1週間ほど前に、「ゲーム保存協会」という団体のサポーターになった。
年会費三千円でサポーター登録できる…となっているのだけど、これは法的な都合上の言い回しで、ようは寄付したんだな。
この寄付について、思うところを書こうと思って、毎日あーでもない、こーでもないと文章を書いては破棄していたのだけど、思っていることをうまく書けないまま1週間が過ぎてしまった。
もう、面倒くさいから細かな説明は全部すっ飛ばして、自分のために事実だけを記録しておくことにする。
ゲーム保存協会は、怪しい団体だ。
設立者が、昔の日本のテレビゲーム好きのフランス人。
特に「夢幻戦士ヴァリス」が好きだというのだから、怪しい以外の何物でもない(笑)
団体名で検索すると、他にも怪しげな噂話がいっぱい見つかる。
ただし、その噂の裏は取れていない。信じるかどうかはご自由に。
僕のツイッタータイムラインでは、彼らの活動内容に強い疑問を持っている人もいた。
僕が「サポーター登録しようかな」と書いていたら、エアリプで反対意見を表明してくれて、それはそれで一理ある内容だった。
僕自身は、この団体は3年くらい前に知った。今は設立5年目だそうだから、まぁ早いうちに知ったほうか。
サポーター登録制度があるのも知っていたが、興味がないので無視していた。
そう、僕はゲーム保存に興味はない。
だから、「ゲーム保存協会」にも興味はない。
僕のページを読んでいる人ならわかるだろうけど、僕は昔業務用ゲームを作っていた。
今と違って、古いゲームを中心に置いてあるようなゲームセンターはない。
だから、ゲームセンターから消えたゲームは「2度と会えない」のが普通だった。
そういうゲームばかり作っていたから、ゲームはいつか消えてなくなるもの、という感覚が身についている。
家庭用ゲームで、自分が好きだったものとかは手元に置いてあるよ。
でも、自分が作ったゲームで手元に残っているのは、ST-V で作ってサターンにそのまま移植された 1本だけ。
11月の下旬に、NHK world という海外向けの放送で、ゲーム保存協会を取り上げていた。
その放送は、国内でも WEB 配信されて、2週間みることができた。
これを見たら、ゲーム保存協会の活動内容は、思ったものとはちょっと違っていた。
彼らの WEB ページで詳細を調べたら、その違いがはっきり分かった。
ゲームの保存している団体は他にもあるのだけど、そうした団体は「懐かしいゲームを遊べるようにする」ことが趣旨なのね。
それに対し、ゲーム保存協会は、アーカイブを構築することが趣旨だった。
…と、ここでアーカイブとは何かを説明しないといけないところだけど、それを書いていたのが1週間かかってもまとまらなかった原因なので、書かない。
最近は日本でも「アーカイブ」という言葉を時々聞くけど、適切に日本語に訳せないから英語をそのまま使っているんだ。
適切に訳せないというのは、日本文化にはアーカイブという概念がないから。
実は、社会問題となっていることのいくつかは、アーカイブ文化がないことで引き起こされている。
西洋文化は、文化を支える根底に「アーカイブ」の思想があるんだ。
ところが、現代の日本は西洋文化の表層を真似しつつ、それを支える根底部分がない。当然問題も出るだろう。
それに対し、ゲーム保存協会は本物のアーカイブを作っている。
ここで、設立者が怪しいフランス人であることが意味を持ってくる。
西欧では、アーカイブは重要な文化だ。紀元前からアーカイブを構築しようと繰り返してきた歴史がある。
日本語の「保存」はアーカイブではないが、彼にとっての「保存」はアーカイブなのだろう。
以前から団体は知っていたが、僕はここのところを誤解していた。
たぶん僕以外にも多くの人が誤解している。
というか、保存とアーカイブの違いはどこにあるのかわからない人もいるだろう。
調べてみてくれ。とても重要な概念だから。
僕の職業は一介のプログラマーに過ぎないが、趣味としては、いろんなことを研究するのが好きだ。
そして、それらの研究の際に、各種アーカイブには非常にお世話になっている。
アーカイブの重要性と、国内のアーカイブの弱さは痛いほどよくわかる。
先に書いた通り、僕はゲームはやがて消えゆくものだと思っている。
もちろん保存活動への情熱なんてない。
ただ、消えて行くのが寂しい、という気持ちは、多少ある。
だから、思い出話くらい残しておこうと思って、開発時代の話を少しづつ書いていたりする。
結局、ゲームの「何か」を残そうとしていることは変わらないわけだ。
じゃぁ、アーカイブを作ろうとしている彼らに支援くらいしたっていいだろう。
支援と言っても、僕はゲーム保存の情熱も技術もないから、実作業を手伝ったりはしない。
ただ三千円を渡すだけだ。子供の駄賃にもならない金額。
これで「誰も手を付けようとしない難しい課題に挑め」って言っているのだから、とんでもなく無責任。
でも、支援するときって、そういう無責任さが大事だと思っている。
無責任と知っているから、口は出さない。失敗してもかまわない。
思うようにやってくれればいい。まぁ、無責任なりに応援はしているよ。
支援するって、そういうものだ。
話は以上。
以下は余談の、1週間悩み続けた理由。
冒頭に書いた「エアリプをくれた人」に、なぜ僕が支援を決めたのか説明したいと思って丁寧に書いていたら、話が発散しすぎてまとまらなかった。
また、送金の際のメモ欄に「趣旨に賛成ではないが支援する」と書いたら、ゲーム保存協会の設立者から返信があり、賛成ではないのに支援することに興味を持ってくれた。
その十分な返事になる内容を書こうともしていたのだけど、これも発散しすぎてまとまらない。
もひとつついでに、保存協会の人は宣伝下手だと思う。
僕も活動趣旨を勘違いしていて、NHK を見てやっと理解した。
というか、NHK 見ても「ゲーム好きのおっさんが昔を懐かしんでいる」ようにしか見えない。
アーカイブ構築、という、日本人にはわかりにくい内容なので、伝わらないのだ。
ここの趣旨を、僕なりに説明してやろうと思って、その部分で一番消耗した。
全く存在も知らなかったもの、を理解させるのは、実はそれほど難しくない。
でも、似ているけど根本的に違うものだけを知っている人は、考え方が違うものに引きずられてしまい、一番理解するのが難しい。
さらに言えば、設立者の彼も、日本人がアーカイブを理解していないことを理解していない気がする。
重要な部分で文化摩擦が起こっている気がするのだ。
ここがもどかしくて、何とかしたいと文章をこねくり回していた。
ついにあきらめたわけだけど(笑)、読んでくれた人がアーカイブとは何かを調べ、彼らの趣旨を理解し、僕と同じように無責任に支援してくれれば、と思っている。
2016.12.18 追記
長すぎるから書かない、としていたアーカイブについての説明、書きました。
やっぱり長いけど。
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