2013年10月04日の日記です


ジョン・アタナソフ誕生日(1903)  2013-10-04 11:29:42  コンピュータ 今日は何の日

今日は ABCマシンの設計者として知られる、ジョン・アタナソフの誕生日(1903)。


ABC は、Atanasoff-Berry Computerの略。アタナソフが計画しましたが、実際の作成にはクリフォード・ベリーが協力しているため、二人の名前がついています。


このABCマシン、ENIAC 以前に作られた、世界最初のコンピューターと呼ばれるものの一つですね。

コンピューターの定義が難しいところですが、私見ではこれはコンピューターではなくて計算機です。


かなり昔に僕が書いたABCマシンの記事があるので、詳細はそちらに譲ります。


ただ、この記事かなり古く、その後知った情報が盛り込まれていません。

記事では「完成しなかった」と書いたのですが、出力ができない以外は動いたのだそうです。

計算結果を出力できないというのは、結局未完成だと言うことですけどね (^^;;




ちょうど良い機会なので、コンピューターと計算機の違いについて、僕の思うところを書いてみます。

最初に言っておきますが、私見ですし、多くの人にとってはどうでも良いことです。


計算をするための機械は計算機です。これは誰もが納得するところでしょう。


ただし、計算に使う道具は計算機ではありません。

古い計算機の話になると算盤を挙げる人がいるのですが、あれは計算を補助する道具であって、計算を行うのは人間です。

同じ理由でネイピアの骨(計算棒)も計算機ではありません。


パスカルの計算機が現存するものとしては一番古いと思いますが、それ以前にもシッカルトが作成したという記録がありますし、アンティキティラ機械も計算機だった可能性があります。


アンティキティラ機械は、紀元前に作られたと推測される歯車機械です。1901年に発見されました。

ここまでは事実。


発見時からぼろぼろの状態で、どうやら失われた部分も多いようです。

研究を行った学者により、おそらくこれは太陽や月、惑星の運行を計算する機械だったろう、となっています。ここは推測であり、事実かはわかりません。


ところで、アンティキティラが出たついでに、「計算」の定義も書いておきましょう。


計算と言うと、数値を入力すると、なんらかの処理をして数値を出力する、というものを想像しがちです。

でも、計算するものは数値とは限りません。


アンティキティラ機械では、おそらく日付を何らかの形で入力すると、その時点での天体の位置を出力します。

現代にも残る類似のもので言えば、星座早見版だって日付を示すと星座の配置を出力します。これだって計算です。

同様に、年月日を示すとその日の月の満ち欠けがわかる、という仕組みもあります。

(星座早見盤の裏についていたりします)


第2次大戦中に日本軍が作った「計算機付」の高射砲は、敵機の位置をスコープが捕捉するように機械を動かし、別に測定した予測高度、航行速度を入力すると、高射砲が「適切な射的位置」に向くようになっていたそうです。

あとは、任意のタイミングで打つだけ。命中率がものすごく高かったとか。


この場合、スコープで捕捉することが「入力」で高射砲の向きが「出力」ですが、計算機です。




さて、計算機の話だけで長くなりすぎました。


ともかく、計算が行えれば計算機。

この計算の内容がある程度複雑な場合、コンピューターと呼ばれます。


「複雑」というのがまたあいまいですが、大体の基準はあって、


1) 繰り返し演算が必要で、ある条件が満たされたときに、自ら計算を終了できること

2) 1 の計算内容や条件を変更できること

3) 2 で複数の計算内容を設定しておき、1つの計算が終わったら次の計算に移行できること

4) 3 のプログラム自体を計算処理対象にできること



1 を満たしただけでも、コンピューターと呼ばれる場合はあります。

現代的には 4 を満たさないとコンピューターとは呼びません。


タイガー計算機は足し算・引き算を繰り返すことで掛け算・割り算を行います。しかし、繰り返し操作は人間が行うため、「自ら計算を終了」できません。

そのため、コンピューターではありません。


後に、タイガーは電気式で自動で掛け算・割り算を行う機械も作っています。

これは、 1 の定義は満たしますので、コンピューターと呼ぶことも可能です。


電動タイガー計算機は、「掛け算」と「割り算」を選べました。計算内容と終了条件は、この設定により変わります。なので、2を満たす、と言えなくもありません。


ちなみに、ABC はガウス消去法を行うマシンだったので、2も満たしません。完全に 1 のみです。



3 をみたせば、ありとあらゆる計算ができることになります。

ENIAC はこの段階です。


4 は、プログラムを内蔵すること。計算するためのデータと、プログラムの間にたいした違いはありません。

プログラム内蔵型になると、プログラムを自己生成して動作することが可能になります。

自己生成と言うとなんだかすごそうですが、コンパイラとかもそうです。



コンピューターと言う言葉はあいまいで、この 1~4 のどの段階でも「コンピューター」と呼ばれてしまいますが、機能は雲泥の差です。


僕は ABC マシンも ENIAC も世界最初のコンピューターだと認めない立場をとっています。

その理由は、一般的に「コンピューター」と呼んだ時、多くの人が 4 を満たしたものを想像するためです。


もっとも、上の理由に「多くの人が想像する」とあるように、重要なのは多数の人の認識だと思っています。

そのため、世界最初のコンピューターを尋ねられた時は ENIAC を挙げたうえで、実際には少し違うことを説明します。

ENIAC は現代的な意味ではコンピューターではないのですが、重要な一歩であり、最初と呼んでも差し支えない、という程度には認めているのです。




もう一つ、ABC が世界最初だと主張する人の根拠の一つが「裁判所が認めた」なのですが、そんなもの、どうでもいいです(笑)


裁判所はなんらかの紛争を裁定する場所であって、技術的な事実を確認する場所ではないですから。

その裁判所すら、ENIAC の特許無効を裁定した時に、先行技術としての ABC を認めただけであって、ABC が最初のコンピューターだなんて言っていないのです。


とはいえ、この裁判で ABC が有名になったのは事実。僕もこの裁判の話として、ABC を知りました。



2進法のデジタル計算機としては最初期のものだったのも事実です。

ENIAC では2進法は採用されなかったとはいえ、ENIAC 完成前に ENIAC の設計者たちに ABC の技術は説明されており、EDVAC 以降現代まで続く2進法コンピューターに影響を与えているのも事実でしょう。


ABC がなければ現代コンピューターはなかった、と言っても間違いはありません。


(2進法の採用はツーゼの Z3 の方が先でしたが、戦時中のドイツで作成されたため、現代のコンピューターに影響を与えてはいません。)



では、最後にもう一度。

今日は、この ABC の設計者、アタナソフの誕生日です。



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