2011年03月17日の日記です


「輪番」停電について  2011-03-17 12:44:04  コンピュータ 歯車

基本的にこのページは自分の日記なので、あまり他人や社会に対する非難などは書かないことにしているのだが、強い思いがあるので書いておく。




どうも、「計画停電」という言葉が独り歩きしていて、「無計画だ」とか東京電力が批判されているのだが、本質を理解していないように思える。


もともと、東電は「輪番停電」と言っているのだ。ところが、輪番と言う言葉の意味が判らなかったり、テクニカルタームだと思ってしまうような人がいるので、「計画」という別の言葉を使うようになったに過ぎない。



「輪番」は普通に使われる単語だ。近年では「当番」や「順番」などの言葉を使うことも多いので「輪番」を使うことが少なくなって入るが、概念が微妙に異なるのでわざわざ違う単語がある。


「順番」は、順の言葉の通り、一方向に当番を入れ替える事を意味するのみだが、「輪番」は輪の文字の通りサイクリック(環状)になっている。つまり、最後まで行ったら強制的に最初に戻る。


ただこれだけの言葉である。

この説明を読んで初めて知った、と言うような人は反省するように。あなた方のために、東京電力は言い直さざるを得なかったのだ。




東電の電力網と言うのは、つまり「電気回路」に過ぎない。

発電所がダメージを受け、運用を停止しているというのは、電気回路で言えば電池の電圧が下っている状態に値する。


つまり、携帯電話で言えば、電圧が少ない状態だ。


携帯電話で電圧が下ったらどうすればよいか。もちろん充電が望ましいが、それが出来ない場合の話だ。

誰もが考えるのが、無駄な機能を使わないことだろう。


誰かから連絡来る事を考え、ゲームなどで遊ぶ事を控える。カメラなどは、使おうとすると「電池容量が少ない状態では使えません」などと、システムに怒られることもある。


つまり、電圧が下っている場合は、節電することや、一部回路への電力供給を行わないことが必要なのだ。

もし無理に電力を供給すれば、システム全体が停止し、復旧の見通しを立てることも難しくなる。



携帯電話の例では説明が難しいのでたとえを変える。

「一部回路への電力供給を行わない」とは、どのような方法か?


たとえば、あなたの家でコタツと電子レンジとドライヤーを同時に使うと、ブレーカーが落ちる、と判っているとする。

コタツと電子レンジを使っている状態でドライヤーも使いたい時、どうすればよいか?


答えは簡単。コタツを切るか、電子レンジでの加熱が終わるまで待てばよい。

ただこれだけのことだ。

どこかの電力を停止すれば、その停止分を他に回せるのである。




つまり、輪番停電とは、電力が足りない時に、全体の電圧が落ちて大停電を引き起こす前に、一部の電力供給を停止して、それ以外の箇所に電力を送る、という仕組みに過ぎない。


「電力が足りない時」に行うが、それがいつ来るかは想定できないため、停電該当地区の人にとっては「急な停電」に過ぎない。


ただ、救いなのは、システム全体が停止したわけではない、ということだ。一定時間後には、他の地域の電力をカットし、それまで停止していた部分は回復する。

急な停電は困るだろうが、確実に一定時間後に回復することがあらかじめわかっていれば、対処の方法もあるだろう。



ところが、東京電力が輪番停電を「計画停電」と呼びなおした。

ここでの計画は「想定外の状態にならないこと」程度の意味に過ぎない。あくまでも、電気の番人である東京電力側の言葉だ。


しかし、多くのマスコミ(と、マスコミに煽られた一般市民)が、計画なら計画を明らかにせよという。

停電は「東京電力の送電網」を単位として行われるだろうが、そんな内部的なものではなく、市町村名などの行政の都合による単位で明らかにせよという。


震災からわずか2日(計画停電、という言葉に変えて、計画を明らかにせよといわれ始めてからは1日なかったと思う)で、送電網という東京電力の都合による単位を、行政の都合による単位に変換し、概要を公表した東京電力はよくやったと思う。

その表は「概要」に過ぎず、不十分なものだったとしても。




さらに不可解なのは、この計画停電が無事回避されたときの反応だ。

東京電力は、電力網を可能な限り維持することが仕事である。停電しない地域を少しでも多くしたいし、全体が回避できるならそれに越したことはない。


だから、時間も3時間40分のうちの最大3時間、というように幅を持って定めてある。

この時間の中で電力需要を見ながら判断をしようとしているのだ。


その時間の幅の意味がわからない人がいうのだ。

「時間になっても停電しない」と。


さらに、努力によって停電を回避できた地域の人が言うのだ。

「停電といわれていたのに、停電しない」と。



停電が回避できたのは、この文句を言った人以外(文句を言うような人は、なんの努力もしていないに違いない!)の方々の節電の努力と、ギリギリの選択を続けている東京電力の担当者の努力の賜物である。

時間になっても停電しないとか、そもそも停電が行われないと怒るのであれば、自主的に電気を消して、他の地域の方に少しでも回せばよろしい。




これを書いているのは、まだ計画停電開始から4日目である。

東電は、輪番停電については、電力的にも計画をまとめる時間的にも限られたリソースの中で、賞賛される仕事をしていると思う。


もちろん、現状を全面的に肯定できるものではない。

電力を停めることで、社会的に損失になる箇所には24時間通電を行わないといけない。

(当初は、電力網の都合でそれは難しい、と説明されていたが、2日に電車などを無停電にすることで、技術的に可能であることを明らかにした)


止むを得ない事情で、緊急避難的にシステムを大幅に変更しているのだ。

当面は変更に伴う混乱は必至だし、周辺とのすり合わせをしながら、システムを安定していくのはこれからの仕事だ。

(でも、2週間程度で、不便ではあっても社会が回るようなシステムに持って行って欲しいとは思う)



それでも、東電に振り回されるのはごめんだ! と思う人は、電気を使わない生活を心がければよい。

最初から電気が無いと思っていれば、東電に振り回された、と感じる事もないはずだ。

その分必要な人に電気が回るので、こんなにありがたいことはない。


僕は、電力の恩恵には預かりたいので、現状の東電の「計画停電」を擁護しこそすれ、責めようとは思わない。

復旧の目処も立たない停電よりは、最大でも3時間(を2回)とわかっている停電のほうがありがたいからだ。




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