2013年09月18日の日記です


ICANN設立日(1998)  2013-09-18 10:34:53  コンピュータ 今日は何の日

今日は ICANN が設立された日(1998年)。


ICANNは縁の下の力持ち。誰も知らなかったとしても、絶対にお世話になっているはず。

インターネットの IPアドレス・ドメイン名の割り当てを行う組織です。


設立が 1998年? と言うところで疑問を持ったあなたはスルドイ。

もちろん、ICANN 設立以前からインターネットは存在しました。


インターネットの前身となる ARPANET は 1969年に行われた実験から始まっています。

この実験は10月29日に行われているので(忘れなければ)その日に書きましょう。



ともかく、ARPANET に接続する大学・企業などは徐々に増え、ARPA が資金提供していない部分が大多数を占めるようになったため、「インターネット」と呼ばれるように変わっていきます。


ところで、インターネットの仕組みとしては、IP アドレスの割り当ては必須です。

これは、当初ボランティアによる人手で行われていました。


申請があれば、団体ごとにある程度まとまったひとかたまりの IPアドレスが払い出されます。

受け取った団体は、それを自分のところのコンピューターに好きなように…全てが異なるよう、責任をもって割り振ります。

団体に割り当てた範囲が重複せず、団体の中で重複しなければ、全体としても重複しない。

簡単でわかりやすい方法です。牧歌的な時代でした。


ARPANET の初期は直接 IP アドレスを入れて通信していましたが、不便なので hosts ファイルと言う簡単なデータベースが作られます。

これは電話番号帳のようなもので、相手の「名前」を入れれば、適切な IP アドレスに変換できました。


このファイルは、ダグラス・エンゲルバートの研究室に置かれ、ネット上ではファイルのある場所は「ネットワークインフォメーションセンター(NIC) 」と呼ばれていました。




ネットに接続する団体が増加するにつれ、IP アドレスやドメインの発行が、ボランティアでは間に合わなくなります。

ここに「IANA」が設立されます。


Internet Assigned Numbers Authority …ネットの数字割り当て局、とでも訳せばよいのでしょうか。


IANA は、数字(IPアドレス)だけでなく、ドメイン名も管理します。

(もっと言えばポート番号も。新たなサービスを作るときには申請が必要です)


そして、発行されたアドレス・ドメインは、hosts ファイルに記載され、NIC からネットワーク中に配布されました。



当初は、皆が最新の hosts ファイルを時々取りに行き、手動で更新していました。

(特定のメールアドレスにメールを送ると、自動的に返信が送られてくるので、その内容をマシンの特定の場所に、特定のファイル名で置く方法でした)


しかし、ネットに接続するコンピューターが増えるにつれ、hosts ファイルを取得するための手間も、取得される側の負荷も上がっていきます。


そこで、DNS が考え出されます。


hosts ファイルよりも、もう少しマシなデータベースとして管理を行い、サーバー同士で「知らないことは聞く」ことでドメイン名をIPアドレスに変換するシステムです。

これで、管理の手間・負荷の問題が解決します。


しかし、DNS のルートサーバー(一番重要なサーバー)は、まだ NIC にありました。

その後 NIC はエンゲルバートの研究室から別の会社に移管されたりしたが、基本的には同じ構成のままです。




インターネットは ARPANET から始まったものだったので、これまでは管理などにアメリカ国防総省が資金提供をしていました。


しかし、ネットワークへの接続は、アメリカだけでなく世界中に広まりつつあり、規模も増大しています。

もう、管理に米国の税金をつぎ込む時期を過ぎました。国防総省は資金提供をやめることにします。


ここで、当時のインターネットの最大の利用者団体である、アメリカ国立科学財団が新たなスポンサーとなります。

そして、IANA/NIC の業務を3つに分割し、競争入札で一番安い値段で仕事を請け負った3社に任せることにします。


1992 年、仕事の移管のために InterNIC が設立されました。

ARPANET の NIC ではなく、Internet の NIC だという意味の名前です。


この時の各社との業務委託契約期間は5年でした。


しかし、この5年間のインターネットの伸びはすさまじいものでした。

…1995 年、Windows 95 が発売され、空前のパソコンブームが起こります。


Win95 にはインターネット接続機能はありませんでした。

この頃すでにインターネットのブームは始まっていましたし、Mac ではネット接続機能は標準でついていました。

Win95 にネット接続機能がないのは、明らかに「時代遅れ」でした。


しかし、機能がなければサードパーティにとってはチャンスです。

多くのインターネット接続用ソフトが発売されましたし、プロバイダと契約すると無償提供される場合もありました。



その後、Win98 が発売されたときには、ネット機能は標準でついてきました。

3年で機能を標準化するほど、この時のインターネットは爆発的なブームだったのです。


InterNIC では、1995年以前はドメイン名などは無料で発行していました。

しかし、登録数の爆発的増加を抑える目的と、増えた手間に対する損失を埋め合わせるために、1995年からドメイン登録を有料とします。


…それでも手間は増える一方で、歯止めは利きませんでした。



5年目の契約終了日、InterNIC の一翼を担っていた AT&T が契約の更新を拒否します。

おそらくは、最初に考えていたよりも業務内容が増えすぎて、契約金がわりに合わなかったのでしょう。


実は、当初契約3社のうち1社は契約違反により途中で契約打ち切り、その仕事は AT&T が引き受けていました。

つまり、AT&T が辞めると、InterNIC は仕事内容の 2/3 を失うことになります。


インターネットは研究者が使う段階、マニアが使う段階を過ぎ、すでに一般市民が使う大事なインフラの一部になっていました。


当初は、残る一社がすべての作業を行う…と言う形で InterNIC の存続が決まりかけました。

しかし、これにストップをかけたのが、米国商務省です。


あっという間にインターネットが普及し、すでに生活に必須のものとなっています。

このネットワークの維持業務を1社に独占させるのは、独占禁止法違反になるというのです。


米国商務省は新たな組織の提案を行い、InterNIC 体制はわずか5年で終了します。




そして、InterNIC の仕事を引き継いだのが…1998年の今日誕生した、ICANN です。

業務内容は NIC / InterNIC と同じで、IANA が発行した各種資源の管理が中心です。


ただし、独占市場を作り出さないように、ICANN は非営利団体に指定されています。


実際の DNS の運用やドメイン名の登録作業は手間がかかる…つまり有料にする必要がありますが、これらは民間に委託する形で賄われています。


現在、ドメイン登録を行う「レジストラ」が多数あるのはそのためで、商務省の狙い通り、競争によりドメイン料は値下がりし、非常に安くなりました。



ただし、競争が起きているのは ICANN が直接管理しているドメイン名だけ。

たとえば .jp ドメインは、日本の JPNIC が管理し、ドメイン管理は日本レジストリサービスが独占しているため、料金は高止まりしたままです。


高止まりと言っても、別に JPNIC が利権に胡坐をかいているわけではないですよ。

日本では、安いことよりも安定していることが求められるから、JPNIC はその習慣に従っているだけ。


ICANN のドメインは誰でも取れるし、うっかり期限切れにして「乗っ取り」という怖さもあります。

JPNIC は名称を名乗る資格があるか審査されるため、乗っ取りも起こりにくいのです。


高いにはそれなりの理由があって、日本人がそれを求める限りは変わらないのだろう。


…僕としては ICANN の方式でいいと思っているけどね。

(だから wizforest.com ドメインを使っているのだけど。)



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