2015年07月16日の日記です


バーチャファイター・リミックス  2015-07-16 15:22:08  業界記

さて、もう20年が過ぎている、1研で作っていたゲームの話を。

以前も書いたけど、同じ部署で作っていたと言っても僕は近くで「見ていただけ」なので、それほど詳しくは知らない。


まず、バーチャファイター・リミックスから。

1995年4月にはリリースされているようです。


サターン版は、「非売品」として、100万台達成記念のキャンペーンとして本体に同梱され、6月 16日から販売されています。


基本的にバーチャファイターと同じソフトですし、欲しい人はもう持っているはず。

だから、同梱だけで十分…というのは、悪くない判断に思える。


でも、単体発売してほしい、という声も多く、7月14日に単体販売されています。




サターン(以下SS)に移植されたバーチャファイター(以下 VF)は、AM2研によるものでした。

ハードの最終仕様の「詰め」と同時並行でプログラムしていったようで、開発期間も短い中で良く作ったと思います…が、SS の機能を活かした、とはちょっと言い難い。


当時の雑誌記事によれば、V60アセンブラのソースから SH2 に変換するコンバータを作り、MODEL1 には存在してサターンには存在しない「3D変換器」部分を、サブ SH2 で肩代わりするようにしたものをベースに、さらに細かなチューンを施していったもの、でした。



十分出来は良いのだけど、テクスチャ貼ればもっときれいに出来るはずだよね、という話題が、重役会議で出たようです。

ST-V は「NEO-GEO と同じ市場を狙う」という計画も当時はあったので、駄菓子屋向けVF、という狙いがあったようです。


当時すでに MODEL2 の VF2 が出ていましたが、基板が非常に高かった。

大人気ゲームだったけど、とても駄菓子屋には置けない。でも、駄菓子屋は NEO-GEO の格闘ゲームが人気だった。

じゃぁ、VF2 っぽい、安いソフトがあれば売れるだろうという読み。


ハングオン Jr. …って思い出した人は、大体そういう考え方であってます。




もちろんそんなもの、AM2研は作りたがらなくて、「会社が必要とすればやりますよ」の AM1研が引き受けることになりました。


SS 版 VF は、ポリゴン数を減らしたと言っても、まだ「ポリゴンで」細かな表現をしていました。

これを、さらにポリゴンを減らし、代わりにテクスチャで表現するようにします。


ここら辺は主にデザイナーの仕事。


最大にポリゴンを減らせたのが、ステージ。床の部分です。

SS 版は業務用と同じように、細かなポリゴンの組み合わせで表現されていました。

しかし、SSの能力ではポリゴンが表示しきれないことがあり、床という大きなものが欠けて表示されるのは性能が低い印象を与えていました。


SS には、回転 BG 面があります。

以前に書きましたが、「回転」と呼ばれているだけで、実は自由変形可能。

でも、制御できることが多すぎて、当初は使いこなされていなかった機能です。


VF リミックス作成にあたり、床を回転BG で作り直しました。


これ、元の SS 版 VF には全く存在していなかった機能を追加したわけで、プログラマーは結構大変だったみたい。

回転BGだけだと、床の端の処理で破綻することがわかってポリゴン追加したり、試行錯誤してました。


SS版 VF は、本体と「同時発売」と決まっていたため、開発期間が十分でなく、バグが多数残されていました。

もちろん、ゲーム進行上問題となるようなバグは残っていませんが、そうでないバグは多数あったのね。


テクスチャマッピングしただけでなく、これらのバグを全て解消し、処理の無駄をなくしてブラッシュアップしたのが、VF リミックスでした。




VF リミックスは駄菓子屋用に作ったはずなのだけど、結局駄菓子屋ロケには進出していません。


作った物だから売らなくてはならなくて、ゲームセンターで VF2 の隣に置かれたりしました。

VF2 は 200円、リミックスは 100円、という値段設定ね。安いからリミックスで遊ぶかというと、高くても VF2 で遊ぶ人の方が多い。


これは、社内体制がちぐはぐだった為の悲劇だと思っています。

重役は「駄菓子屋などを開拓する」と息巻いているのだけど、そのための体制づくりは何一つやらなかったのね。


それ以前から、営業には売り上げベースで重いノルマが課されていました。

駄菓子屋ロケを苦労して開拓しても、安い ST-V を1つ仕入れて終わり。ゲームの交換なんてしてくれないでしょう。


それよりも、高価な MODEL2 を購入してくれるゲームセンターに売り込んだほうがいい。

ST-V も、新たな販路を開拓するわけではなく、ゲームセンター向けの販路を活用して売った方が効率が良いのです。




VF リミックスを作った人たちが、そのままサターン版も作成していました。


そして、サターン版完成後に、「PAL 版も作って」というリクエストが来たようです。

なんだか古い感じのテレビ(PAL信号入れられるのがそれしかなかったようだ)を持ち込んで、調整していました。


ヨーロッパでは当時は家庭用の放送が PAL (50Hz) でしたが、ゲームセンターでは日本やアメリカと同じ NTSC (60Hz)の機械を使います。

ST-V だって、ヨーロッパで 60Hz のまま動いている。でも、サターンはさすがに PAL なのですね…


60Hz で動いていたものが 50Hz になるので、全体にスローモーションになっていました。

そして、画面解像度は少し上がります。ポリゴンは元々計算で出しているので良いとして、ビットマップで書かれた文字などが、みんな微妙に引き延ばされて汚くなってる…



納得いかないけど、開発費用も余りかけられないし、これで完成、と言ってました。


…今気になって調べたら、元の VF も PAL 対応してますね。


文字などが汚くなってスローモーション、というのは、実は元の SS 版 VF PAL 版の仕様なのかもしれない。

ここのところ、詳細は知りません。




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