妻が、好きなミュージシャンの出演するラジオ番組を録音している。
いわゆる「エアチェック」と呼ばれるものだ。昔から、ラジオファンが番組をテープに録音することは良く行われているし、法的にも「個人で楽しむためのコピー」に限って認められている。
最近のラジオ局では、スタジオにテレビカメラを持ち込んでインターネットで公開しているところも多い。せっかくなので、そういう映像も録画しておく。
大抵のストリーミングビデオプレイヤーでは「保存」が出来ないようにしてあるのだが、モニタの前でビデオカメラで撮影するというローテク手法にはかなわないし、画面をそのまま連続キャプチャするソフトもある。
一部のプロトコルに限って言えば、直接ストリームをファイルに落とすことも可能だ。
そこでふと思う。多くのプレイヤーが保存できないようにしてあるのに、それを「保存」することは違法ではないのか?
いや、大丈夫。これはエアチェックと同じ行為だ。「個人で楽しむためのコピー」であれば問題は無い。
しかし、デジタルデータとなるとどこからどこまでが垣根かわからなくなってくる。
「ストリーム放送」は、ラジオと同じ感覚なのでエアチェックで良いだろう。
しかし、中にはリアルタイムのストリーム放送ではなく、ファイルとして圧縮して後で公開するラジオ局もある。
このファイルを「ストリームで視聴する」のはともかく、「ダウンロードして保存する」のは違法ではないのだろうか?
いや、これも大丈夫。これも「個人で楽しむためのコピー」の範囲だ。
じゃぁ、話をもう一歩進めよう。
相手のサーバーにあるファイルを、ダウンロードして自分のディスクに保存することは違法ではないことがわかった。
じゃぁ、この「ファイル」が、市販されているソフトウェアだったら?
これは違法な気がする。しかし、奇妙なことに現行法では先のストリームの例と区別することが出来ない。だからこれも違法ではない、というのが正解だ。
ただし、それは「ダウンロードする側」に限った話だ。ダウンロード「させた」側は違法になる。
なぜなら、「個人で楽しむためのコピー」の範囲を超えて、コピーを他人に配布してしまったことになるからだ。
さらに話を進める。インターネットでは、データを複数のコンピューターのバケツリレーで運ぶ。じゃぁ、その途中のコンピューターはみんな共犯か?
コピーを他人に配布したのだから共犯と考えることも出来る。しかし、法律では「善意の第三者」は処罰対象ではない。知らずに犯罪に巻き込まれた「途中のコンピューター」は違法ではないのだ。
Winny というソフトがある。このソフトは、「どこかにある」ファイルを入手するのに使えるが、その元ファイルがどこにあるかはよくわからない。
もちろん公開したのが誰かも良くわからないし、流通した経路もよくわからないように作ってある。
その仕組みはこうだ。Winny を使っている人は、誰しもがデータの配布者なのだ。知らない間に誰かのデータを手元にコピーし、知らない間に誰かが持っていく。使っている人は「善意の第三者」だが、気がつくと手元にはデータが残っているし、どこかのデータをもってくることも出来る。
このソフトで、市販ソフトなどを入手することは違法ではないのか?
おそらく、違法だろう。「善意の第三者」とうそぶいても、Winny を使っている人はそこで流通するデータが違法かもしれないことを良く知っている。第三者という立場は変わらなくとも、「善意」かどうかは怪しい。
ただ、「現状では」Winny の流通経路にいる個人を特定することが難しいので、犯罪者として逮捕することは難しいのかもしれない。
ところで、google は違法ではないのだろうか?
「誰かの」著作物を大量にコピーし、キャッシュとして誰でも見られる形で配布している。これは「個人で楽しむためのコピー」という範囲を超えている。
Winny の違法性を証明するよりは、google の違法性を証明することの方が簡単そうだ。
インターネットの暗部は、案外身近なところで口をあけている。
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