2015年01月16日の日記です


スーパーマリオとパックランドの関係性について  2015-01-16 13:56:05  コンピュータ

このテーマで書くのは3度目。


最初は、宮本さんの誕生日の記事でした。

そこで、ネット上に書かれていたスーパーマリオの製作に至る話を引用して記事を書きました。


引用した記事の骨子は、スーパーマリオは宮本さんが「パックランド」を研究して作られたものだ、というもの。

参考文献として書籍をあげ、その書籍から引用した「真実」であるかのように書かれていました。



しかし、後でその記事が「嘘だ」と指摘があったのを知りました。

細かな証拠などを挙げていて、納得できる内容の記事だったので信じていたのだけど、嘘だと指摘していたのはゲーム業界事情にもそれなりに詳しい方。


これはちゃんと調べねば…と思ったのだけど、僕の調べた限りでは、嘘だという指摘のほうがなんだかおかしい。

細かく検証して、「嘘だ、という指摘が嘘」であることを明かす記事を書きました


ただ、元記事に関しても「真実」として書かれている内容がかなり怪しいことも指摘。

どうも、捏造記事であることは事実のようでした。


元記事は「捏造」が入っているけど、ある程度の妥当性はある。

反論記事は全くのデタラメで、反論の体を成していない、という状況でした。


また、結局パックランドとスーパーマリオの関連性に関しては不明なままでした。



2回目の記事に対するコメントを、年末にいただいていました。

故・飯野賢治の書いた本に詳細が載っている、とのことだったので早速古本を探して入手。


ただ、年末年始は忙しくて読む暇がありませんでした。

該当部分は読んだのだけど、何か書くなら全部読破してから、と思ったので。



で、やっと読破したので引用を交えながら、この問題に決着を付けたいと思います。




まず、該当の本について。

スーパーヒットゲーム学」というタイトルの本で、飯野賢治が他のゲームクリエイター6人にインタビューした本です。


ネット上の評判では、意味が解らないとか、飯野賢治が偉そうすぎてムカつくとか、そういう意見もあります。


これは、「ゲーム作成経験者同士」だから分かり合えるような、一般向けでない話こそ知りたい、という意図でインタビューが行われているからです。

飯野賢治は年下であるにもかかわらず友達口調で話しかけているのだけど、これも気さくに話をしてもらうための配慮の模様。

(たしかに、元々偉そうな人ではあるのですが、話題のそこかしこに「尊敬の念」はあふれているため、僕は友達口調を馴れ馴れしいとは感じませんでした)


意味が解らないことに関しては、宮本さんに対するインタビューとしては、次のような部分がありました。

(スーパーマリオに関しての話題)


飯野 ところで、土管に入って下の世界に行くというのは、あれはどういう発想ですか? めちゃくちゃ変ですよ、あのアイデアは、普通考えつかない(笑)

宮本 その前作の『マリオブラザース』の時に、困ったんだよ、最初。下に行ったときにどうやって上に上げようか。あれは本当に困った。僕、数週間ずっと困っていてね。家の帰り道に崖からドカッと土管が出ているのを見て、プラスティックの簡単な土管やけど、そうか、土管に入っていって土管から出てきたら裏で不思議なことが起こっているかもわからん。それで、土管が『マリオブラザース』のキービジュアルになった。それから、土管を描き込むならニューヨークやと。

飯野 なんでよ(笑)。


この話題、これで終わりです。「ニューヨーク」って唐突に出てきて、それに関する説明は無し。

マリオブラザースのどこら辺がニューヨークなのか、全く意味不明。

飯野賢治の「なんでよ」ってツッコミは、そこに向けられたものなのですが、答えはありません。(宮本さんがこのツッコミに応えず、話を続けたため)


ただ、ある程度知識のある人なら言っていることの意味が解るでしょう。


ニューヨークの下水には巨大な白いワニが棲んでいる。


これ、結構有名な都市伝説で、アメリカ人なら誰でも知っています。


1930年代にはすでに出回っていた伝説で、ニューヨークの下水道整備が比較的早かったこと、それが故に誰も全容を理解できていないこと、非常に繁栄した都市であるがゆえに「負の部分」の噂を人々が面白がったこと、などが話の背景にあります。


下水道には餌となるネズミもたくさんいるし、白いのは日が当たらないため、などと信憑性を高める「小道具」もあふれています。

筒井康隆も小説のネタにしていたと思うし、アメリカの映画などでもネタにされます。だから、日本人でも知っている人は多いです。


ちなみに、この都市伝説にはバリエーションが多く「下水道にロシアの潜水艦が潜んでいる」なんてものまであります。

下水道を進んで行って潜水艦をやっつけるゲーム、なんてのもある。


こういう背景を知っていると「土管ならニューヨーク」という発想が理解できます。

そして、下水道の中に増えてしまった生物を退治する、というマリオブラザースが出来上がるわけです。


ここら辺が理解できない人は「何言ってるんだかわからない」という反応になるのでしょう。


#上の部分には何の解説もなく、本当に「意味不明」になりやすいのですが、ゲーム関連の話題に関しては、この本ではたくさんの脚注がついています。

 ただ、この脚注を誰がまとめたのか、間違えだらけなのね…

 飯野賢治は正しい認識で話をしている感じなので、脚注を付けたのは別人でしょう。そして、ゲーム愛が足りない。

 良い本なのですが、ちょっと残念な部分です。




飯野 なるほどね。でも、『スーパーマリオ』の登場は、すごく突然な感じがしたんだけど。ゲームの進化の中で突然あの世界は(笑)。

宮本 『パックランド』がありました。それまでにジャンプゲームと言うものを作ってましたでしょ。僕はナムコシンパで、ジャンプゲームをやってこないナムコにすごい敬意を払っていたんです。僕らが作っているジャンプゲームをいじってこない。ところが、『サーカスチャーリー』とか、よその会社からその手のゲームがどんどん出てきて、我が社も当然、一番最初の『ドンキーコング』のときにスクロール的なものを始めている。あの頃すでに、『スクランブル』とかはあったから、スクロール基板が欲しかった。それが、『マリオブラザース』で一応完結しましたね。しかし、でかいキャラクターのスクロールジャンプゲームとなると、うまくいかない。唯一あったのはカメを上から踏むっていうアイデアだけ。

飯野 何で突然、カメを踏もうと思うんですか(笑)。そこが変ですよ。

宮本 キャラクターが小さいと分かりにくいから、大きくなった時に踏むというジャンプゲームの実験はしてたんです。そんな時にナムコから『パックランド』が出てきた。ゲームセンターで、僕、東京に行ったときに『パックランド」が置いてあって、ナムコがジャンプゲームに手を出してくるのかと、それなら俺がやってやろうじゃないかと。それがきっかけ。


これが「パックランド」と「スーパーマリオ」の関係性を伝える核心部分。


詳しくない人のために解説しておくと、当時のゲーム業界は広がりを見せ始めた時期です。


みんなが「インベーダーゲーム」の真似をして出来上がったゲーム業界で、他社のコピーや真似をするだけでは、ライバルが多くて辛くなってきます。


そこで、アイデアを競う時代に入ります。一番突拍子もないアイデアを次々出し続けていたのは、ナムコ。ギャラクシアンはインベーダーの延長上にあるゲームでしたが、パックマンでは「食べる」、ディグダグでは「掘る」という動作でゲームを作り、マッピーでは「ドア」を武器としてしまいました。


誰も考えつかないようなものからゲームを着想する、この点でナムコは一目置かれる存在でした。


一方、任天堂は「ドンキーコング」で、ジャンプする、という動作を取り入れます。

(この書籍では、ドンキーコングが何処から着想されたかも明かされています)


このアイディアはすぐに他社にまねされることになります。

サーカスチャーリー(コナミ)は、その中でも特に売れたゲームの一つ。


でも、ナムコは真似しようとはせずに、常に「オリジナル」のアイディアを大切にしていた…

ここまでが、宮本さんが「ナムコに敬意を払っていた」と語っている理由。


ところが、ナムコは「パックランド」でジャンプアクションを作ります。

これに対し、ジャンプアクションは任天堂が始めたものだ、もっと良いものを作ってやる、というのがスーパーマリオを作るときの気持ちにあった、と語っているのです。




ただ、スーパーマリオがパックランドの真似か、というとそうではない。


パックランド以前から「横スクロールして、大きなキャラが冒険するジャンプアクション」の構想はあったと語っています。


いろいろ実験していて、アイデアの断片もあって、でもうまくまとまらなかった。

それがパックランドの影響で一気にまとまった、という形。



引用部分に「ドンキーコングのときにスクロール的なものを始めている」とあるのですが、多くの人が知っている通り、ドンキーコングはスクロールしません。


どうやら、ドンキーコングの時に「スクロールする」構想はあったけど、ハードウェアの問題で見送った、ということのようです。

「マリオブラザースで完結」というのも、スクロール「できない」という制約の中でやるのは、これで最後にしよう、という気持ちだった様子。



つまり、制約があって作れなかっただけで、かなり早い段階から「スクロールして冒険する」ゲームを考えていたようなのです。

スクランブルの話も出ていますが、あれは当時の大ヒットゲーム。同じような機能があれば…というアイデアは膨らんでいたのでしょう。


また、ジャンプアクションと横スクロールゲームのヒットがあったのだから、「パックランド」と「スーパーマリオ」が似ているのも道理。

真似したのではなく、時代の流れだった、ということになるでしょう。



ここら辺はインタビューの全体を読まないとわからないのですが、流石にすべて引用できないので、気になる人は本を入手して読んでください。




改めて、今回の記事に繋がる大元となった記事を読んでみました。

(すでに、執筆者により削除されていますが、インターネットアーカイブに保存されています)


元記事、あたかも「宮本さん自身が明らかにした事実」であるかのように書かれています。

しかし、今回読んだ本と食い違う部分が多々あります。


特に「パワーアップ」に関する部分は大幅に食い違っている。

宮本さんの思考では、スーパーマリオは最初に「大きなキャラが動く」という目標があって、それだけだと大味なゲーム展開になるので「やられると小さくなる」という形式が出来たのだそうです。


だから、ゲーム上はパワーアップに見えるけど、実際の思考過程ではパワーアップではない。

これをパックランドよりもわかりやすい「パワーアップのアイディア」を考えた、とする元記事は、明らかにおかしな内容です。


また、パックランドでは「攻撃手段が乏しい」ために踏みつけられるようにした、というのも違っている。

引用個所にあるように、パックランドを見る前から、大きいキャラで踏みつける、という攻撃方法は決まっていました。



これらの食い違いから、元記事は捏造記事だったと断じても良いかと思います。

実のところ、僕が2回目に書いた検証記事でも、おそらく捏造だという判断はしていたのですが、さらに裏付けられた形です。


宮本さんが明らかにした、という形式を取らず、外形から状況判断してこうだったのではないか…という類推記事であれば問題ないレベルだったと思うのですが、残念ながら宮本さんの名を語った時点で「嘘」と言われても仕方がない。


でも、嘘だと論じた反論記事は、すでに書いた通り反論の体を成していません。

反論記事の骨子は「スーパーマリオを作る際にパックランドが参考に出来るわけがない」という状況証拠の提示でしたから。


今回入手した本で、宮本さん自身が「パックランドが影響している」と語っています。

参考に出来るわけがない、という反論自体が、嘘です。



2つの問題記事、結局どちらも嘘でした、という結果です。

(これも前回すでにわかっていたこと)




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