2013年08月28日の日記です


IBM407  2013-08-28 12:46:28  コンピュータ 歯車

Twitter でシャープ公式アカウントがこんなのつぶやいてた。



強いかどうかと言うより、僕としては機種が気になった。


1960年当時だと、コンピューターは非常に巨大、かつ繊細な機器だ。

しかし、写真に写っているものは「箱」に収められているようだし、これだけで完成しているような印象を受ける。


とすると、DEC のミニコンピューターかな?

…と思って調べたが、DEC が商業的に成功した PDP-8 を作るのは 1965年だった。


最初は「横倒しにして運んでいる」ように見えた。当時のコンピューターは、大抵縦長だからだ。

でも、よく見ると板にあけられた(おそらく排熱のための)スリットは、この状態で正しそうだ。


横長でこの大きさだと、これは制御卓部分で、コンピューター本体は別に存在するのかもしれない。


運んでいる荷物の一番手前の部分、箱の上側に、斜めになっている部品が見える。

これ、パンチカードを納める読み取り機だな、とわかる。


#知らない人がこの写真見ても思わないだろうけど、特徴のある形状なのです。


となると、その奥にあるのはプリンタか。

排熱のスリットがあるのだから、写真手前が、実際に使うときには「奥」になるのだろうな。


パンチカードを使うのなら IBM だろう、と思って IBM の当時のコンピューターを調べる。

当時なら IBM 709 か、と思ったけど制御パネルは縦型のようだ。写真のものとは違う。


709 のもとになった 704 も調べたが、こちらも違うようだ。


しかし、こういう写真は大抵「制御パネル」や「本体」ばかりで、パンチカード読み取り機やプリンタと言う周辺機器は写真が少ない。


じゃぁ、と考えて「IBM パンチカード読み取り機」で写真検索してみる。


すると、どうもそれっぽい写真が見つかる。写真の元ページを見に行くと、どうやら IBM 407 タビュレーターと書いてある。


そうか! タビューレータか!





コンピューターだと思って探していたからわからなかった。


さすがに背面から撮った写真は見つけられなかったが、左の写真など、横のパネルの開閉部分など同じだとわかる。

多分、シャープ(写真には「~電機」と書いてあるが、これはシャープの昔の企業名、早川電機だろう)に運び込まれたのは IBM 407 で間違いないと思われる。


#この写真はPaulさんのページから引用。個人で IBM650 持っているって…すごい趣味だ。

 (リンク先では、もっと大きな元サイズの画像が見られる)


全体像としてはこちらの写真がわかりやすい。

シャープさんの写真とは正反対の位置から写したものなので、同じものであるとわかりにくいけど。


タビュレータは、パンチカードを読み取り、作表(テーブル化、つまり「タビュレート」)する機械。

407 の場合、作表の前段階として集計作業ができるので「会計機」とも呼ばれる。


左端に、パンチカードの束を置く場所がある。シャープの写真では、手前にあった部分だ。

置いたパンチカードは一枚づつ読み取られる。


装置上中央には、プリンタがある。ここで読み取ったデータを直接プリントアウトしたり、もしくは集計した結果をプリントアウトしたりできる。


右端横側にはハンドルが付いている。

この部分、引き出しのようになっていて、開けることができる。


引き出しを開けた状態が、この写真だ。


407 会計機は非常に高機能だったので、どのような作業を行うか、ここの配線を変えることでプログラムできた。

線(コード)を配するため、「コーディング」と呼んだ。


このプログラム方法は、ENIAC などと同じだと思っていい。


#詳細な2つの写真は、コロンビア大学より引用。こちらもリンク先で大きな画像が見られる。



407 会計機は、僕のページにたびたび出てくる書籍「ハッカーズ」の冒頭に出てくる機械だ。


「ハッカーズ」は初期のコンピューターハッカーの生活に迫ったドキュメンタリーだが、最初に扱うマシンはコンピューターではなく、この 407会計機だ。

当時はコンピューターは何百万ドルもするもので、一般人は触ることすら許されなかった。


というか、407も触ることは許されなかったのだが、704本体ほど厳重な管理はされていなかったため、ハッカーたちが夜中に忍び込んで、勝手に「遊んだ」様子が描かれている。



ちなみに、うちにある「ハッカーズ」は第3版第5刷だが、非常に誤記が多い。

407は、話をしている最中に急に「704」と名前が変わったりする。


先に書いた通り、IBM 704 コンピューターと言うものが実際にあるし、704 は 407 を周辺機器として使えるように設計してある。


英語原文を読んでみたところ、「407」の名称は1回だけ使われ、以降はすべて「it」だった。


日本語で「それ」が多いとわかりにくいため、訳者がわかりやすく、すべてを「407号」と書こうとしたようだ。しかし、間違えて途中から「704号」になり、余計に混乱させている。


#そもそも、「407」は機械の型番であり、個体を識別する「407号」ではないのだが。




407 はコンピューターではないが、IBM 704 コンピューターの重要な周辺機器だった。

だから、シャープ公式氏のいう「コンピューター搬入中」は間違いではない、と思う。


もしかしたら、704/709 は導入しておらず、407 だけの可能性もある。

それでも、ノイマン式ではなく、計算式にも制限がある(データ集計しかできない)というだけで、自動計算機(広い意味でのコンピューター)ではある。


なかなか面白い写真を見せてもらった。ありがとうございます。




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