2015年07月01日の日記です


A Dark Room , Candy box! , Cookie Clicker.  2015-07-01 18:41:51  コンピュータ

日記でゲームのことを書くことはめっきり減りました。

子供が生まれる前は良く書いていたのだけど。


で、今日書きたいのは A Dark Room

無料で遊べる、Javascript のゲームです。


海外では 2013年後半ごろに話題になったようで、作られたのは5月ごろみたい。


でも、当時は英語版しかなかった。

このゲーム、文章がかなり重要なので、日本人にはハードル高くて、それほど話題にならなかったようです。


今は日本語対応しています。

でも、もう旬を過ぎたのであまり遊んでいる人いないみたい。

やっぱり、日本では話題になっていない。




ゲームを始めると、ブラウザの左上にそっけない文字が書かれています。


火は消えている.

部屋は凍える寒さだ.

暗い部屋
火をつける

これだけ。

火をつける、は枠が描かれていてボタンなのかな、と思えるので、押してみましょう。


左側に新たな文章で状況説明が出ます。


火は燃えている.

火の光は窓から暗闇にこぼれだしている.


「火をつける」は、色が薄くなり、「薪を燃やす」に変わります。

背景に縮む帯が出て、ボタンが押せなくなる。


…これ、行動制限を示しているようです。帯が縮み切れば次の行動を出来る。




非常に簡単なゲームなので、多くは説明しません。

ちょっと驚く仕掛けが次々と現れるので、自分で体験してみてください。


どんどんできることが増えて、仲間が増えて、村を作り、冒険に乗り出すことになる。

でも、自分が出来ることは基本的に「押すとその後しばらく押せなくなるボタンを押す」ことだけ。


いや、後半は別の操作が中心になるかな。

でも、やっぱりボタンを押すことは大切。




すべての状況は、短い文章で表示されます。

これが非常に良い雰囲気。文章と文章の「行間」を感じさせて、足りないところは自然に想像がはたらき、自分が物語世界を感じていくのがわかる。


このゲームは全て、「感じ取る」ことが重要なようです。

最初に「火をつける」のボタンを押す際も、何の説明もありません。ボタンに見えるから押したくなるだけ。


どんどん新しい状況になり、表示が追加されても、それが何を意味するのか、一切説明はありません。

自分で想像し、ルールを把握して行くことが中心のゲーム。



最初はなにも明かされていませんが、だんだんこの世界が何であるかわかってきて、最終目的が見えてきます。

最終目的を達成できればゲーム終了。


でも、ゲームはそれで終わりではありません。2周目が始まる。

先に書いたように、「ルールを把握する」ことが大切なゲームなので、2周目はつまらない…


なんてことはない!

2周目になって初めて起きるイベントもあります。

何度も遊んでみないとわからない仕掛けが沢山。


これは、話題になった理由もわかります。

日本語化された今、是非遊ぶべきゲームです。




さて、ネタバレするとつまらないのでこのゲームについてはこれ以上書かない。

ゲーム名で調べると攻略ページなんかもあるけど、このゲームは「ルールを自分で把握する」のが楽しみの8割なので、ネタバレはゲームをつまらなくするだけ。


…と書いておきながら、別のゲームの話題を書きます。

別のゲームと言っても類似点があるので書くわけで、それ自体がネタバレになるかもしれないのだけど。



同時期に、Cookie Clicker というゲームが流行しました。こちらは8月発表、らしい。A Dark Room が話題になった後だね。


こちらは文章はさして重要ではないゲームだったので、日本でも異常な盛り上がりを見せました。

パロディもあったくらい。


僕も Cookie Clicker は遊んでみて、衝撃を受けました。

テレビゲームを作っていた人間として、あんなゲームの作り方があるなんて思いもしなかったから。



元ネタともいえる A Dark Room や、後で書く別のゲームを知らなかったから、余計に衝撃が強かった。

でも、最近 A Dark Room を知ったので、Cookie Clicker はいきなり現れたわけではないと理解できました。




一応、当時の騒ぎを知らない、もしくは知っていても遊んだことは無い人のために、簡単な解説をしておきましょう。


Cookie Clicker は、クッキーをクリックするだけのゲーム。


表示されているクッキーをクリックすると、クッキーが1個生産されます。

生産枚数は数字で表示されていて、押すたびにカウントが上がっていく。


このクッキーを増やしてどうするのかというと、クッキーを自動生産するアイテムなどが買える。

生産してアイテムを買い、それで増えたクッキーでさらに高価なアイテムを買う…というゲーム。


特定条件で開示される「実績システム」とか、最近のゲームによくありがちな仕掛けがちゃんと入っている。

やることは「クッキーを作る」だけなのに。


そして、このゲームがすごいのは、「リセット」が重要な事。

ゲームをリセットすると、もちろん最初からやり直しなのだけど、先に書いた「実績」は残っている。


さらにリセットするともらえるボーナスもある。

これらの「実績」や、ボーナスは、クッキー生産時に「倍率」としてかかってくるので、リセットするたびに自分が強くなる。


このゲーム、かなり時間を使うから、リセットすると「それまでの時間が無駄になる」気がして最初は怖いのだけど、リセットしてからが本当の意味でのゲームスタートだと思います。


何回もリセットしていると、1クリックで1京(10の16乗)のクッキーが生産できるようになります。

これ、リセット無しだと絶対たどり着けない。リセットしてからが本番、というのもそのためです。



「クッキーを作るだけ」という根幹システムの単純さに比して、周辺の仕掛けが大がかりです。

アイテムなどのグラフィックも併せ、このトチ狂った世界観がウケて大ヒットしましたが、ゲームとしてもよく出来ています。


ゲーム制作側にいた人間としては、「おまけ」だったはずの実績システムなんかをゲームのメインに持ってきたところや、恐ろしいほどの点数のインフレに衝撃を受けたのね。




さて、A Dark Room と Cookie Clicker は、どうも共通の「祖先」を持つようです。

話題になったベースを元に、別々の人間が、別の方向で洗練させたのが2つのゲーム、という意味ね。


元になったのは Candy box! というゲーム。

1秒に1個、勝手に Candy が増えて行って(数字表示のみ)、「食べる」「投げ捨てる」というボタンだけが表示されているゲーム。


これも、ある程度キャンディを溜めると、別のアクションができるようになっていきます。

遊んでみると、なるほど、共通の祖先だ、ということがよくわかる。


Candy box! は、基本的に文字だけです。でも、アスキーアートは結構使っている。

文字と簡単なアスキーアートだけ、というのは、おそらくは UNIX 初期のアドベンチャーゲームみたいなのを作ろうとしたのではないのかな、と想像します。


というのも、このゲームは「アドベンチャーゲーム」だから。

キャンディを集めるところから始まるのだけど、最終的には順番にフラグを立てていく、その過程を楽しむゲーム。

(僕はアドベンチャーゲームが好きではないので、残念ながらあまり面白いと思えなかった)


ただ、普通のアドベンチャーゲームと違ったのは、「増えていくキャンディ」を通貨としていること。

その過程で、キャンディを使ってキャンディを生産する、錬金術のようなシチュエーションが登場します。



A Dark Room は、アスキーアートも排して極力文字だけで表現しています。

この文字だけの世界が、ゲームというより「物語」を感じさせる。


体裁としては Candy box! と似た始まり方なのだけど、こちらはアドベンチャーゲームではないです。

刻々と変わる状況を乗り切る、シミュレーションに近い感じ。Candy box!のような「生産活動」もあるのだけど、錬金術ではなくてもっと経済的。


アドベンチャーゲームではないのだけど、状況が言葉で説明されるし、言葉の選び方が巧みなので物語を感じさせてしまう。

ちょうどこの頃、「ナラティブ」って言葉がゲーム業界で流行したんだよね。

物語を「語る」のではなく、「感じさせる」ゲーム。A Dark Room もそういう流行と無縁でないように思います。



Coockie Clicker は A Dark Room とは逆方向の進化。全てを美しいグラフィックにしました。

世界観は先に書いた通り、狂っている。不条理とかのレベルではない。

Cookie を使って Cookie を作り出す、という錬金術こそがこのゲームのすべて。


実のところ、 Cookie Clicker は Cow Clicker というゲームに対する皮肉として生まれたのだそうです。

Cow Clicker というのは、ネットサービスでユーザーをつなぎとめるための「ポイントを貰える」だけの存在。

1日1回だけクリックできて、ポイントが溜まります。


この、面白くもなんともないものを、提供会社が「ゲーム」と呼んでいたので、クリックするだけで本当に面白いゲームを作ろうとしたのが Cookie Clicker なのだとか。


でも、Candy box! の影響は強いように思います。

お菓子を農場に投入して(種として植えて)、結果お菓子がすごい勢いで増える…なんて、まったくそのまま。


A Dark Room の影響もうけているのではないかな。Candy box! 程の影響は感じないけど。




Cookie Clicker は、β版も公開されていて、「実験中」のプログラムなどが入っていました。

結局公開版に統合されなかったけど長い間実験されていたものに、「ダンジョン」がありました。


Rogue みたいに自動生成されるダンジョンがあって、その中で自動的にキャラクターが冒険し、クッキーを持ち帰るの。


実は、candy box! にも自動的に行われる「冒険」があって、それを取り入れたかったみたい。

ネタバレになりますが、A Dark Room にも類似のものがある。



日本では Candy box! も A Dark Room もあまり知られていないので、この手のゲームは「Cookie Clicker 系」と呼ばれています。


でも、アメリカでは「Candy box! like game」らしい。

なるほど、3つとも遊んでみたら進化の過程がわかりました。

結果として全然違うものになっているのだけど。



というわけで、3本のゲームを紹介してみました。

関係性があるし、ゲーム的にも似ているのだけど、面白さのポイントは全く別。



遊んでみたい方は、以下へどうぞ。


Candy box!

A Dark Room

Cookie Clicker




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