2013年10月08日の日記です


デジタルミレニアム著作権法成立の日  2013-10-08 10:44:01  コンピュータ 社会科見学 今日は何の日

今日はデジタルミレニアム著作権法成立の日(2000年)。


アメリカの法律だから、日本に住んでいれば直接の関係はない…?


いや、ネット上には、アメリカにサーバー・本社があるサービスが沢山あります。

これらは、アメリカの法律の影響を受けます。


また、この法律自体がもうすぐ日本にも来る…かもしれません。これについては後で書きましょう。




1990年代後半、アメリカの著作権法は世界の趨勢から見て遅れていました。

その修正が主な目的で 2000年に改正されたのですが、単なる改正にとどまらず、1990年代末に起こっていた新たな問題の解消を同時に盛り込んだのですね。


1990年代後半…そうです。インターネットのブームです。

インターネットの急速な普及により、書籍の内容や音楽、果ては「他人の WEB をコピーしただけで自分のページだと言い張る」など、多様な形の著作権侵害が起きていたのです。


コンピューターを使った新しい著作権問題(デジタル)に対応し、ミレニアム(2000年)に成立したから、デジタルミレニアム著作権法。わかりやすいです。まぁ、これは愛称なので、わかりやすくて当然なのですが。

でも、長いので以下「米著作権法」と表記します。


さて、この米著作権法で先進的だったのは


・著作権保護技術の解除を行う方法の公表も、著作権侵害とする

・著作権侵害を親告罪ではないものとする

・故意・過失がなくとも罰せられる


というような部分です。


以下、順次説明していきましょう。

なお、僕は法律の専門家ではないので、間違いがあるかもしれません。

この点はご容赦いただきたいと思いますが、指摘に関しては大歓迎です。




まず、保護技術解除について。いわゆる「リッピング」のことです。

DVD などでは、著作権保護のための暗号化が施されています。この暗号化方法自体が、技術の問題だけではなく「著作者の権利の一部」と認められ、暗号化を解除してコピーする方法を公開することは「著作権侵害」とみなされます。


ただし、公開することが侵害となるだけで、その情報を知ったものが自分の使用の範囲内でコピーを行うことまで禁じるものではありません。

というか、もしも自分の利用の範囲でのコピーも禁じるような契約があった場合、ユーザーの利益を損なう異常な契約なので、その契約自体がおかしい、という判断になるようです。


日本のHDDレコーダーなどでは、コピーワンス、コピー10などの制限がありますが、こういう制限自体がおかしい、と言う意味です。

ただし、日本の著作権法は現在穴だらけなので、著作権者の権利を守るためには日本の方式は評価できます。(詳細は後ほど)


もっとも、保護技術の解除が本当に著作権侵害なのか、アメリカでも判断の分かれるところです。

解除方法を見つけ、公表することは「言論の自由」でもあるためです。


米著作権法の成立後、DVD の暗号化解除方法を見つけた人が、裁判所で「公開の禁止」を命じられました。

しかし、4年後に「公開の禁止は言論の自由に違反するものである」として命令が撤回されています


もっとも、これは「公開の禁止」という命令が違法である、と言うだけの判断。

解除方法の公開自体は、米著作権法で禁止されたままなので、これで公開が行えるようになった、と言うわけではありません。




親告罪でないものとする、について。

著作権と言うのは、著作者が主張するものです。このように、本人が主張することで罪が成立するものを、親告罪と呼びます。

しかし、親告罪の場合、いちいち著作権者が侵害の事実を発見し、申し立てを行わない限り侵害が認められないことになります。


初期の YouTube の事例になりますが、著作権侵害のビデオが続々とアップロードされました。

主に、テレビで放映された内容を録画し、「面白かったから」他人にも見せようとするものでした。


YouTube では、当初は著作権者からの申し立てに応じて削除を行っていました。これは「親告」によるものです。

(YouTube の設立自体は米著作権法の成立以降です。それでも親告で対応していたのは、単にシステムが未整備だったため)


この後、YouTube ではシステムを整え、放映された内容などと同じ内容のビデオを自動的に検出し、公開を停止するようになりました。

この措置は「親告罪ではない」ために行えるものです。著作権者でなくとも、侵害を見つけた場合は措置を取って良いのです。


ただし、これが例えば日本で適用された場合「コミケは存続できない」という主張があります。

これはその通りでしょう。今は親告罪なので、漫画家さんが訴えないだけです。


訴えない理由は2種類あり、ひとつはいちいち訴えるのは面倒くさいからで、もう一つはコミケのような場所を認めているためです。

認めるというのは、つまりは最終的な利益となる、ということ。


自分の作品のファンが楽しんでいるのだから、その活動が広まれば自分の作品の人気にもつながる、と言う「狭い利益」の部分と、コミケは文化の裾野なので、その中から新たに業界を支える人材が出てくる、という「広い利益」の両面があるでしょう。

ちなみに、アメリカにだって同人活動(fun make)は存在します。

ただし、fun make の多くは、日本と違って「小説」である、という点は大きいです。


絵柄は明らかに著作物で、類似の絵柄で違う話を作るのは2次著作物としての侵害、となります。

しかし、小説は文字で構成されます。文字は著作物ではありませんし、登場人物の名前や舞台設定も著作物ではありません。


コミケは著作権侵害の集団になってしまいますが、fun make は著作権を何も侵害していないのです。

ただし、ゲームの fun make などは微妙。絵柄などを「真似する」どころか、そのまま使うことも多いですから。




最後、故意・過失がなくても罰せられる。


これ「違法とは知りませんでした」という言い逃れは効かないよ、と明記しています。

でも、普通の法律は、悪意の有無にかかわらず「行為」に対して「罪」が発生します。もともと明確なものを、なぜ明記しているのか、というところを読み解かねばなりません。


インターネット時代の著作権侵害は、インターネットプロバイダの怠慢によって被害が拡大します。

誰かが WEB サーバーに著作権侵害コンテンツを置いた時、このコンテンツを消去できるのは、アップロードした人か、サーバーを持っているプロバイダのみです。


アップロードした人は、最初からこれが違法であることを知っている可能性が高いです。

その場合、プロバイダとの契約も偽名を使い、足が付かないようにアップロードを行っているでしょう。

本人に「消して」と言おうにも、連絡すらつかない可能性が高いです。


この時、プロバイダに連絡を取って消してもらうことになります。

ここでプロバイダが面倒くさがって消さなければ、被害ははるかに増大してしまうわけですが…


事実として、米著作権法改正前は、そういう事例が多かったのです。

ここで、「言い逃れは効かない」と明記することで、サーバーを使って著作権侵害物を配布している「プロバイダ」も、罪に問えることにしたのです。


もちろん、プロバイダにとってはリスクが高まります。そこで、米著作権法では、同時に次のような規定を作っています。


・著作権が侵害された、と連絡を受けたプロバイダは、速やかに該当コンテンツを削除しなくてはならない。

・この際、コンテンツが本当に著作権侵害であるかどうかの調査は不要。

・コンテンツの保有者(アップロード者)に対する確認もいらない。


削除する際は、復活できるようにしておいて、保有者に警告を行う必要があります。

この警告により保有者は申し立てを行えます。申し立ての結果、侵害物でないと認められれば、コンテンツは復活されます。


プロバイダは、とにかく機械的な削除作業のみを行う義務があるのです。

もしもこの義務を怠った場合は、著作権侵害物を配布したという罪に問われることになります。




非常に論理的に構成されていて、ネット時代に即した著作権法です。

ネット時代は、アメリカだけで著作物を保護しようとしても無理があるため、アメリカはこれと同様の規定を作ってほしい、と各国に呼びかけています。実際、導入に向けて動いている国も多いようです。



日本では、2001年に3番目の規定に近い「プロバイダ責任制限法」を作っています。

ただ、これは米著作権法とは無関係で、日本で研究して作られたものです。


こちらではコンテンツ保有者の権利を重視していて、プロバイダが削除を行うには、一定の面倒な手続きが必要となります。

ただ、この手続きさえ行っていれば、保有者のコンテンツを勝手に削除した、として保有者から訴えを起こされることはありません。(プロバイダ責任制限=プロバイダは、責任を問われることはない、と言う意味)


日本では親告罪のままなので、著作権者がプロバイダに対して申し立てを行う必要があります。

また、著作権者側にも面倒な手続きがあり、いきなりプロバイダに申し立てはできませんし、プロバイダに無視されても、プロバイダをすぐに罪に問うことはできません。


著作権侵害裁判を起こせば罪に問えますが、日本では著作権侵害の裁判を起こすには、侵害された側に対してかなり不利なのです。




ところで、僕の WEB ページの内容を丸コピーされたことがあります。

少なくとも2度は僕自身が気づきました。もっとあるかもしれないけど、それは知らない。


1つは、ブログページの主に苦情を言ったら削除されました。

侵害になる、と言う意識がなかったようで、それはそれで問題ですが対応が速かったのでよしとします。


もう1つは、苦情を出してもまったく反応がありません。

このように、直接交渉ができなかった場合に限り、「プロバイダ責任制限法」が使えますので、ブログの運営会社に連絡しました。

しかし、こちらも反応がありません。大会社の提供するブログシステムなのですが、「プロバイダ責任制限法」を無視する意向のようです。


この場合、僕が取りうる手段は裁判に訴えることです。

しかし、訴状を作るには、侵害によって実際に生じた損害金額を、根拠に基づいて推定する必要があります。


僕の場合趣味でやっているだけで、「コピーされるのはむかつく」以上の損害はないので、訴えを起こすことはできません。

日本では、著作権は侵害する側に有利なのです。


…これはもう4年も前の話でしたが、最近になって google に申請すれば google 八分にできる、と知りました。

google はアメリカの会社なので、米著作権法の規定に従い、申請を受ければ削除を行う必要があるのです。


#google はWEB サーバーのサービスを行っているわけではないが、検索結果から表示を消すことで、ネット上からも「事実上抹殺」できるようにしてくれているのでした。


この手続きは非常に簡単で、google も速やかに対応してくれました。

…まぁ、侵害物が無くなるわけではないのですけど、多くの人が目にしなくなるのならそれでいいでしょう。




ところで、アメリカの著作権には「フェアユース規定」と言うものがあります。

これはかなり重要な概念で、著作権の侵害になる事例でも、それが世の中的に正しいことであると思われる場合は罪にならない、と言うものです。


米著作権法は、規定だけをみるとかなり厳しそうに見えますが、フェアユース規定があるためにバランスが取られています。


日本では「個人の使用の範囲で」コピーを取ることを認めた条項がありますが、これはアメリカではフェアユースの一種と考えられています。


では、学校の体育祭で応援の看板を作った際に、人気キャラの絵を描いたとしましょう。

日本では、これは「個人の使用の範囲」を超えているため、著作権侵害です。

著作権者が訴えなければ罪にはなりませんが、侵害しているのは事実です。


アメリカでは、この程度は「フェアユース」の範囲です。小さなコミュニティで楽しむために、ちょっと絵を描いた。

この程度は社会的に正しいことなので許容されるのです。


先に fun make のゲームの例を挙げましたが、これも仲間内で楽しむ程度ならフェアユースです。

コミケみたいな場所で小規模に売ったとしても、まだ小さなコミュニティの範囲ですからフェアユースでしょう。


でも、人気が出たからネット上でダウンロード販売を始めたら著作権侵害になります。

どこからどこまでがフェアユースかは、裁判所が個別に判断することになります。アメリカでは裁判は陪審員性なので、「世の中的に正しい」かどうかが、一般人の感覚で決定されることになります。


日本では「親告罪」であることによって、「作者が見てなければOK」な著作権侵害が多いです。

侵害はしていて、訴えられるかどうかだけの、チキンゲームになっているのです。


しかし、アメリカでは「フェアユース規定」によって、著作権侵害ではない範囲をかなり広げています。

余程悪いことを考えない限り「フェアユース」なので、そもそも侵害がありません。


逆に言えば、この規定があるからこそ「親告罪ではない」としても大丈夫なのです。

日本でそんなことやったら、侵害だらけで大変なことになります。


#先に書いた HDDレコーダーの例も、日本では「10回」などの明確な規定で制限しなくてはならないが、アメリカではフェアユースかどうか、が重要になるので制限は不要になる。

 ただし、コピーしまくって配布、などしていると、誰かが著作権違反であると密告するかもしれない。

 アメリカでは親告罪ではないので、回数の制限はないが周囲の目によって監視されているのだ。




さて、最初に書きましたが、日本でも同様の著作権法が作られる可能性があります。

TPP (環太平洋戦略的経済連携協定) のためには、参加国がある程度法的な手続きをすり合わせる必要があるためです。


漫画家の赤松健氏が、かなり以前から問題提起していて、コミケ文化を守るための同人マークなどを提唱しています。


僕自身プログラマーで、ある意味「著作物を売って生活している」のですが、現状の日本の著作権法は穴だらけだと感じています。

でも、米著作権法を形だけ真似したら、今度は別の問題が起こる。フェアユース規定から真似できればいいけど、これは法律の問題ではなくて一般市民の生活態度から変えなくてはならない。

(フェアユース、っていうのはそういうことなのです)


なかなか悩ましい問題だとは思います。



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