昨夜、車のディーラーさんから電話が来た。
スズキ車で、ブレーキ検査で不正が行われていて、不合格であっても合格にしていた、という問題。
昨年から続く、自動車業界の「検査不正」問題の中で、スズキはいったん社内調査で「不正はなかった」としていたが、ここにきて「やっぱありました」と明らかにした形だ。
で、我が家では昨年秋にスズキ車を買っているので、ディーラーさんから「買ったばかりで不安をおかけしてすみません」と連絡が来た次第。
もっとも、実際に不正があり、リコールになる車種の公表は今後の詳細把握後になるので、うちの車がまだどうなるかはまだわからない。
ここ数年、自動車業界全体で、検査不正が明るみに出る、ということが相次いでいる。
以前から不正が行われやすい業界慣習があったのが、一端が明るみに出たことで再調査が行われ、次々明らかになっているのだろう。
だから、不正が見つかったことが悪いことだとは思わない。
不正を「行っていた」ことは良くないが、それを隠し続けようとすることはもっと悪い。
ここで見つけ出し、改められるならそちらの方が良い。
同時に、ここまで業界全体で不正が行われていて、何十年も行われていたのに「特に問題が出てこなかった」というのは、検査自体が厳しすぎるのだろうね。
厳しいから、多少の逸脱があった程度では問題が生じないし、その経験があるから気軽に不正が行われてしまう。
また、厳しいから不合格になることが「普通のこと」で、普通だから真剣に調整しなおして合格させないといけない、と思わなくなっている。ここでも不正を行うことに対してのハードルが下がっている。
不合格は許容できない異常である、という程度のちょうどよいあたりに検査合格ラインが来るのが適正なのだろうけど、たぶんその線引きは難しいのだろうな。
検査には手間がかかるもので、その手間が商品代金に適正に上乗せできるのであれば、問題はない。
でも、安売り競争のために手間を惜しまないといけないのであれば、ライバルすべてが不正に手を染めてしまう、ということになる。
この構造は、ゲーム理論でいうところの「囚人のジレンマ」だ。
みんながちゃんと手間をかけて商品代金を適正につけていれば、全体としての最適解となる。
しかし、「ある会社だけが」こっそりうそをついて手間を惜しめば、値段を下げられて人気が出る。
この時、「別の会社は」適正な値段をつけているにもかかわらず、値段が高いと人気を落とす。
これは、適正値段をつける会社にとっては悪いシナリオだ。まじめにやっているのに売れないのだ。
だから、このシナリオは避けなくてはならない。つまり、不正を行い、黙っているのが良い。
結果として、全部の会社が不正を行っている、というのが「均衡状態」となる。
しかし、実はもっと悪い「最悪シナリオ」がある。不正がばれることだ。
「全部の会社が不正をしている」が均衡状態なので、一社の不正がばれ、他の会社にも調査が及ぶと、次々不正が発覚する。
現在、業界全体でこれを経験しているところ。
おそらくは、しばらく後に「不正がばれるのが一番怖い」と学習し、全体が最適解に導かれるだろう。
しかし、その最適解は長くは続かず、忘れたころに均衡状態に戻る。
これは、そういう構造が作られているのだから仕方がないのだ。
自動車業界に限らず、建築業界でも数年前に耐震偽装問題があったし、今も施工不良問題で騒いでいる。
ところで、スズキのディーラーというのは「自動車を販売する別会社」であって、自動車を作っているわけではない。
ディーラーは、親会社がちゃんと自動車を作っていると信じて売っているだけだ。
だから親会社が不正をしていたからと言って、僕個人としては、そんなに謝る必要はないと思う。
電話をくれた担当営業の方にもそう言っておいた。
まぁ、ディーラーは直接お客さんと接する窓口としての機能もあるので、謝るのも仕事の内だろうけど。
最初に書いた通り、電話は夜きた。
普通は日中家にいない人が多いわけで、電話するなら夜がいいだろう。
でも、それはつまり、全国の営業に対して、夜間残業を発生させていることになる。
謝るのも仕事の内…だといいな。
仕事なら、残業代が出て当然だからだ。
そして、この残業代は、子会社であるディーラーではなく、親会社であるスズキが「謝罪を仕事として依頼した」ことにして支払ってほしい。
善意の子会社に負担を押し付けておしまい、では「不正を働いた」痛みを伴わないことになるから。
痛みを伴わなくては、また同じことを繰り返すだろう。
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