2014年09月07日の日記です


TenQ  2014-09-07 12:15:48  社会科見学 家族 天文

少し日が開いてしまったのだけど、8/30 に TenQ を見てきました。

せっかくなのでレポートを。


TenQ 、東京ドームシティ内に出来た、新しい施設です。

プラネタリウムでも科学館でもなく、宇宙を新しい切り口で見せてくれる、という話題の施設だったのですが…




最初に断わっておきますが、辛口評価です。

以前に、メガスターで有名な大平さんの作ったイベントでも、かなり辛口の評価を出しています。あれ、人気あるんですけどね。


説明しておけば、僕も妻も天文は結構好きなのですが、「科学」視点で見ています。


星が好きな人には、星を見ると言う行為(夜通し起きていたり、真っ暗な中で孤独を味わったり)自体が好きとか、星座の歴史的背景(メソポタミヤ文明やギリシア神話など)が好きな人もいますが、全然視点が違うことを断って置きます。


僕が辛口の評価だから出来が悪い、と言うわけではない、と言う意味です。




さて、TenQ 。


まず、入り口でシステムに疑問を持ちます。

込み合っている中で映像を楽しんでもらうため、一定時間ごとにまとまった人数を入場させる方式なので、最初に整理券をもらう必要があります。


この整理券をもらうためには、入場資格を持つことを示す必要があります。

基本的に入場人数を制限しているので、あらかじめ予約を入れ、料金を前払いしている「証明」をするのね。


整理券をもらった時点で、入場資格を持っていることは確定しています。



中に入ると、待合スペースがあります。ミュージアムショップも併設しているので、先にお土産物を選んだりしといてもいいでしょう。

そして、時間が来ると整理番号に書かれた数字で呼び出しがかかるので、整理券を見せて入り口前に並びます。


先に書いた通り、整理券を持っている人は「入場資格」を持っていることが確認されているはずです。


でも、入場時刻になったら、一人づつ、入場チケットに印刷されている QR コードを入場ゲートに読み込ませないと入れないのです。


このゲートが1台しかない上に QR コードの認識効率が悪く、子供(5歳児から)も必ず「一人一枚」読み込ませながら入らないといけないので、妙に手間取ります。


一人入るのに 5 秒程度かかると思ってください。ただ入れるだけなら、一人1秒もかからないはずなのに。


この先は映像を見せるスペースがあるのですが、「見せる準備」が整ってから入場が開始され、全員が入場できるまでに5分程度かかります。

この間、お客さん全員が「待たされる」のです。



このシステム、絶対に考えた人は頭が悪い。

この時点で、展示内容も頭が悪いのではないか、と言う危惧が頭をよぎります。




入り口入ると、どうやら「ビッグバン以前の虚空」を表現したらしい長い通路があります。

…単に通路です。まぁ、これは変に突っ込む必要もないからいいや。


その後、プロジェクションマッピングで展示のオープニングを飾る映像体験が…


…プロジェクションマッピングすることに意味が感じられません。

むしろ、ただの映像にした方がよかったのでは?



プロジェクションマッピングは、映写機(プロジェクター)で、スクリーンではなく建造物等に映像を投影する技術です。

スクリーンのような平面ではなく、凹凸のある建造物に映像を投影すると、映像がゆがんでしまいます。


しかし、あらかじめ凹凸を測定し、コンピューターで計算して、歪みを最初から考慮した「変換映像」(日本語で写像、英語ではマッピング)を作ったとしましょう。


すると、凹凸のある建造物をスクリーンとしても、画像はゆがまずに正しく表現されます。

これが「プロジェクションマッピング」です。


この際、映像は「建造物の窓などの凹凸を活かした」ものにするのが普通。窓には、はっきりと「窓」だとわかる映像をあえて投影します。

しかし、長い映像表現の中で、時々その枠組みを超えて見せる。たとえば、開くはずの無い窓でも、両開きに開く映像を投影してみる。


…すると、人間の脳は、動くはずのない建造物が動いているかのように錯覚を起こすことがあります。

この錯覚(眩暈)体験が、プロジェクションマッピングの醍醐味。



でもね、TenQ は屋内施設で、壁はもともと平面。

ここに、「プロジェクションマッピングをしたいから」わざわざ凹凸を付けています。


プロジェクションマッピングが「必要だった」から使ったのではなく、プロジェクションマッピングしたいという要求が先にあって、そのために凸凹を付けているのです。


何かが表現したかったのではなく、まず技術ありき。



まぁ、百歩譲ってそこまでは良しとしましょう。


この際、観客は正面、または下から映像を見上げる形になるのに、映写機は天井から下向きに投射する形になっています。

そのため、凹凸の下には「影」ができ、映像に隙間があいてしまうのです。


建造物へのプロジェクションマッピングであれば、相手が巨大すぎて映写機も下から投射します。

このため、映像に隙間は出来ず、先に書いたような「動かないものが動きだす」感覚を得られるのですが、TenQ では映像に影ができるせいですべてがぶち壊し。


つまり、技術ありきなのに、その技術の使い方を間違っている。余りにもお粗末な失敗です。



映像の内容自体は…一応、科学の歴史を非常に短い映像体験としてまとめたものでした。

でも、科学史を理解していないと良くわからないと思います。説明するのではなく「体験」してもらいたいのだろうけど、単に説明不足で意味不明な映像になっている。




次。

最大の売りである、4k x 4k のスクリーンによる、見おろし型の映像体験。


これがまた、がっかりする内容。

紹介される静止画写真などでは地球の映像が映っているものが多いため、見おろし型と相まって、「宇宙ステーションに滞在する気分で地球のいろいろな姿でも見せてくれるかな」と思っていたのですが…



最初はちょっと面白いです。

月面についた、アームストロング船長の足跡から始まり、だんだんズームアウトしていく。

どんどん、どんどんカメラが引くと、月の全体が現れる。


この時点で「Powers of Ten をやりたいのかな?」と思ったら…さにあらず。

宇宙の虚空を感じさせることなく、縮尺が完全に狂った形で月のすぐそばに地球が現れます。


その後は地球上の美しい光景とかを見せてくれるのだけど、実は 4k x 4k スクリーンは、数台のプロジェクターの映像をつないで作っています。


そして、その…つなぎ目が、明らかにおかしいのが見ていて気になるんですね。

星が現れれば、つなぎ目で2重に見えるのがわかる。映像がパンすれば、つなぎ目あたりで「うねる」のがわかる。


余りに気になるのでそのあたりを見ないように、広い画面の「ほんの一部だけ」を集中してみるようにしていれば良いのですが、映像は大画面を活かして、全体を見ないと面白くないような作りになっている。


さらに、これだけ大画面の映像なのに、MPEG か何かで圧縮しているようで、圧縮ノイズが出ます。

動きがダイナミックなところでは、背景の星などの「動き」データが圧縮時に省略されるようで、動きがガクガクになり、破綻します。


一例をあげると、太陽を回り込みながらプロミネンスを見せる CG 映像があります。

そこでは「動くプロミネンスのそばに背景の星が流れる」ようになっているのですが、視線が集まるプロミネンスの背景で、ガクガクと星が動いてしまうのです。


今 CG 映像と書きましたが、CG 多用されています。綺麗ではありますが、実際の映像の迫力、と言うのはない、作りものです。

そして、この CG が科学的におかしい…


惑星を次々と旅行するような映像で、「小惑星」といって、岩の塊が数個固まっているのが写るだけ、とか。

小惑星は「小惑星帯」なのだから、広がりを表現しないとおかしいだろう。




さて、実はツッコミどころが多すぎて困ってしまうのは、基本的にここまで。

プロジェクションマッピングと 4k 映像を最大の売りとしているのですが、その売りがダメなだけで、後はなかなか素晴らしい施設でした。


このあと、研究エリアに入ります。

学者が常駐している研究所をエリア内に設け、研究している姿を見せている…というのは、ほとんど意味を感じられない展示ではあるのですが、面白い試みです。


その研究所はエリアのほんの一部で、周囲には太陽系の惑星探査の成果がパネル・模型・映像で展示されています。


南極で発見された火星由来隕石のかけらを、触ってよい状態で展示していたり、NASA が送ってきた最新の火星映像(といっても、NASA が「公開してよい」と判断したものなので、2週間程度は前の物)を見せてくれたり。

科学館として、なかなか悪くない展示内容です。


ただし、ここの内容は急に高度になりすぎているのに、説明が不十分。

十分な知識を持っていない人には「なんだかよくわからない」ようでしたし、十分な知識を持っていても、展示意図が意味不明なものもありました。

(さんざん考えて、多分こういうことが伝えたいのだ、と類推することは出来ましたが、知識がないと絶対に伝わらない)




次。

子供も喜ぶ体験学習エリア。


タッチパネルで動かせる「ボール型ロボット」を操作して、時間内にゴールに入る、という面白そうなゲームが置いてありました。

このボール型ロボット自体も、惑星探査などを想定して作られた物みたい。


これは面白そう、是非やろう…と、行列を並んでやりましたが、出来が悪くてゲームの体をなしていませんでした。


「操作する」のだけど、「操作できない」のね。


ボールを前後左右に動かす、という指令をタッチパネルで送れるのだけど、ボールのどちらが「前」に当たるのかが、ボールが移動する際にランダムに変わりやすいのでした。

特に、ボールがどこかにぶつかると変わりやすい。補正の仕組みがあるのだけど、補正の仕組みは広いところでない使えないようになっている。


障害物のある細い橋を渡って通る、と言うゲーム内容なのだけど、橋の入り口に来るまでに壁が多数あり、ぶつかってしまう。

そして、どちらが前かわからない状態で橋を渡らないといけない。

「前」を補正したければ、広いところでないとできないので、一度橋から落ちなくてはならない。


…というムリゲーでした。


もしかしたら、タッチパネルだから操作性が悪い、と言うのもあったかも。

アナログジョイスティック使えたらもうちょっと簡単なゲームになった気もします。



それ以外は、体験学習エリアは基本的によく出来ていたかな。


「太陽系テーブル」という、知識を持った人には面白いのだけど、そうでない人にはなんだかわからない考えオチにちかい展示があって、それはなかなか楽しめました。


あと、宇宙に興味を持ってもらおうと「宇宙の不思議な話」などを文字で書いてあるコーナーがあるのだけど、内容はムーです。


アステカ文明に宇宙飛行士のレリーフがあるとか、江戸時代の宇宙人との遭遇記とされる「うつろ船」の話とか…

すでに否定されているムー的話題をそのまま紹介しているのってどうなの?




他には、宇宙関係の人の「偉人の名言」を映像作品にしたスペースとかありました。

わかる人には結構泣ける言葉もあるのだけど、名言って文脈から切り離すと意味を失うから。


(まぁ、ここでは「宇宙」という大文脈がったから、それほど切り離されてなかったけど)


ロシア語を習ったことのある妻によれば「ヤーチャイカ」がロシア語でそのまま表示されていたのが素晴らしかった、とのこと。


(ロシア人で、初の女性宇宙飛行士テレシコワの言葉。意味は「私はカモメ」。

 自分が空から地球を見下ろしていることを詩的に表現した言葉として話題を呼んだが、「カモメ」は単に彼女の通信用コードネーム)




…と、これが TenQ の大まかな内容。


最初に書いた通り、僕は「科学」視点で見ているので、CG で合成された映像で迫力だけを出そうとするような部分には非常に批判的。


でも、そういう部分ですら、見もしないで批判することは無いよ、と付け加えておきます。

4k x 4k ディスプレイは、先に書いた通りつなぎ目の処理が悪いけど、それでも一見の価値はある映像を見せてくれます。


ただ、映像が素晴らしいものだったからこそ、科学的な部分が甘いのが残念でならないだけ。


お金を払う価値はちゃんとあるよ、と言うのを最後のまとめにしておきます



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