
先に書いた「ワイドFM」は、国の方針もあって、AM 局の対応が進みつつある。
しかし、ラジオはすでに斜陽のメディア。
現状でも採算に乗りにくいのに、FM に対応するための設備投資が必要になる。
さらに、FM に対応しても AM 放送も続けないといけないし、その AM 放送施設もすでに老朽化しつつある。
先に書いたように、AM を聞く人は減少傾向で、わざわざ老朽施設を更新するだけの意義も感じられない。
電波は公共のものだし、AM は「災害時に役立つ」と長年信じられてきたので、国としては AM 放送を続けることを、電波免許の交付条件にしている。
しかし、先立つものがなくては維持できない。
そこで、AM 局の協会が、状況次第では AM をやめて FM に一本化することを許可してほしい、という陳情を出した…
というのが、冒頭に書いた「AM 縮小」の話だ。
積極的に無くしたいわけではないが、時代の流れでそうせざるを得ないというところ。
で、最初に書いたように、縮小なんてとんでもない! という話を書こうと思っていろいろ調べていたら、自分の勘違いに気付いたというわけ。
すでに災害時のラジオ自作は現実的ではないし、自作しても受信できない地域が多いのであれば、意味がない。
子供のころに学研の付録で手作りしたラジオで番組を聞いた時のワクワク感はなくなってほしくない…と思うのだけど、これだってノスタルジーにすぎない。
同じようなワクワク感は、ロボットの手作りだって、自分でゲームプログラムしたって得られるだろうし、現代的にはそちらの方がよさそうだ。
まぁ、それでもなにがしかの「思うところ」があるからこんな日記にまとめたのだけど。
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