2016年05月22日の日記です


JAMSTEC 一般公開日  2016-05-22 18:48:38  コンピュータ 歯車 家族

毎年恒例の JAMSTEC 一般公開日。

今年も行ってまいりました。


始めて行ったの、もう10年前になるんだな。


そのころは職員食堂しか解放されてなくて、食べるのに困りました。

最近は屋台も増えたのですが、ここ2年ほどは「深海ブーム」もあって、それでも食べるのは大変だった。


というか、最初の頃に大変だと知ったので、毎年お弁当を持って行っていきます。


…でも、今年は屋台に長蛇の列は出来ておらず、買おうと思えばすぐに買える状態でした。

見学できる場所も、例年よりも混んでいない。


どうやら、深海ブームはひと段落したようです。




ただ、10年前と違って展示内容は非常に幅広くなっているのね。


以前は、多少駆け足なら「全部見る」ことも可能でした。

でも、今は1日じゃ全部回りきれない。公開日は1日しかないのですが。


勢い、毎年大して内容が変わらないところは見ないことになります。


南部潜り実演とか、高圧試験槽とか、すっ飛ばす。

関連企業ブースは見たかったのだけど、見忘れてすっ飛ばした。

しんかい 6500もすっ飛ばす。今年は うらしま もいたみたいだけど、別に見ない。


でも、子供の要望でスタンプラリーは回ったし、コーラメントスによる「噴火実験」は見た。

毎年同じ実験なのに、子供には楽しいらしい。




今年の目玉は「かいれい」の公開。完成したばかりの新造艦です。


「ちきゅう」ほどの能力はないけど、40m のコアサンプルを、12000mの海底から採取する能力があるらしい。

そのために、ちきゅう と同じように船の位置を保つ、アジマススラスターも持っている。


巨大なクレーンで、海底の岩や泥を救い上げることもできる。

子供たちには「でっかい UFO キャッチャー」と説明した。説明は間違っていないと思っている。




船自体はそれほど多いわけではないのだけど、スペースを工夫していろんな機能を搭載している感じ。

それでいて、居住性も考えられているようで、操舵室も、食堂も、船室も、今までに見た別の船より広い(と思う)。


その分、船の階層が増えているようで、エレベーターまでありました。



さすが最新鋭の船で、船内 WiFi 完備。

そして、WEB ブラウザでアクセスするだけで、操舵室に行かなくてはわからない、船の現在地や向いている方向、傾きなどの情報を得ることができる。


これ、すごいと思うのだけど、すごさに気づいている人少なかったみたい。

タブレット端末を整然と並べてデモンストレーションしていたのだけど、整然としすぎて、そういう「コンソール」が置かれているだけに見えてしまうのね。


WiFi でアクセスできる…と説明を読んで、自分のスマホでも見てみました。

kaimei-wlan という WiFi 基地局が見えましたが、パスワードで保護されていて、アクセスは出来ませんでした。(当然)




どうでもいい話。


「かいれい」から下船したところで、郵便局の方が記念切手売っていました。

JAMSTEC の切ってもあるし、近くの海上自衛隊のものもある。とにかく船の切手です。

(「はいふり」こと、ハイスクール・フリートの切手もあった。でも、僕このアニメ知らない)


ここで、小さい子向けに飴玉配ってた。

「どうぞ」と言われて、じゃぁ一人ひとつづつもらっときな、と子供に行ったところ、「一つと言わず、一掴みで取れるだけいいよ」と。


どうも、その場にいた偉い人が独断で言ったらしくて、他の職員は一瞬「えっ?」って雰囲気になった。

でも、その人が「いいじゃん。一度やってみたかったんだ」と。


一番小さい次女が最初に挑戦。

…一掴みで、20個くらいとれました。個包装された飴玉だから、思い切り握ると袋の端が指の隙間に入り、たくさん持ち上げられる。


「うわ! 思ったより取れるなー」と偉い人。

申し訳ないので、これだけもらえば十分、と長男と長女は取らないように制しました。


多分、つかみ取り最初で最後だよね。




研究室へ。


例年、研究室を公開して実験などを見られます。

超臨界水とか、超臨界水を使った MAGIQ乳化とか、被写界深度を利用して凹凸の高さを測れる顕微鏡とか、過去に変わったものをいっぱい見せてもらってきた。


…でも、残念ながら今年は研究室には入れないようになっていました。

研究室前の廊下に張り出された研究成果を見て回るだけ。


今年一番興味を引いたのは、ゴエモンコシオリエビの飼育条件がわかった、という話。

いままで、飼育条件がわからずにすぐに死んでしまっていたのが、1年以上飼うことに成功したそうです。


条件がわかれば水族館とかで見ることもできるようになるわけだけど、それ以上に「極端な環境下で、生命がどのように維持されているか」がわかることがスゴイことです。


ゴエモンコシオリエビの場合、深海の熱水鉱床で生息しています。

海底の火山で温泉が湧いている環境。


そこで生きるのに必要なのは、この温泉の「熱」なのか、火山からいろいろ出ている「成分」なのか、それとも火山に集まる他の生物なのか…

可能性はいろいろあるわけです。


飼育条件がわかった、というのは、この多数の可能性の中から、利用している要素が絞り込めたということ。



ゴエモンコシオリエビは、食べ物もない環境で、自らの腹毛に硫化水素を栄養にできるバクテリアを増殖させ、そのバクテリアを食べて生きています。

そのバクテリアの増殖に必須なのは、硫化水素の濃度だけで、温泉の熱などはあまり関係なかったそうです。




研究室前の廊下で、チェン氏の講演を聞きました。

鉄で体を作る唯一の生物、スケーリーフットの研究者で、学名にも氏の名前が付けられています。


氏は子供のころから貝マニアで、スケーリーフットが発見されたときに深海の貝に強く興味を持ち、研究者になったそうです。

ここら辺の半生(と言っても、彼はまだ 26歳。この年でオックスフォード大学を卒業している!)を面白おかしく語った講演。


「マニアになると人生踏み誤るからやめといたほうが良い」というのが話の結論なのですが、どう考えても「そういう人生は面白い」と背中を押しているようにしか聞こえません。




いろいろ見ていたらあっという間に終了時間間際。

屋内展示をあまり見ていない、と慌てて本館に飛び込みます。


地球シミュレーターの紹介展示があり、そこでゲーム大会をやっていました。

地球シミュレーターでゲーム! 何て贅沢な! 何て才能の無駄遣い!


地球シミュレーターでは、地球に関する様々なシミュレーションが行われています。

海洋の流れの研究もその一つです。


ここで行われていたゲームは、刻々と変化する海の流れに乗せて、メッセージボトルを遠くへ届けよう、というもの。

日本の沿岸の好きな地点をスタートして、一番遠くまで流した人が勝ちで、商品も出ます。



終了間際で人も少なかったので、ゲーム内容もよくわからないうちに子供たちも参加。

最初に各自の色が決められ、画面上で好きな位置を示すことで、自分の色のメッセージボトルを投下します。


…という体で、Windows 標準の「ペイント」で、示された位置に色のドットをスタッフが置いていました。

おそらく画像が保存されて、ゲーム開始時にそこから色のドットを拾うんでしょう。


みんなが決めたところで、ゲームスタート。「3、2、1」とみんなでカウントすると同時に、スタッフの人がコンソールから「./a.out」を実行します。


a.out って、UNIX でプログラムを作るときに「特に名前を決めていない」と作られるファイル名ね。

1回限りのイベントで作った、どうでもいいプログラムという感じがすごく漂っている(笑)



この後、太平洋の地図の上に、各色の腺が引かれていきます。ボトルの流れた軌跡です。


同時に、画面左上には各色の最初の地点からの直線距離が出ます。

距離が長い順に並ぶので、一目で現在の一位がわかります。


これが、よくできている。

たとえトップを走っていても、急に海の「渦」に巻き込まれてしまい、動きが止まってしまうことがある。

この渦は、いわゆるカルマン渦。刻々と変化し続けるので、すぐ後に同じコースをたどったボトルがあったとしても、同じ動きにはならない。



子供たちが参加したレースで動きを見て、僕と妻も参加します。

さっきのレースの動きを参考に置いてみましたが、先に書いたように海流が刻々と変化するので、わずかな初期位置の違いが全く違う結果を生み出します。


ある程度想像がついて、でも運任せ、というのが非常にゲームとしておもしろい。



ちなみに、地球シミュレータをリアルタイムに利用しているわけではないそうです。

あらかじめ計算した海流データを利用してゲームを作った、というだけ。




地球シミュレータ、いつの間にか第3世代になっているのね…


2002年に完成し、速度で世界一にもなった初代は、640ノードでした。

1ノードは 8CPU で、全体で 5120CPU 、41TFLOPS でした。


2009年に置き換えられた第2世代は、160ノードに減りました。

1ノードはやはり 8CPU で、全体では 1280CPU 。しかし、性能は3倍以上の 131TFLOPS でした。


昨年 2015年に第3世代になっていたそうです。なんと 5120ノード。

今まで、1ノードがロッカーくらいの大きさのコンピューターだったのに、ブレードサーバーになってロッカーくらいのサイズに多数詰め込んだ、ということですね。


1ノードの CPU は1個に減ったのだけど、実は4コア。今までは1コアだったので、CPU = コアとして考えれば1ノードが 4CPU 。

全体では 20480 CPU になり、性能は2代目の 10 倍、1.3PFLOPS。


ちなみに、「2位じゃダメなんですか」という名文句で開発中止にされそうになったスーパーコンピューター「京」は、10PFLOPS です。

想定する利用目的とかが違っていて、計算能力のほかに、データ転送能力などにチューンの違いがあるので、単純に比較できないのだけど。



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