映画「マイケル」を見てきました。話題作。
僕は「映画の街」大船に住んでいますが、松竹大船撮影所があった、というのはずいぶん昔の話。
今は映画の街と言われながら、撮影所どころか映画館もありません。
妻が昔からマイケル・ジャクソンのファンなので、この映画は見に行きたいと言っていました。封切りは6月12日。
すぐにでも見たかったのですが、車で1時間ほど走らないと上映館がなくてね。週末にやっと行ってきたというわけです。
事前情報調べていて、妻がネタバレを踏んでいました。
日本封切りより前に、すでに公開されていたアメリカでの話。
と言っても、映画の詳細ではなくて、周辺事情のゴシップ的話題。マイケルと仲の良かった妹、ジャネット・ジャクソンはこの映画には出てこない、という話です。本人が映画作成に否定的で、協力を拒んだのだとか。
それを知って、妻としては変に事実が歪曲された話だったら嫌だな、と少し躊躇しています。すぐに見に行かなかったのはそれも理由の一つ。
で、見に行く道中の車の中。
封切りから1週間もたっているので、ラジオを聞いていたら、盛大にネタバレしていました。
(小山薫堂さん… FM 横浜「FUTURESCAPE」の中で、映画を観た感想を簡単に述べていただけですが)
ここではネタバレを書きたくないので詳細に踏み込みませんが、このネタバレで妻の「不安」は、むしろ解消しました。
あぁ、なるほど。そういう事情であれば、ジャネットが出てこなくても不安に思う必要はないわ、と。
妻はMJファンとしては、かなり病膏肓の部類というか、CD だとか本だとかいっぱい持っています。
なので、ラジオで聞いた「非常に簡素な感想」から、ストーリー展開を大づかみに把握して、映画作成サイトがどのような意図でこの映画をまとめているかを見抜いたのでした。
というわけで映画の感想。ネタバレにならない程度で。
まずは僕個人の感想。マイケル・ジャクソンはたいして知りません。
小学生のころに「スリラー」のブームがあったので、手を顔の前にあげて左右に歩く、スリラーの群舞を友達と真似したりしたかな。当時の子供はみんなやったはず。
その程度の知識しかない。スリラーで小学生なので、その前のジャクソン5とかの時代はほぼ知らない。
でも、非常に楽しめました。これ、 MJ をほとんど知らない人でも楽しめる作りになっている。
MJ の成長に合わせ、その当時のヒット曲をガッツリと流して、短い映像で「その当時のマイケル少年」に何があったかを理解させるようにしています。
そして、曲と曲の合間に身近な「ストーリー」が挟まる。そのストーリーはMJを知るうえで重要なので、わざわざ曲の合間に、しっかりセリフを入れながら伝えるのです。
でも、短いストーリーが終わると、またご機嫌な曲に乗せて短い映像で彼の成長が伝えられる。
全編を通じて、有名なヒットナンバーを流しつづける、でもミュージカルでもミュージックビデオでもない、ストーリー性の高い「映画」です。
(マイケルジャクソンの「ムーンウォーカー」とか、全編ヒットナンバーが流れる映画ではありましたが、単にミュージックビデオをつなぎ合わせたようなものでしたからね…)
そして、語られるのは、MJ の話…というよりは、より普遍的な「少年の成長物語」です。
ネタバレを避けるために詳細には踏み込みませんが、この話の構造は誰でも理解しやすいし、特にアメリカ人には受けるのではないかな。もちろん、日本人でも共感できる話です。
妻の感想。
とにかく、最初の第一声で「あぁ、マイケル…」と感動だったそうです。子役から大人に至るまで、役者は次々変わりながら演じているのですが、顔もしぐさもそっくりだし、声質まで似ていた、と。
さすがアメリカはショービズの人材層が厚いねー、などと、僕と最初は話していたのですが、細かく考え始めたら、多分そうじゃない。
多分、ですが、この映画稀に見る、コンピューター技術の総動員された映画です。単純な 3DCG 映画よりすごいのではないかな。
というのも、3DCG なら完全に好きなように作れるけど、「役者」を使って実写撮影したものを、おそらくほぼ全編にわたって「コンピューター加工」して、MJ 本人に近づけている、と思われるから。
AI が発達した、といってもまだ違和感がありますし、この映画の撮影に3年以上はかけているそうなので、AI 加工などではない。当然自動化がある程度入っていたとしても、加工を施して人間の目でチェック。違和感のある所は人の手で修正する…などしているのではないかと予想。
そして、お話も素晴らしいの一言です。ガチファンである妻のお墨付き。
マイケルジャクソンは、スキャンダルまみれの人でした。稀代の大スターだったからこそ、人々が醜聞を面白がった点もあります。だから、彼を悪く言えば人々は面白がり、事実と離れた醜聞が沢山あった。
映画では、そうした醜聞はとり上げませんが、醜聞の「元となった事実」は丁寧に描いています。
その醜聞を知らない人にとっては、単にマイケルがそういう人だったんだ、という「事実」。
そして、醜聞を知っている人にとっては、実際には醜聞などでははなく、妥当な理由があってのことだったのだという「真実」です。
一方で、MJ の業績については、非常にさらっと流されます。
当然のように「スリラー」のミュージックビデオ撮影の話は出てくるのですが、これが当時いかに型破りの事で、その後の音楽シーンを変えてしまったのか、ということについては語られない。
(そういえば、このシーンで「モブであるはずの、スリラーのビデオでの MJ の彼女役」まで、本人にそっくりだったと妻は感動していました。そんな細かなところまで気を使って作られています)
先に書きましたが、話の中心は MJ ではなく「少年の成長物語」なのです。なので、彼が世界を変えたことについてはいちいち触れず、あくまでも「どこにでもいる少年」のような扱いです。
先に書きましたが、「ジャネットが描かれない」ことも、これが理由かと思われます。
どこにでもいる少年の話に、大スターとなった妹は出さない方がよいでしょう。事実歪曲をしたいわけではありません。
リピートして、2度3度と見る人もいるそうです。
先に書いたように、ご機嫌なヒットナンバーを聞き続けていたらあっという間に2時間、というような映画なので、見ているだけでも十分楽しい。
そして、上に書いたように、MJ の「やったこと」は描かれても、それがどのような「世界を変えた業績」なのかは説明されません。
1度目で彼のやったことを知り、気になってネットなどでその話を調べた人が、それが世界を変えるような出来事だったと知って、もう一度見て確認したくなる、というのはわかる気がします。
最後に、僕が個人的に「よかった」シーン。
すでに大スターになった MJ が、おもちゃ屋さんに買い物に行って、ファンの子供に囲まれるシーンがあります。
そのシーンの冒頭で、おもちゃ屋さんの外観ショーウィンドーに、ATARI 社のロゴが見えてるんですよね。元ゲームプログラマーなので、このロゴが見えただけで「当時のおもちゃ屋さんらしさが出ている」と思った。
そうしたら、子供の一人が、ATARI 2600 の「ADVENTURE」を買おうとしている。MJ はこれを見て「そのゲームはね」と、攻略法を教えるのです。
ADVENTURE は、「ゼルダの伝説」の元ネタになったゲームです。
初代ゼルダの7年前に発売されていますが、広い世界を固定画面の連続で表現する、いわゆる「ゼルダスクロール」で作られたゲーム。
冒険者を操作して、様々なアイテムを入手することで行動範囲を広げながら、敵を倒して目的を達成する…と、当時のゲーム機では限界があり画面は荒いのですが、エッセンスとしては十分な内容を含んでいます。
当時の大ヒットゲームですが、MJ も熱中して遊んでいた、ということを物語るエピソードを、彼の子供好きな性格と共に、さらっと示す。
実際、MJ はテレビゲーム大好きで、自分でもゲームの企画を出したり、ゲーム音楽作ったりしていましたからね。
2時間の映画だし、彼のテレビゲーム好きなんて語っている余裕はないのだけど、ちゃんとわかる人にはわかる「たった一言」で表現しているわけです。
全編そういう感じ。エピソード選びが上手くて、たった一言のセリフに、MJ に対する愛とリスペクトを感じられる。
良い映画でした。
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