2015年04月21日の日記です


NCSA Mosaic 発表日(1993)  2015-04-21 11:36:32  コンピュータ 今日は何の日

今日は NCSA Mosaic の発表日(1993)。


以前に、ティム・バーナーズ・リーの誕生日で WEB の生まれたいきさつを書き、FireFox の初公開日に少し NCSA Mosaic の歴史も触れています。




ところで、発表日は諸説あります。公式には今日ではない、とも書いておきます。


NCSA Mosaic が作られたのは、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(The University of Illinois at Urbana–Champaign : 略称 UIUC)にある、米国立スーパーコンピューター研究所(National Center for Supercomputing Applications : 略称 NCSA)です。


この、UIUC の NCSA に、Mosaic の歴史が書かれたページがあります。


これだと、0.1a が 1993 年6月に作られたことになっている。

0.5a が 9月16日で、0.6b が最初に公開されたベータ版。9月28日です。

最初の公式版であるバージョン1は、11月11日となっています。


この公式情報、NCSA の初期開発者であったマーク・アンドリーセンがいなくなってからずっと後にまとめられたものです。

だから、記述の信憑性が非常に低い。


でも、公式情報です。英語の Wikipedia などは、これに従っている。



ところで、Mosaic が登場する以前は、WEB なんて当然普及していません。

その頃は、情報を共有したければ NetNews を使いました。


NetNews は、分散管理されるネットワーク。

だから、そのメッセージは多数のサーバに残っている可能性があります。

偽造しにくい、という意味でもあり、こちらの方が信憑性は高い。



NetNews に、WEB 開発者であるティム・バーナーズ・リーが投稿したメッセージが残っています。


1993年の1月29日に投稿されたものですが、マーク・アンドリーセンが 1月23日に送信した「Mosaic公開」のメッセージを再送したものになっています。

ティムは「エキサイティングな新しいブラウザが現れた」と書いているので、これが初めての公開だったのでしょう。


マークも、0.5としたこのバージョンを「アルファ/ベータ版」としています。

アルファかベータかも決めかねる状態ですから、最初のリリースなのでしょう。

もちろん、正式公開ではありません。


その後、4月21日に、バージョン1の公開メッセージを送っています。これが正式公開です。


これらのメッセージは証拠性として十分だと思います。

そのため、公式には11月が正式公開ということですが、僕としては4月21日、と考えます。



ただ、WIRED で4月22日公開とした記事が公開されており、こちらの説も広まっているようです。

WIRED では情報ソースにリンクされていますが、こちらは個人の書いた記事。そして、根拠は示されていません。


日本の Wikipedia では、 4月22日が Mosaic バージョン1の公開日とされています。




ここから話は変わります。

Mosaic の「負の遺産」について。


#当初は、こちらの話が中心の予定だった。

 日本語 Wikipedia を信じて 4月22日に原稿を用意していたら、本当の公開日が怪しいとわかって、上に追記した調査を行ったため。



私見に過ぎませんが、マーク・アンドリーセンは NeXT 用のブラウザを Mosaic に改造した際に、HTML の「理念」を理解していなかったのではないかな、と思っています。


HTML は、どんな環境でも読めるし、後のバージョンアップなどで知らないタグがあっても問題なく処理できる、ということを理念に設計されています。


でも、アンドリーセンが付け加えた IMG タグは、実装方法が良くないのね。

今でも HTML を扱ううえで面倒なことになっている。



たとえば、IMG タグでは、タグの中に「画像が表示できなかった時の代替テキスト」を書きます。


<img src="~" alt="代替テキスト">


という書き方。

これ、IMG タグが「理解できない」ブラウザでは、画像も出ないし代替テキストも出ない。


本当は、次のようにすれば良かった。


<img src="~">代替テキスト</img>


IMG タグが理解できないなら、IMG タグは無視されます。つまり画像は表示されません。

でも、テキストが表示されます。


IMG タグが理解できるなら、もちろん画像が表示されます。

この時「IMG で囲まれたテキストは無視されます」というルールにしておけばよい。


IMG タグは理解できるけど、画像が理解できずに表示できない、という時は、やっぱり代替テキスト表示で。




マーク・アンドリーセンは、とにかく「あったほうが便利」と思われる機能を、どんどん追加しました。

これは悪いことではありません。実際、それまでの WEB は今から見るとあまりも単純で、ただのテキストファイルと大してかわりません。


マークが魅力的な機能をたくさん追加したから、WEB はブームとなって現在があるのです。

でも、その機能追加が、将来のことなんてあまりにも考えていない、場当たり的なものでした。



Netscape として作りはじめてからは、多少は HTML を真剣に考え、「知らないタグは読み飛ばす」ルールが使われるようになっています。


たとえば、NOSCRIPT タグは、SCRIPT タグと対になるものです。


SCRIPT タグは、Javascript などを HTML 内に書くためのものね。

万が一 SCRIPT を知らないブラウザでも変な表示にならないように、HTML のコメントの形式で内部にプログラムを書く。


一方、NOSCRIPT タグは、正しく理解するブラウザは、その内部に書かれたものを全て無視します。

つまり、Javascript などを実行できない環境でのみ、内部が解釈されるようになります。


SCRIPT と NOSCRIPT が対になっていることで、Javascript 対応ブラウザでも非対応ブラウザでも問題なく表示が行えるのです。



同じように、FRAMESET に対して NOFRAMES タグがあるなど、Netscape が拡張したタグの多くは、HTML の理念に従っています。



ただ、NCSA Mosaic として拡張された IMG と、Netscape の初期に実装された TABLE や UL/OL などは、今でもその奇妙な仕様から、CSS での「特別扱い」を余儀なくされています。


多分、これは未来永劫変わることが無いでしょう。

これらのタグは非常に良く使われていて、仕様変更は大きな混乱を伴います。


しかし、非常に良く使われるからこそ、それらが「特別扱い」で、他のタグと同じように扱えないことが、HTML/CSS を書く者にとって非常に大きな枷となっているように思います。


これらは、Mosaic の負の遺産だと思います。




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