2012年03月12日の日記です


D/A とガジェット  2012-03-12 13:08:31  コンピュータ

ちょっと昔話。OldGoodComputer ミニ。


僕は、Mac の OS としては System6 が一番好きだった。

知っている人がほとんどいない古いものだが、知っている人には「それなりに」賛同してもらえる。


Mac は、よく「Window システムの元祖」的に言われる。

まぁ、それはそうなのだが、Mac の Window というのは、最初はそんなにたいしたものではなかった。


だって、マルチタスクじゃないんだから。

Window が出ている、と言っても、1つのアプリケーションだけだ。

アプリケーションが複数の Window を開くことはあるかもしれないが、画面が Window だらけでごちゃごちゃ、と言うような事態にはならなかった。



マルチウィンドウシステムを初心者にいじらせると、間違えて「現在使用しているのとは違う」アプリの Window をクリックしてアクティブにしてしまい、見ていたウィンドウが裏に回って消えたことで混乱する、ということになりやすい。


System6 では、このようなことは起こらなかった。

だってマルチタスクじゃないんだから。


これが、僕が System6 が好きな理由だ。

Mac が目指した「文房具としてのコンピューター」、初心者でも気軽に使えるものだった。




…蛇足ながら付け加えておけば、System6 はマルチタスクではなかったが、マルチジョブに「できた」。


デフォルトでは、本当にシングルタスク、シングルジョブである。

でも、Multi Finder を使うと、複数のアプリケーションを同時に起動できた。(マルチジョブ)


マルチジョブ状態でも、動作しているプログラムは1本だけ(シングルタスク)で、ユーザーがタスクを切り替えると、別のプログラムが動き始めた。


実は、CPU が非力な時代はこちらのほうが効率がよかった。



System7 以降は、OS が一定のタイミングででタスクを自動的に切り替えていく「マルチタスク」になった。

同時に、先にあげた「アクティブウィンドウ以外をクリックして混乱」という現象が起きるようになり、初心者向けではない「パソコン」になってしまった。




さて。

Jobs は、Mac を「文房具」として設計した。

オフィスのデスクに置かれた、新しい文房具。コンピューターを知らない人でも気楽に使える。


その後、Sculley によって Jobs は Apple から追放。

Sculley が Mac を「再設計」させる過程で、より普通の PC になった。


Windows は、最初から Mac を真似ていた。

…というと語弊があるか。Gates だって alto の存在は知っていた。


でも、Windows は Alto を真似したものではなく、Mac を真似したものだ。

そして、System7 と同じ失敗をしていた。


おそらく、Gates はこの失敗を理解していた。

でも、どうすればうまくできるのかはわかっていなかったように思う。




Jobs が Apple に復帰してからは、多くの人が知っているだろう。

iPhone で、GUI を「一新」した。


iPhone の GUI は、 System6 と非常によく似ている。

画面は、1つのアプリケーションが占有する。間違って別のウィンドウをアクティブにしてしまう心配は無い。



iPhone 以前、Gates は、スマートフォン向けにも Windows を提供していた。

Windows といっても、PC との互換性は無いものだが、小さな画面で、タッチパネルで操作するには…ずいぶんと使いづらいものだった。


しかし、iPhone 以降、スマートフォン向け Windows は GUI が一新され、iPhone 風になった。

そして、普通の PC 向けの Windows も、次の Windows8 で同じ GUI に統一されることになった。



つまり、ここに来てやっと、自分が「一番使いやすかった」と思っている、System6 に、時代が追いついてきたことになる。

いや、追いついてきたのではなく、ぐるっと一周回ってきたのかな。


ただ同じ地点に着たのではなく、螺旋階段のように上のステップに移っているが。

今度は、ちゃんとしたマルチタスクだ。




ところで、System6 には、デスクアクセサリ( D/A )という仕組みがあった。

シングルタスクの System6 で、「ちょっとだけ」違う仕事をさせるための、小さなプログラムのことだ。


D/A は、アプリの起動中でもいつでも呼び出せた。

標準では電卓とか、時計とか、スケジュール帳とか、メモ帳とかが用意されていたけど、サードパーティ製の高機能な D/A なんかもあった。


D/Aは、いつでも呼び出せるようにするため、特殊な形式でプログラムする必要があった。

でも、System7 になってからは、マルチタスクになったため D/A は無くなった。

同等機能のプログラムが「アプリケーション」として用意されていたので、問題は無かったけど。



今は、画面が広いので、こうした「ちょっとしたツール」は、デスクトップガジェットとして表示しっぱなし、と言うものが多い。


ガジェットも、普通のプログラムとは仕組みが違う、という点では D/A と似ている。

ガジェットは、HTML と Javascript でできている。つまり、小さな WEB ページみたいなものなのだ。


(ガジェット、という仕組みを最初に提唱したのは Mac OS X だが、その元は「OS と WEB ブラウザの融合」を図った WinXP + IE に行き着く。

 さらに、XP + IE で OS と WEB ブラウザが融合したのは、WEB ブラウザは将来 OS になる、という Netscape の野望を逆から攻めるためだ)



D/A の「いつでも動かせる」と言う仕組みは、マルチタスクと言う形に進化し、D/A は発展的に消滅した。

同じことが、今起ころうとしている。


Windows8 では、HTML + Javascript で、「普通の」アプリケーションを作ることができる。

ガジェットだけが特別な時代は終わり、発展的に消滅するのだ。



でも、これはちょっと話が違う。

「常に画面の隅にあって便利」というものが、「画面はアプリケーションが占有」というコンセプトにしたがって、1つの画面に広げられてしまうのだ。


ちょっと時間を確認するために、画面を切り替えて時計を探さなくてはならない。

ちょっと天気を確認するために、画面を切り替えて天気予報を探さなくてはならない。



すでにマイクロソフトは、ガジェットの「消滅」に向けて準備をしている。


公式に用意されていたガジェットライブラリのページはすでに閉鎖されており、再インストールなどで「今まで使っていた便利なガジェット」を失うと、もう入手することが出来ない、と言う可能性がある。


(そういう問い合わせが、Q&A ページに多数掲載されている。

 ガジェット作者のページで配布されている場合なども、人気があるがジェットほどマイクロソフトのライブラリページを紹介するリンクが多いため、公式ページが埋もれてしまって探せない、という悲劇が起きている)



さて、ガジェットは本当に「発展的に消滅」できるのだろうか?

それとも、誰かが「Windows8 で無理やりガジェット表示」するようなハックアプリを作ることになるのだろうか?




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