Nintendo Switch に「テトリス99」というゲームがある。
現在のテトリスはルールが統一されているのだが、最初の流行の時は、統一されていなかった。
日本では、パソコン版を作った BPS のテトリスと、ゲームセンター版を作った SEGA のテトリスと、ゲームボーイ版を作った任天堂のテトリスがあり、それぞれ「目指しているものが違った」。
ルールどころか、ゲームの目指すゴールが違うのだ。
BPS テトリスはパズル、SEGA テトリスは激しいアクションゲーム、任天堂テトリスは対戦ゲームだった。
それぞれのゲームの目的に合わせ、細かなルールは全然違うものになっている。
ここら辺の話、過去に詳細を書いている。
テトリスは単純なゲームの上、当初は誰が作ったのかもわからず、世界中で「正しいライセンスを取得せずに作成」する事例が相次いだのだ。
それぞれの会社は、勝手にゲームを作成したために、ルールなども統一されていない。
BPS、セガ、任天堂のテトリスでは、一番後発の任天堂だけが、正式なライセンスを取得してから作成している。
2000年ごろに権利が整理されて、今ではどこの会社でもテトリスを作ることができる。
しかし、アリカという会社の作っているテトリスが「現代的なテトリス」の代表かと思う。
系統としては、激しいアクションである SEGA テトリスの系統と考えてよい。
そして、テトリス 99 は、任天堂がアリカに依頼して作成したテトリス。対戦になっている。
しかも、ゲームボーイのような1対1ではなく、99人同時対戦のバトルロイヤル。
テトリス 99 を紹介したいのではない。もうずいぶん前のゲームだから、今更紹介する必要もないし。
長女がこれを結構好きで、我が家の中では一番うまい。
テトリス99 では時々イベントをやるのだが、この度「テトリス 40周年」イベントが行われ、スキン(画面上の見た目)が、NES 版テトリスになった。
NES (ニンテンドー・エンターテインメント・システム。ファミコンの海外版)のテトリスは、テトリスの複雑な権利関係が整理された後で、権利を取得した任天堂が作成したもの。
ゲームボーイ版の後に作成されたが、対戦モードは存在しない。その意味では、余り特徴のない、よく言えばオーソドックスなテトリスだ。
ただ、テトリスは7種類のブロックがあり、通常は色で判別できるのだが、NES 版は「違う形のブロックでも同じ色が使われている」。
長女にとっては、これが非常に遊びづらかったらしい。
テトリスなのにブロックが色で判別付かないとは、どうなっているのだ! と愚痴を言いながらプレイしていた。
いや、ファミコン(NES と性能は同じ)だと画面上に色が3色しか出せなくて、ブロックの色も3種類だけで描いているんだよ…
と説明するもわかってもらえない。
だって、ファミコンのゲームって3色どころじゃない。古いゲーム機とはいっても、もっとカラフルじゃん、という今の子の主張。
いやぁ、ファミコン時代の現役の子だって、3色しか使わないテトリスの画面見たら色が寂しいと思うよね。
僕は過去の記事で、ファミコンは最大25色出せると書いている。
しかし、ここでは3色しか出せないと言っているのだ。
最大25色、というのが難しい条件で、理論上の最大値だ。
実際にはその半分も出せない。そして、最悪の条件では、テトリスのように3色しか出せない。
それがファミコンの性能限界なのだ。
「ファミコン」らしい画面を持つゲームとしては、ドラクエが筆頭かと思う。
ドラクエは、ファミコンの性能の限界をよく理解して設計されている。
背景キャラクターはすべて 16x16 で描かれ、その上にスプライトで滑らかに動くキャラクターがいる。
ファミコンの背景は、8x8 ドットのキャラクターを並べて作るが、色を設定するときは 16x16 ドットを単位とするのだ。
だから、最初からこのサイズで絵を考えていると、一番性能を引き出せる。
ところが、テトリスはパソコン発祥のゲームで、ブロックは 8x8 ドットで描く必要があった。
色は 16x16 単位でしか設定できないのに、ブロックは 8x8 なのだ。しかも自由に動かせる。
この場合、16x16 単位で設定できる「色」というのは、事実上使えないのといっしょだ。
全部を同じ色で描くしかない。
ファミコンでは 8x8 ドットの絵に3色を使えるので、背景全体を3色で描く、ということになってしまう。
元の NES 版でスプライトを使っていたかどうかは、ちゃんと確認してないのでわからない。
まぁ、操作中のブロックには使っていたんじゃないかな。その方が簡単に作れるし、8x8 のチップを横に 8枚まで並べられる、というファミコンの性能上、特に問題もない。
しかし、操作中ブロックに積みあがったブロックと違う色を使ったら、接地した瞬間に色が変わって不自然だろう。
だから、スプライトは背景と違う色を使える、という機能があっても、ここでは同じ色を選択することになる。
結果として、ブロックの色は3色しか使えない、という状況は変わらないのだ。
説明したら子供は納得はしたが、ファミコンというハードの、予想以上の制約の多さに驚いていた。
当時、各社のゲーム機の中で勝ち残り、大ヒットしたゲーム機だから、もっと性能が高いと思っていたようなのだ。
以前も書いたが、ファミコンのライバルの SG-1000 とか、MSX は、同じ VDP を使っている。
よく考えられた汎用品で、派手な機能はないが使い勝手は決して悪くない。
ファミコンの方がカラフル…つまりは「派手」に見えるのだが、当時の技術なので、どこかを豪華にすると別の部分に制約が出るのだ。ファミコンの場合、うまく使えば多くの色が出るが、条件が合わないと、上記のように3色しか使えない、なんてことになる。
余談だけど、落ちものパズルブームの時に任天堂がファミコンで作った「Dr.Mario」は、3色の「細菌」を、3色のお薬を使って消していくゲームになっている。
「3色」という、ファミコンの限界を考慮したゲームデザインだ。
また、「ワリオの森」では、落ちものパズルだけど、あえてブロックを大きめに設定し、16x16 ドットにしている。
これまた、ファミコンの限界を考慮したゲームデザインだ。
ファミコンで作られた名作というのは、「ファミコンの限界」を考慮してルールなどが設定されているものが多い。
テトリスは、大ヒットしたからファミコンにも移植された、という流れであり、残念ながらファミコン向けのゲームデザインにはなっていなかった。
画面の色が寂しい、というのは、そうした残念な結果によるものなのだ。
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