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04-12 タタコット
04-12 電話番号のしくみ
タタコット。
1995年、というのはわかるのだけど、こちらもいつ発売になったのかよく覚えていません。
Youtube の画像は、海外版の ROM を MAME で動かしたところ。
エレメカだからエミュレートも大変。まだ画面にエラー表示が出ていて、遊べません。
デモ画面のみです。
#MAME のエラーではなく、機器が正しく接続されていない、というゲームプログラム上のエラー
AM1研では主にテレビゲームを作っていたわけですが、このゲームは「エレメカ」扱いです。
通常の筐体に入れることができればテレビゲームなのだけど、特殊筐体が必要。
そして、特殊筐体なのでAM4研との共同開発、という扱いだったと思います。
ゲーム内容はもぐらたたきなのですが、「穴から出てくる」のではなく、画面を走り回ります。ゴキブリが。
そのゴキブリを、ハンマーでたたきつぶす。
画面に向かって、プラスチックとはいえ思い切りハンマーを叩きつけるのですが、もちろん画面はアクリル板で守られています。
そして、叩かれた位置がわかります。
今ならタッチパネルなんて当たり前ですが、当時ゲームに応用したのは珍しい技術。
「色物」なので、安くあげる必要があり、ボードは ST-V です。
先輩プログラマが1人で作っていたのではなかったかな。
いや、もしかしたら2人くらいいたか?
日本ではあまり売れなかったと思います。
というか、最初から日本で売れるとは思ってなかったみたいなのね。
日本では、こういうゲームにはあまり需要がありません。
でも、アメリカではまだ(少なくとも当時は)こうしたゲームは人気があったの。
日本語版が完成したら、すぐに英語版を作る作業が始まりました。
英語では Critter Crusher 。
ただ英語にして終わり、ではありません。
アメリカでこうしたゲームにまだ人気がある理由は、エレメカが Gaming 対応できるためです。
これ、法律の関係で、日本ではできないこと。
ゲームで高得点を出すと、得点に応じて「シール」が払い出されます。
このシールを集めると、景品がもらえる。
200枚集めて鉛筆、とか結構しょぼいのですが、ゲームの腕を磨くことを評価してもらえるのですね。
日本だと、ゲームセンター(七号営業)は景品を出さないと決められているので、こうしたことはできません。
タタコットの筐体写真を載せているページがありました。
素晴らしいのは、すぐ下にある Cabinets : Critter Crusher と書かれているリンクで、海外版の筐体も見られること。
比べてもらうとわかりますが、前面左側、日本では何もついていない部分に、海外版では何か機械がついています。
これが、ゲーム結果によってシールを払い出す「ディスペンサー」です。
ディスペンサーは、一般化された機械があって、ゲーム終了時に得点に応じてその機械を制御すればいいだけ。
論理的には簡単な対応です。
でも、実際にはこの「シール」は景品に直結する、金券と同じような扱いです。
ミスで過不足があってはならないし、バグでディスペンサーが動いたりしないように、制御プロトコルも厳密に作られていたみたい。
簡単だと思ったら結構制御が面倒くさい、とプログラマーの人がぼやいていました。
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全く別の2つの話を読み、自分の中でつながったので1本書く。
1つ目。
ツイッターで、「昔のモデムにリダイヤル規制が付いたときがあって、オムロンの Z80 を使用したモデム用のパッチが出回ったので、みんなそのモデム買って ROM 書き換えた」という話題を見た。
先日パソコン通信時代の話を書いたのだけど、この話題はすっかり失念していたな。
そんなパッチが出回ったことは知らなかったが、リダイヤル規制は知っている。
モデムという機器は、パソコンと音声電話回線を接続する機器だった。
普通の電話と並列につなぐことができ、モデムを繋いでも電話として使うことができる。
ここで、パソコンからコマンドを送ると、任意の電話番号に電話をかけられる。
音を認識することで、話し中とか、かかったとか認識することもできるので、つながらないなら即リダイヤル、という自動化ができる。
ところで、今ではライブのチケットなどを WEB で買えるが、当時は必ず電話する必要があった。
しかし、人気のチケットなどは電話回線が込み合い、つながらない。
そこで、パソコンを使ってひたすらリダイヤルする。
繋がったらすぐに受話器を取れば、そのまま会話ができる。
しかし、これが余裕のない電話回線をさらにパンクさせる、というので問題になった。
そして、リダイヤル機能がある装置には、必ず「1分間は同じ番号にかけられない」という規制がかかることになった。
先に書いた話題は、この規制を嫌って、モデムのファームウェアを書き換えたよ、という話だった。
でも、そんなややこしいことしないでも、簡単に規制回避できた。
当時は多くの人が知っている常識で、規制の意味は全くなかったんだ。
この話は、また後で続ける。
2つ目。
4月になって新入社員が入ってきたが、得意先の8桁の電話番号を見せたところ「番号が少ない」と言われた、という話。
あー、そうか。携帯電話だと、必ず11桁くらいの番号になるからね。
すでに固定電話の方法がレガシーなので、知らない人を笑うべきではないと思う。
でも、これを機会に電話番号のしくみは知っておくといいかもしれない。
今、これを読んでいるあなたは、固定電話の電話番号のしくみを理解しているだろうか?
固定電話は、市外局番、市内局番、加入者番号の3つのパートで電話番号が作られている。
同じ市内(厳密にいえば、同じ市内とみなされる電話局)の中では、市外局番がいらない。
先に書いた「8桁程度の番号」は、市外局番を省いたものだった、ということだ。
この程度は知っている人が多いだろう。
市外局番は、必ず 0 から始まることで認識できる。
ちなみに、1 から始まる場合は3桁の短縮サービス番号となる。110 とか 119 とか、189 とかね。
ということは、市内局番は必ず、2~9 の数字で始まる。
ところで、加入者番号は通常4桁だ。
1つの局…交換機に、0000~9999 の 10000 台の電話回線を収納できるということだな。
市内局番の長さは、不定。
なぜなら、電話の契約が多い(普通は世帯数の多い)市では、交換機がたくさん必要だから、番号も長くなる。
逆に、交換機があまり必要ない小さな市なら、市内局番は短くていい。
そして、市外局番も不定。
よく使われる大都市なら短い局番が便利だけど、あまり使われないところなら長くてもかまわない。
逆にいえば、市内局番の長いところは、市外局番を短くしないと不便。
市内局番が短い田舎なら、市外局番が長くてもかまわない。
そんなわけで、電話番号全体としては、大体10~11桁になっている。
携帯電話などは、特殊な「市外」として全体の番号を割り振った形だ。
市内局番は、ドコモや au 、ソフトバンクなど、キャリアごとに割り振られたので、市内局番に当たる電話番号を見ればキャリアがわかった。
ただし、現在は番号ポータビリティ制度があるため、電話番号だけでキャリアを判別することは出来ない。
さて、ここからが大切な話。
市外、市内局番の長さは不定だ。「ここで終わり」というような信号はない。
ただし、市外局番と市内局番は、頭の数字で見分けられる。
家の電話が接続された交換局では、最初に押された数字によって、市内の通話か、市外の通話かを見極める。
ここで、 0 から始まったとしよう。市外だ。長距離回線を使って、遠くの交換局と接続しなくてはならない。
0 の次が 3 なら…ここで終了だ。03 は東京だから、かけるべき都市が決定する。
でも、4 なら決定できない。04 は「東京以外の南関東地方」としかわからない。
044 なら川崎。東京ほどではないが、大都市なので3桁の短めの市外局番が割り振られている。
同じように、045 なら横浜市だ。
でも、046 ならまだわからない。神奈川のどこか、とまでは判別できるのだけど。
さらに続く番号を見て、0467 だと、やっと藤沢局だと判明する。
もっと長い市外局番だってある。
例えば、01 は基本的に北海道・東北地方なのだけど、01267 は岩見沢局の市外局番だ。
同じように、市内局番も「判明するまで」続く。桁数の規定はない。
ということは、だ。
電話番号が何桁になるかは、その電話番号によって交換局の中継を動かしている、電話会社にしかわからないことになる。
ちなみに、相手の番号が確定した後に電話番号の入力を行っても、相手にその音が伝わるだけで、電話システム的には何も起きない。
(書き忘れたが、電話番号は音として伝えられる。)
普段気にしていないが、これが非常に大切なことだ。
モデムのリダイヤル規制の話に戻る。
規制は、「同じ番号に1分以内にかけられない」というものだった。
でも、番号の桁数をモデムが知ることは出来ない。
先に書いたように、電話番号の桁数は複雑な方法で決まっていて、電話会社しか知らないからだ。
そして、桁数が多すぎても、相手に余計な音が伝えられるだけで、電話システム的に問題はない。
じゃぁ、モデムで電話をかけるときは、1桁多く番号を入れてしまえばいい。
規制は「装置」にかけられたので、モデムには規制する仕組みが入っていた。
でも、パソコンのソフトは規制外だったから、掛けたい番号に1桁自動的に追加して、連番でリダイヤルするソフトを作っても何も問題はなかった。
実際多くのパソコン通信用ソフトがこの機能を持っていた。
規制は最初からザルで、何の意味も持たなかったんだ。
以下は余談。
電話番号は音として伝えられる、と途中に書いたけど、電話をかけていないときでも、最寄りの電話局までの電話は常に繋がっている。
だから、ボタンを押したときの音、またはダイヤルを回した時のパルスを最寄りの電話局まで伝えられる。
そして、その音やパルスによって、交換機が動作して、別の電話に回線をつないでくれるんだ。
じゃぁ、電話のボタンを使わないでも、同じような音を通話口に流し込んだら、電話をかけられるか?
もちろん、掛けられる。
今の携帯電話では、電話帳機能が付いているのが普通だ。携帯電話は個人の持ち物だから。
でも、固定電話や公衆電話は個人の持ち物ではなかった。
そこで、個人でも「ダイヤラー」という、電子電話帳を持っている人がいた。
ダイヤラーは、電話のプッシュボタンと同じ音を出す機能を持っている。
掛けたい相手を選んで、受話器の通話口にダイヤラーをくっつけて音を出すと、相手に繋がる。
電話のボタンを使わないでも、適切な音さえ出せばちゃんと電話できる。
昔は、交換局同士の信号伝達も音で行われたそうだ。
ただし、電話機からその音が混信すると問題があるため、電話機には高い音を通さない回路(フィルタ)がつけられている。
交換局同士は、来るはずのない高い音で信号を伝達した。
じゃぁ、電話機のフィルタを外してしまい、高周波を出すとどうなるか?
これをやったのが、初期の電話ハッカーたちだ。
上手にやると、電話の課金情報を混乱させ、ただでかけることができる。
または、国際電話で地球を一周して、隣の部屋に電話をかけられる。
「キャプテン・クランチ」というシリアル商品のおまけについてきた笛が、ちょうどその高周波を出せた。
ジョン・ドレイパーはこのことを発見し、笛の音を使って電話システムのしくみを解き明かしていった。
彼はキャプテン・クランチというニックネームで呼ばれ、伝説となった。
#「今日は何の日」でこの人のことを書きたいのだけど、誕生日がわからないので書けないでいる。
Apple 社のジョブズ&ウォズも、回路的に同じことを行う、自動ただがけ装置を作成し、販売していた。
キャプテン・クランチが「システムを解体した」のに対して、彼らは成果を使って商売をしただけだけど。
パソコンが一般化する前、電話システムというのは、一番身近なブラックボックスだった。
ブラックボックスがあれば、入力に対する出力を調べ、中身を推察してみたい。
君はそうは思わないか?
電話ハッカーたちは、決して電話代をくすねたかったわけではない。
ただ、システムを調べたかっただけなんだ。
モデムのリダイヤル規制を無意味にする方法なんて、電話のただがけのような違法性の高い方法に比べれば、かわいいものだと言える。
でも、電話システムをちゃんと理解していないとできないことだし、電話ハッカーの名残を感じる。
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