2017年07月13日の日記です


ルビク・エルネーの誕生日(1944)  2017-07-13 16:22:37  その他

今日は、ルビク・エルネー(Rubik Ernő)の誕生日(1944)


ハンガリー語の名前よりも、英語表記の「エルノー・ルービック」のほうがわかりやすいかもしれません。

ルービック・キューブの発明者です。


彼は、彫刻家で建築家。

立体造形の専門家、と言ったほうが良いでしょうか。


大学で、立体造形の面白さを学生に伝えるべく教鞭をとっていました。


1974年、彼は、部品が固定されているわけではなく自由に可動し、しかし全体としての構造は決して壊れない、という不思議な造形を作り出します。

全体としては立方体で、1つの面が縦横3つに分かれた9分割になっています。


彼はこれを「マジックキューブ」と名付け、学生に披露します。

多くの学生が、この不思議な造形に深い関心を示しました。



そこで彼は、この構造の特許を取り、プラスチックで大量生産できる形状に改良して、大量生産を試みます。




ところで、当時のハンガリーは共産主義の国です。


共産主義では、すべての経済は国によって統制されます。

どこの工場で、何をどれだけ生産するか、それをどれだけの価格で売り出すか、などは国が決めます。


ルービックは、国の計画にはない「新しいおもちゃ」を製造しようとしたわけで、なかなか協力してくれる工場は見つかりませんでした。



ただ、共産主義と言っても国ごとに体制はまちまちで、ハンガリーは比較的「管理の緩い」国でした。

全ての生産活動が国有なわけではなく、わずかとはいえ民間企業もありました。


ルービックも、最終的には製造工場を見つけ、1977年に「マジックキューブ」を発売しています。



以前書きましたが、共産主義国のソ連で生まれた「テトリス」が最初に市販されたのも、ハンガリーでした。

共産主義国でありながらソ連からの圧力に反発し、最終的にベルリンの壁の撤去や、ソ連崩壊を招いたのも、ハンガリーです。




1979年、マジックキューブが、ドイツのニュルンベルグで行われた、玩具展示会に出品されます。

ここでの展示は好評で、続けてロンドン・パリ・ニューヨークの展示会にも出品されます。


ここで、アメリカのおもちゃ会社が販売ライセンスを得ます。

この際に、「マジックキューブ」という凡庸な名前を変更しようと考えました。


複雑すぎて誰も解けない、という「ゴルディアスの結び目」や、貴重で高価な細工物を意味する「インカの黄金」など、いくつかの名称案があったと言います。

しかし、最終的には発明者の名前を冠した「ルービック・キューブ」となりました。


アメリカでの発売は 1980年5月。

日本でも7月には発売され、入手できないほどの大ブームを起こします。




日本発売以降は、知っている人が多いと思うので説明するまでもないでしょう。

以下は個人的な思い出。



入手困難なほど売れたので、偽物が出回りました。うちにあったのも偽物。


Wikipedia によれば「2月には海賊版が出回る」となっているのですが、購入したのは1月です。

祖父の急死で母の実家に行き、1月だったので集まった親戚からずいぶんお年玉をもらいました。

その帰りに駅ビルのおもちゃ屋で兄が見つけて購入したので、1月で間違いありません


その時点では、「偽物が出回っている」なんて知りませんでした。本物のつもりで買ったのです。


しばらく後に、20円のガチャガチャで、「6面完成法」を書いた小さな紙を売っていました。

あたりだと、20円ガチャのカプセルに入るサイズに小さく作った偽物のルービックキューブが入っているのだけど、この「完成法」も十分なあたりだった。

だって、家に誰も完成できないキューブ(偽物)が転がっているんだから。


#この紙、ある程度後期のルービックキューブ(公式)に付属していたものを、丸パクリして小さく印刷しただけのものだったらしい。

 著作権も何もあったもんじゃない、1980年代の話。



ルービックキューブに刺激され、立体パズルゲームが起きました。

うちの家族が面白がって買ってきたので、今でもいろいろ残っています。


3×3ではなく、2×2の構造のものを見つけ購入しました。

…が、これ、「真ん中の列がない」と考えると、ルービックキューブと同じアルゴリズムで解けてしまう。


4×4も、5×5もでました。

でも、これらもちょっと工夫すると、通常のルービックキューブと同じ状況に落とし込めるのですね。


結局、3×3は、シンプルでありながら十分複雑な構造を作っていたと判ります。




同じルービックさんの作品としては、ルービックスネークというのもありました。

正方形を分割した三角柱を回転する関節で繋いだ構造で、正解のある「パズル」ではなく、自由な形状を作って遊びます。


ルービックさんの意図としては、キューブも「いじっているだけで面白い構造」だったのですが、すでに完成させるパズルとしてヒットしています。

それに対し、スネークは正解がなかったため、あまり売れなかったように思います。


あと、ルービックマジック。

板が自由にパタパタと動くパズルなのだけど、発売されたころにはパズルブームも去っていたし、構造的にも子供が紙で作る工作に似ていた。

(子供の紙工作よりも自由度がずっと高いのだけど)


なので、これは僕は遊んでません。




現在は、6面完成にかかった時間を競う「スピードキューブ」という公式競技があります。

昔から速度競技はあったのだけど、今は電子的に時間を計測するので、1/1000 秒レベルで競われます。


…この計測機器、カップスタッキング用に開発された奴だよね、って以前から思ってました。

日本ではカップスタッキングがマイナーなので、すっかりスピードキューブ用の機器だと思われている気がする。


…いや、スピードキューブもマイナーか。

単に工夫したタイマーなので、真似したというより「使えるものだから使った」だけだと思うけど。




同時期に流行した他社製品。


「立体パズルが流行」ということで、工夫を凝らしたものがいろいろ発売されました。


結構類似アイディア多数だったのが、円筒形の上にスライドパズル(いわゆる15パズル)を作ったもの。

ピースは自由には動かず、円筒の長辺方向に動きます。

そして、分割された円筒を回転させることで、周方向にも動かせます。


…やってみるとわかるけど、結局スライドパズルです。

スライドパズルはもともと好きなので、見た目が変わっただけであまり面白いとは思わなかった。


立体でパズルなんだから、と、単に知恵の輪のリバイバルもあったように思います。

今でも売っている「キャストパズル」とか、いったんはこの頃に出てきたのではなかったかな。

(後に再ブームを起こしますが)



任天堂の「テンビリオン」。

これは、ヒットしました。ポストルービックキューブとしては本命だったのではないかと思います。

うちにもなぜか2個ありました。兄弟が多いので、「おもしろそう」で買ってきたのが重複したらしい。



これも、上に書いたような「円筒形スライドパズル」なのですが、一ひねりしています。

なので、あまりスライドパズルという感じはありません。


難易度は「スライドパズルだ」と気づけば難しくありませんが、ひねってあるので気付くまでは難しいです。

この絶妙の難易度が受けて、特にドイツで大ヒットだったそうです。




話はどんどん逸れますよ。

以下はルービックさんの話ではなく、ほとんど雑談。



ルービック・キューブの特許取得は 1975年。

でも、発売は 1977年だし、日本で知られるようになったのは 1980年。


これに対して、日本でも 1976年に同様のおもちゃを考案し、特許を出願している人がいます。

『サイコロ型回転式組合せ玩具』


上のリンクを見ると、出願が昭和 51年 = 1976年 とわかります。

公開番号、広告番号のリンクで、特許の概要もわかります。



今では、特許は「公知になっていない技術」にしか与えられません。

しかし、1976年当時では、外国の特許がある(つまり、技術が公知になっている)としても、十分に調査する技術もなく、また法律もそこまで求めていなかったため、特許が成立してしまうのです。


でも、公文書だからこそ、ルービック・キューブのほうが申請が速いとわかります。



そんなわけで、「大ヒットおもちゃを考案していたけど、わずかな時間差で泣いた人」として、この人がテレビ番組に出ていました。

たしか、「小川宏のなんでもカンでも!」という番組だったと思う。


そこで作成した実物も持ってきていたのですが…

発想としては同じなのですが、少し大きくて扱いづらそうなのと、6面に絵を貼っていて「絵合わせパズル」にしてしまっているのですね。



ルービックキューブの各面が「色」だけになっているのには意味があって、絵にすると理不尽な難易度になってしまうのです。

ピースの位置が正しかったとしても、中央のピースが「回転」してしまい、この制御がややこしいのですね。


#ルービックキューブの中央ピースに自分で印をつけて、その回転方向も正確に合わせる…という、あえて難易度を上げた遊びもあるそうです。



なので、ゲームとしてのルービック・キューブは本当によくできていたと思うのです。




ところで、ハンガリーの特許が先に成立していたとしても、国内は国内で特許が成立しています。

そして、特許は国ごとの決まりですから、成立した以上、この特許は有効です。


番組的には「わずかな時間差で泣いた」ことになっていたのですが、今の知識で考えると、それだけではなさそうです。



特許というのは、「見た目」ではなく「技術」に与えられるものです。


#見た目であれば意匠登録とかしないといけない


そして、この特許をよく読むと「球にビスで留める」という構造(技術)を、特許要件にしているのです。


ルービック・キューブを分解してみたことがある人ならわかりますが、中に球なんて入っていません。

なので、ルービック・キューブは、そもそもこの特許に抵触していません。



…書きすぎ特許ですね。

発明者が直接特許を書くと、構造を説明しようとして詳細に書きすぎてしまうことがあります。


その場合、構造を少し変えてやると、特許に抵触しなくなるのです。


#曲がるストローの話とか有名。

 蛇腹部分を「六角形に作る」と書いてしまったが、これは使いやすくするために、繊細な加工を工夫した部分だった。

 後から出てきた類似商品はそうした繊細加工が無く、みんな丸だったので使いにくいが、特許に抵触しなかった。






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