2015年06月12日の日記です


生卵と生豚と  2015-06-12 12:16:10  料理

当ページの黎明期(?)に掲載したミルクセーキのレシピは、いまでもそこそこ人気。

先日のツイッターでこのページをツイートしてくれている人を発見した。


#時々エゴサーチしてますよ。


何の話してたんだろうなー、と見に行くと、もちろんミルクセーキ飲みたくなったという話から始まっているのだけど、その後の疑問が素晴らしかった。


レシピページには、アメリカ式とフランス式のミルクセーキの違いも跡から追記されているのだけど、日本で一般に知られているのはフランス式。生卵を使う。


で、ここに疑問。

「生卵は日本人くらいしか食べないというけど、フランス人はミルクセーキは飲むのか」


これにハッとした。

生卵の話は知っていたけど、ミルクセーキは飲むのか、とは思ったことなかった。




気になったら調査。早速調べる。

…なるほど、フランス人は「調理しない卵」は気持ち悪がるのだな。


さて、その前に、なぜ「生卵は日本人くらいしか食べない」と言われるのか、書いておく必要があるだろう。



卵に対する感情は国ごとにかなり違っていて、アメリカでは法的に飲食店で生卵の提供を禁止している州もある。

イギリスでも、基本的に生は食べない。


理由は簡単で、生卵はかなりの確率でサルモネラ菌に汚染されるためだ。

卵の殻は微細な穴だらけで、菌の大きさなら簡単に通り抜けられる。


卵は、鶏舎の中で産み落とされるものだ。当然、そこには鶏糞が高確率に落ちている。

鶏糞中には当然のように雑菌がいる。


自然界に於いて、卵が簡単に汚染されるようでは困るので、卵白には殺菌の作用もある。

なので大抵の雑菌は大丈夫なのだけど、サルモネラ菌は繁殖してしまうようだ。


また、鶏自体がサルモネラ菌に犯されている場合がある。

大抵は病気になるようだ。この時点で発見され、排除されれば問題はない。


しかし、感染しても発症しない場合がある。

この場合、卵巣に菌が入り込み、産み落とした瞬間から卵にサルモネラ菌が入っていることがある。




日本では、鶏糞の問題は鶏を飼育するケージを傾斜付の金網にし、鶏糞は外に落ち、卵はすぐに傾斜で転がって集められるシステムを作ることで対応している。

卵にわずかについた鶏糞なども、集められてすぐに殺菌・洗浄する。


鶏自体の感染は、時々鶏の健康チェックをすることや、万が一病気の鶏が出たら、周辺も「発症していないが保菌の可能性あり」としてまとめて屠殺することで対応している。


こうした努力の結果、日本の卵は世界一の鮮度を保ち、卵かけご飯を食べられるし、ミルクセーキも飲める。

でも、一般に海外では生卵を食べない。



…ここまでは理解していた。ここからは今回知ったこと。


外部からのサルモネラ菌感染の際は、菌は卵白内にとどまる。

やはり卵白に殺菌効果があるため、あまり活動できないようだ。


卵が古くなると、卵黄を守る薄膜の効果が薄れ、卵黄に入り繁殖する。

また、卵を「割る」と、これも卵黄を守る薄膜が傷つき、卵黄が感染し、繁殖する。


生で食べる場合は、新鮮なものを、割ってすぐに食べること。


万が一、親鳥が感染していた場合は、最初から卵黄内に入るために繁殖するが、この場合は鶏舎で病気が発生することが多いため、確率的には非常に低い。



さて、フランス人の話でいえば、大抵は卵白には火を通すが卵黄は生に近い、半熟の状態を好むそうだ。

これは非常に理に適っている。


どうしても、卵白を生のまま食べたいジェラートづくりなどでは、熱い糖蜜を入れて殺菌したりする。

イタリアンメレンゲの作り方



じゃぁミルクセーキはどうなのだ、というと、フランス風は黄味だけで作る、と自分の追記でも書いてあった。

これなら問題ない。


全卵で作ることもあるけど、それは田舎で鶏を飼っていて、新鮮だとわかっている時だけ飲めるご馳走だったりするようだ。

(フランスは農業大国で、都会暮らしの人も「レジャーとして」農村に出かけることが多い)


というわけで、疑問は氷解。

調べてみると面白いもんで、疑問をくれた方に感謝。





さて、話は急に変わる。

この話を考えていて、数日前からモヤモヤしていたことを書きたくなった。


厚生労働省の基準が6月の頭にあらたまり、今日から「豚のレバー」を飲食店で提供することが禁止になりました。

3年前の「生牛レバー提供禁止」で、代わりに豚のレバーが提供されていたからね。


その基準が示された6月頭にちょっと話題になって、多くは「当然だ」という声だった。

僕もそう思う。


ただ、「生の豚肉は病原菌がいるから食べてはならない」という反応も多々見た。

今回の禁止措置は、それとは違う。

あくまでも、「生の豚レバー」の禁止に過ぎない。


理由は、レバーは血管の入り組んだ臓器であり、精肉された時点から内部に雑菌が入り込み始めてしまうから、と考えるのが良いだろう。




豚はたんぱく質などの組成が人間に近いとされている。

人間に近いため、人間が必要な栄養分を過不足なく持っている。そのため豚肉は美味い、とされる。

(一般に、羊・豚・牛の順に美味く、鶏はずっと下とされる)


そして、人間に近いためか、豚の病気は人間にも感染する、とされている。


ちなみに、鳥の病気は人間に感染しないが、豚には感染する。

鳥のインフルエンザが豚に感染し、豚の中で変異して人間に感染する様になった、とされるのが「鳥インフルエンザ」だ。


先に書いた「病原菌がいるから」と言っている人は、もちろんこのことを言っているのだとわかっている。

僕もまた、この説を支持する。生の豚肉を食べようとは、あまり思わない。



「新鮮だから」と言って提供する店が多いのも問題で、新鮮であることと病原菌の有無は無関係だ。

でも、「無菌飼育されたものだから」で生の肉を出す店があったとしたら…それは別に構わないと思うし、今回の基準でもそれは禁じていない。


(先に書いた理由で、無菌飼育でもレバーは禁止すべきと思う)




ところで、TOKYO X という豚肉のブランドがある。食べたことはない高級品だけど。

この豚肉は、非常に高度な飼育法が取られていて、頭文字を取って SaBAQ と呼ぶ。TOKYO SaBAQ だ。

(「東京砂漠」って、1976年に流行した歌があったのね。)


細かなことは省くけど、完全に無菌状態で何世代も飼育していて、病原菌を持っていないことがわかっている。


この点において、生卵の話と変わらない。

品質管理の努力が認められて生卵は許されるのに、豚肉は許されないのか。



サバはアニサキス(寄生虫)が高確率でいるから、生で食べてはいけない、とされる。

一般に締め鯖にされるが、酢で締めたくらいではアニサキスは死なないそうだ。食べてはならない。


でも、関鯖は生で食べても大丈夫だとされている。

一般に鯖は回遊するのだけど、関鯖は回遊せず、一生を関付近の海峡で過ごす。


この海峡は潮の流れが速いため、筋肉が発達し、堅いために寄生虫が入り込めないそうだ。

回遊しないことも含め、アニサキスへの感染率が低いから、生で食べても大丈夫。


…科学的根拠はないらしいけど、多くの人がその通りだと信じているし、経験則的には正しそうだ。



同じく、鮭は生で食べてはならない、と昔は言われていた。

でも、今は回転寿司屋でも生鮭が当たり前に出てくる、そういう時代だ。


ノルウェーサーモンなら、養殖だから寄生虫が入り込まないそうだ。

なるほど、生卵と同じで、業者の努力によるものだ。


水産物豊富なノルウェーで、魚介好きの日本に輸出できるものを作ろう、という国家プロジェクトの元、日本人好みの味になる養殖法を作り出したそうだ。


粘り強く、20年かけて徐々に売り込みをかけ、日本人も抵抗なく生鮭を食べるようになった。




昔から生で食べてはならない、とされてきた鯖や鮭は、現在は生で食べることに抵抗が無い。

海外では生で食べる習慣のない卵は、業者の努力によって生で食べることに抵抗が無い。


豚肉も、業者の努力で無菌豚は生まれている。生卵と変わらない。

昔からの習慣なんて、鯖や鮭と同じで20年たてば変わるだろう。


#豚生レバーをありがたがる人がいるのだから、すでに習慣は薄れているのだと思う。


と、業者さんの努力を認めたうえで、僕は今のところ豚の生肉を食べたいとは思わない。


それどころか、牛の生肉も抵抗がある。表面を焼いてくれれば、中がレアでも構わないけど。

これは、雑菌汚染の問題。



じゃぁ生はダメかというと、馬刺は食べるし、魚の刺身も食べる。

刺身としてノルウェーサーモンだって食べるのだから、「昔からダメだと言われてきた」も問題ではない。


ちゃんと調理されていれば虫だって食べるから、見た目の問題でもない。



自分でも、何が閾値になっているのか、よく理解できていない。

最初に「モヤモヤしてる」と書いたのは、そのこと。


豚肉も、20年たったらレアステーキで食べてるかもしれない。




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