今日はラルフ・ベアの誕生日(1922)
世界最初のテレビゲーム機を作った人です。
もっとも、テレビゲームはそれ以前からありました。
当時は非常に高価だったコンピューターで、一部の大学生とか技術者が遊んでいた。
でも、ラルフはそういう立場にはいませんでした。
全く独自に、「テレビの使い道は、テレビ番組を見るだけではないのではないか」と思いついただけ。
だから、彼のアイディア自体は物真似ではありません。
試作品である BROWN BOX を作ったのは 1968年。
ゲーム専用に特化された機械で、「世界初のテレビゲーム機」です。
「テレビゲーム」という言葉自体、BROWN BOX の特許を取る際に作られた言葉なのだから。
この後、コンピューター上のテレビゲーム「SPACE WAR!」を見たことのあるノーラン・ブッシュネルが、安価な専用回路を組んで「COMPUTER SPACE」を発表します(1971)。
これが、発売されたものとして、また、業務用として初のテレビゲーム機。
でも、ちっとも売れませんでした。
ラルフは、BROWN BOX を改良・量産し、ODDYSSEY として発売します(1972)。
家庭用として発売された、初のテレビゲーム機。
しかし、新しいものというのは理解されるのに時間がかかります。
発売時にはあまり売れなかったようです。
とはいえ、最終的には 35万台を売る大ヒット。
ノーラン・ブッシュネルは、この ODDYSSEY の中の1ゲームをみて、業務用に改良し、PONG として発売します(1972/11/29)。
これが空前絶後の大ヒット。
ブッシュネル自身の作った ATARI 社で売ったものだけで1万台。
違法コピー基盤も含めれば、10万台を超えると言います。
…家庭用の 35万台と比較してはいけないよ。業務用は、1台のゲーム機で数百人から数千人が遊ぶのだから。
遊んだ人の数でいえば、ODDYSSEY の比じゃない、ということ。
実のところ、先に書いたように ODDYSSEY は最初から売れていたわけではありません。
PONG を遊んだ人が「家庭でも似たゲームが遊べるから」という理由で ODDYSSEY を買い始め、結果としてヒットになったのです。
世界的には「テレビゲーム」ではなく、「ビデオゲーム」と呼ばれることも多いです。
ビデオゲームという言葉は、PONG の宣伝文句として考え出されたものです。
以上の話は、以前に書いた世界初のテレビゲームとPONG発売日を再度まとめたもの。
ラルフは、テレビゲームを見たこともないのに全く独自に面白いものを作り出した…
というわけではなく、彼はゲームを見たことがないが、彼の下で働いた技術者がゲームを知っていたようです。
この話は、ラルフ氏の亡くなられた際に書いた追悼文に書きました。
今回は、ODDYSSEY 以降の彼の最大のヒット作、サイモン(1978)について書きましょう。
ラルフ氏は ODDYSSEY の発明以降、「発明家」として転身しましたが、テレビゲームよりも、むしろ手に取って遊べる「おもちゃ」を作るのが好きだったようです。
サイモンは、単純明快で面白いので、当時大ヒットしましたし、その後もシリーズ作が続きます。
上の動画が、オリジナルの機械。
これに似た機械を見たことがあるとか、機械は知らないけど同じようなゲームを知っているとか、みんな何かしら覚えがあるはず。
動画を見てもらえば遊び方は一目瞭然ですが、記憶ゲームです。
機械が指示したとおりにボタンを押す。ただそれだけ。
最初は指示は短いのですが、成功すれば「前の指示に追加」される形で長くなっていきます。
だから、一度は覚えて成功したはずのものを、何度も繰り返し入れないといけない。
何度も入れてわかっていたはずの場所で間違えると、妙な悔しさがあります。
つい「もう一回」となってしまう中毒ゲーム。
このゲーム、優れているのは、攻略法がいくつもあることです。
指示は「押すボタン」のランプを連続して点灯することで行われます。
しかし、ボタンには色がついていて、光ると同時に固有の音階が出ます。
このため、「位置」「色」「音」の3つが、同じ指示を出していることになるのです。
最初は一生懸命ボタンそのもの(つまりは位置)を覚えようとするのだけど、慣れてくると色の連続として覚えたり、目をつむって音に集中したりもする。
不要な情報を遮断して集中することで、むしろ記憶しやすくなるのです。
そして、どの情報が不要になるかが、人によって異なります。
ボタンが4つしかないのもいい。
単純だからこそ覚えやすいですし、失敗した時の悔しさに繋がります。
ところで、1970年代末期に「サイモン」といえば、まだ外国人の名前に慣れていない日本人にとっては、サイモン&ガーファンクルでした。
(サイモン&ガーファンクルは 1960年代に世界的に大ヒットした音楽ユニット)
で、昔 X68000 用に、「ガーファンクル」ってゲームがあった。
まるっきりサイモンなんだけど。電脳倶楽部の創刊号に入ってました。
X68000 では、キーボードの7つのキーに、LED が埋め込まれていたのね。
それなりのプログラムを組めば、当たり前だけど点灯を制御できた。
この LED キーを使って「サイモン」を遊ぶ、というアイディアでした。
だから、PC ゲームなのに画面を使わない。キーボードだけで完結している。
単純なのだけど、ゲームなのに画面を使わない、というアイディアに驚いた覚えがあります。
「サイモン」という名前は、欧米の子供の遊び「Simon says」から来ているそうです。
Simon は、13世紀のイギリスの英雄、Simon de Montfort のこと。
日本で言うと「赤白旗揚げゲーム」が近いかな。
Simon says ~ と言われたら、これは英雄の命令ですから、従わなくてはなりません。
でも、命令の前に Simon says がついていない場合は、偽の命令なので従ってはならない。
サイモンは言う、回れ右! サイモンは言う、腕を上げよ しゃがめ!
この例では、最後の「しゃがめ」は偽命令なので、従ってはなりません。
みんなでこの遊びをやって、正しい動作ができてない人は脱落、最後まで残った人が勝ち、という遊び。
単純な遊びなので亜流もいっぱいあって、「やれ!」と言われるまで、命令を覚えるだけで動いてはいけない、というのもあったみたい。
だから、命令の真偽を判別する上に、覚えておかなくてはならない。
ここら辺が、記憶ゲームを「サイモン」と命名した由来なのかな、と思います。
今でもサイモンは人気があって、時々シリーズの新作が発売されます。
先日、お店に置いてあった「サイモンエア」を遊びました。
子供が興味を持ったのだけど遊び方がわからなくて、僕が説明しながらプレイして見せたのね。
基本的にサイモンですが、ボタンが無くて空中に手をかざすだけでいい、という不思議感覚おもちゃ。
内容はやっぱりサイモンでした。単純明快な良さがある。
遊ぶ前は「古いゲーム」と思ってたのですが、今遊んでも十分面白いです。
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