僕がテクニカルサポート部にいたとき、機材の管理は重要な仕事でした。
でも、テクニカルサポートに配属される前から、機材管理が大変なのでよく仕事に駆り出されていたように思います。
一番大切なのが、半年に一度の「棚卸」でした。
部署が保有している資産を、全部確認して報告するの。これが、とてつもなく大変な作業。
一応、「前回」存在したはずの資産のリストと、前回以降に新たに購入したはずの資産のリストが総務部から回ってきます。
そして、「バーコードスキャナ」が貸与されます。貸与期間は、たしか3日程度。
全ての資産には、総務部から発行された「バーコード」のシールが、どこかに貼られているはずなんです。
リストに載っているすべての資産を、部署の中から確認して、証拠としてバーコードをスキャンしなくてはなりません。
スキャナ貸与機関の3日以内で。
開発用のパソコン本体…これは、プログラム課、デザイン課、企画課、つまりは部署内の全課の全員が持っています。
それと、パソコンのCRTモニタも。これらは資産なのでバーコードがつけられています。
バーコードの位置は、マチマチ。
大抵は、購入してから総務部に「購入した」という連絡がいき、数週間後にバーコードが発行されます。
その時点ですでに誰かが使用しているマシンなので、勝手にいじらずに、本人にバーコードシールを渡して貼ってもらうことが多いのです。
だから、人によってはわかりやすい場所に貼るし、人によっては目立たない裏側に貼ったりする。
キーボードやマウスは、本体の付属品扱いです。
プログラム課の部員は、開発用のゲーム基板や、ゲーム筐体を持っています。これらも資産に計上され、バーコードがついています。
これらを、各自の席を回ってスキャンしていきます。
とりあえず使う人がおらず、サーバールームや倉庫に眠っている場合もあります。
これらを片っ端からスキャンして…、大抵は「行方不明」の機材が数台残ります。
ここからが大変。「何の機材か」はわかっていても、誰が使っているかわかりません。バーコードの情報しかないのです。
持ってそうな人のところを回り、スキャンし忘れた機材はないか、探させてもらいます。
場合によっては、関連会社に勝手に貸し出されてしまっていたりもします。
…どのバーコードのものがどこの会社に、とまでわからないのですが、リストに「~~社に貸し出し中」と適当に書き、とにかく所在はわかっている、ということで許してもらいます。
先に「倉庫に眠っている場合も」と書きましたが、機材ごとに「減価償却期間」が決まっていました。
これは、バーコードの下に、購入日と共に償却年数が書いてあります。
減価償却って、会計処理上、帳簿上の価値がなくなったとみなす期間ね。
法人会計では、毎年の「利益」を、収入から必要経費を差し引いて求めます。そして、利益に税金が課されます。
開発機材などは「必要経費」なので、利益が出た年は機材をたくさん買ってしまえば税金が安くなる。
…なんてことができないように、ある程度高額で、数年にわたって使用することがわかっている機材などは、「減価償却期間」が定められています。
たとえば、6年で減価償却であれば、購入した年はその 1/6 だけ必要経費と認められます。
最初に購入した年に一括ではなく、6年にわたって少しづつ必要経費として計上されるのです。
…で、パソコンの減価償却期間が6年だった時代がありました。
でも、3年もたったパソコンは性能が低すぎて、開発にはとても使えなくなります。
「減価償却中の資産だから、捨てるわけにはいかない」と、倉庫に積み上げているわけですね。
実際には価値がなくなったものを、経理上の理由で、東京の高い土地代を払って保管しておかなくてはならない。
当時は慣例に従って倉庫に置きっぱなしにしていたのですが、捨てたほうが良かったのではないか…
#日進月歩のPCで、減価償却期間6年は長すぎる、ということで、現在は4年になっています。
また、20万円以下なら減価償却せず、一括で経費にできます。
減価償却6年の時代のPCは20万以上するのが普通でしたが、今は20万超えるのは高級機ですね…
「開発用のゲーム筐体」とは別に、「資料用のゲーム筐体」というものがあります。
参考に見たいゲームがあったら…自社製でも他社製でも、資料用として店舗営業部署に「借りたい」という申請を出します。
すると、どこからともなく調達されてくるのです。場合によっては(というか、多くは)新規購入されて届くこともあります。
こうした資料は、借りているだけで店舗のもの、という扱いなので、AM1研の資産ではなく、バーコードはついていません。
ゲームの開発などが終わり、資料としていらなくなったら店舗に返され、営業に使用されます。
でも、僕がいた時に別の部署から配属されてきた不慣れな企画課の上役が、資料に欲しかったゲームを部署のお金で買ってしまったことがありました。
半年ほどで資料としての役割は終わり、「いらないから処分して」と僕が言われたのですが…
勝手に処分できません。資産なのですから。
店舗営業部署に譲ろうにも、資産の移動も書類とかややこしくて面倒。
大型筐体で、部署内に置いとくのは邪魔なので処分してほしいと言われます。
困って事務の方に相談しました。
以前も書いたのだけど、「AM1研のお母さん」と言われていた、やさしい女性事務の方。有能でした。
総務部に問い合わせて、処理法を教えてくれました。
新品で購入して半年しかたっていないのだけど、廃棄業者に引き取ってもらいます。
そして、「確かに廃棄した」という証明書を発行してもらい、資産価値がまだあったけど不要だから処分した、という特別損失の書類を書きます。
あとで、購入してしまった上役の人に、「必要なゲーム資料があったら、購入前に相談してください」とやんわりと注意したようです。
店舗から借りれば部署のお金も使わないし、不要になった後も店舗で使えるから困らないんですよね…
資材管理をやりやすくするために、データベースを作りたい、とテクサポの課長が考えていました。
途中まで試作してあるのだけど、ここからどうしていいかわからないので、ちょっと勉強してみて、と言われました。
Postgres95(現在の PostgreSQL)を使って、PC 本体とモニタとマウスとキーボードを、製品についたシリアル番号を使って別々に管理しつつ、本体とモニタには社内の管理番号が何番かも紐づけてあり、さらにはそのセットを現在誰が使っているかわかるようにする、というものだったのですが…
まったく訳が分かりませんでした。
当時は僕は SQL データベース(DB)の知識持ってませんでしたから。
課長も知識を持ってなくて、やっていること無茶苦茶。
今の知識で書くと、こんなところがだめ。
・DB が「バックエンドで使われる」ことを理解しておらず、簡易インターフェイスの psql ですべて操作しようとしていた。
(最大のおかしな点)
・管理すべき機材の種類ごとに、別のテーブルを作っていた。
PC とモニタとマウスとキーボードは、それぞれ別のテーブル。
このやり方だと、ゲーム機筐体とか、ICE とか、わずかにしか使っていない機材ごとにさらに別のテーブルを作る必要があり、検索性などがどんどん悪化する。
・テーブル間をつなげるために「IDが必要らしい」と、製品シリアルなどとは別に、手動で一意管理しなくてはならない ID欄を用意していた。
あってもよいが、手動ではなくシリアル値を使わないと管理が煩雑になる。
一意な番号さえあればよいので、製品シリアルでも事足りる。
などなど。
「管理を簡単にしようとして、余計な手間を増やしているだけ」の状態でした。
しばらくDBの情報などを集めて検討し、「FileMaker Pro 買ってもいいですか?」と提案。
FileMaker は現在も存在しているDBソフトです。
SQL を使わず、GUI でデータ間の関係性などを示すことで、リレーショナルデータベース(RDB)を構築できます。
#RDB は、データとデータの関係性を示すことで、バラバラのデータを「意味を持ったまとまり」として扱えるデータベース。
SQL は、最初の RDB が使用した「関係性の示し方」で、この方法を使った DB 製品が多数出ています。
むしろ、SQL を使わない RDB というのは珍しいです。
FileMaker は、当時「WEB公開機能」がついた新バージョンが出たばかり。
これをマシンルームの NT サーバー上で動かし、誰の席からでも WEB ブラウザで閲覧できるようにしました。
また、管理者権限があれば WEB ブラウザからのデータ書き換えも可能です。
…でもね。
まだDBがわかっていなかったので、僕もこの時点でDB設計失敗している。
簡易インターフェイスで操作しようとしていた状態よりは使いやすい、というだけで、データ構造とかは課長の作ったものをそのまま移植しちゃったから。
「管理番号 xxxxx 番のマシン、レンタル期限きたから返さないと」とか言われたときは、すぐに持ち主を探し出せました。
でも、その程度。これならDBじゃなくて、テキストファイルで管理してもいいくらい。
さらに、みんなキーボードとかマウスとか、「調子悪くなった」とかで、あまり使わない人のものと知らないうちに交換したりしているのね。
DBに記載してある内容と、実際が食い違うことがしばしば。
DB導入で管理が楽になった、ということはありませんでした。
あ、しまった。
全部書いてから気づいたけど、この話、以前にも書いているじゃないか。
しかも同じタイトルで。
まぁ、一部違う話も書いているので、そのまま残しておきます。
鳥頭ですみません。
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