2015年03月05日の日記です


登龍門  2015-03-05 14:57:37  業界記
登龍門

登龍門って、どのくらいの人が知っているのだろう。


落ち物パズルゲームです。

サードパーティ作品で、AM1研がサポートして世に出したもの。


いつごろ出荷されたのか記憶が定かでないです。

でも、1994 年の夏の終わりか、秋くらいだったんではなかったかな。



なんでも、セガの偉い人の知り合いのやっている会社が持ってきた企画なのだとか。

「手伝ってあげて」とAM1研に回されたものの、その会社はゲーム開発の経験が浅かったようで…



この頃、「落ち物パズルなら簡単そうだし、作れるだろう」って考える小さなソフトハウスが多くありました。


落ち物パズルの「処理」自体は確かに非常に簡単なことが多いです。

でも、そんなに甘くないよ。落ち物パズルって、ある程度形が決まっているからこそ、アイディア勝負になる。


そして、アイディア勝負っていうのは、何よりも難しいのです。


また、落ち物パズルは操作感が非常に大切。

これって、経験がものをいう部分なのね。こちらも甘くはない。




登龍門は、「ぷよぷよみたいなゲーム」を最初から目指していたようです。

ゲーム見たことある人ならわかるね。コンピューターのキャラクターが出てきて、漫才やって、対戦する。


でも、その企画書の時点で、ゲーム内容破綻していたのね。

仕様通りに作られた最初のバージョンはゲームになってなかった。


落ち物パズルゲームなので、基本的には「消し方」が重要です。

このゲームでは、四角いブロックの4隅に、1/4の円の模様が「ある」場合と「ない」場合があります。


これを組みあわせて円を作ると、その円を作った4つのブロックが消えます。

4つ組み合わせると消える、というぷよぷよの亜流になっている。


自分が操作する、上から落ちてくるブロックは、これもぷよぷよのように2つ組です。

ぷよぷよと同じように回すことができ、横向きに置くと切り離されて落ちることがある。


まぁ、全体的にぷよぷよの真似です。ただ、落ち物で一番重要な「消し方」は違うものにしてある。

企画書を見るだけでは、それほど問題があるようには見えません。




実際作ってみると、問題点が多いことがわかります。


ぷよぷよでは、ブロック全体の「色」だけが重要でした。

でも、登龍門では4隅が重要なのです。


ブロックの「4隅」を回転させないと、円を作るように模様を配置することはほぼ不可能です。

そこで、ブロック回転時には、模様も回転するようにしました。


しかし、模様だけでなく、2つ組のブロックが一緒に回転します。

ブロック「全体」を置きたい形にすれば模様が好きな形にはできず、模様を好きな形にすると、ブロックを置く場所が制御できません。



「積みあがった」ブロックを消す方法がほとんどないのも問題でした。


ブロックは4隅のうちどこかの「模様」を4つそろえると消えます。


極端な話、模様が1つもないブロックがあれば、絶対に消せません。

模様が1つしかついていないブロックがあって、うっかり模様を壁側に押し付けて置いたら、これももう絶対に消せなくなる。


消せないブロックは壁と同じなので、どんどん壁を増やして、永遠に消せないブロックだらけになります。



もちろん、「連鎖」なんて狙えません。理論上は連鎖が出来るはず、というルールなのですが、現実問題として連鎖はおろか、1つのブロックを消すことすら大変なのです。




問題の根源を考えていくと、ブロックの組み合わせが問題であることがわかります。


ぷよぷよでは、ブロックは6色ありました。これが2つ組で落ちるので、6*6=36パターンのブロックがあります。

「切り離す」ことができるため、36種類ありますが、「待つ」際には1/6の確率で良かったりもします。


テトリスでは、4つのブロックがくっついて落ちますが、この形は7パターンでした。

「待つ」場合も、1/7の確率です。


登龍門では、1つのブロックの4隅の模様の「ある」「なし」の組み合わせでブロックが形成されるので、16種類あります。

(ある、なしの「2つ」のパターンが、4隅にあるので2*2*2*2 = 16種類となる)


これが2つ組で落ちてくるので、落ちてくる際のブロック形状は256種類あることになります。


切り離せたとしても、待ち確率が 1/16。実は、「隣接する模様」が大切なため切り離しが上手く使えない局面も多く、ひたすら待つことになります。


そして、待つ間に積み上げたブロックは、先に書いたように自由に消すことが難しいのです。



AM1研担当者は、最初のバージョンが来た時点で「ゲームになっていない」として、何が問題か詳細に示したレポートを返したようです。




担当者が期待していたのは根本的なルールの見直しだったようなのですが、次のバージョンでは、難易度を大幅に下げるルール改変が行われてきました。


ブロックを消した際、消える4ブロック(必ず四角くなっている)に隣接する8マスのブロックには、消すために作られた円に最も近い位置に、それ以前の状態に関係なく1/4円が発生します。


言葉で説明するのはわかりにくいので、図を出しましょう。


右の図で、右端の矢印部分のブロックが新たに落ちてきたものとします。

ピンク色のブロックと組み合わさって「円」ができ、ブロックは消えます。


この時、緑色のブロックには、ピンク色のブロックと同じような「半円」が生じます。

上の水色のブロックの右下角にも「1/4円」が生じます。



これにより、連鎖を組むことが非常に容易になりました。

ゴミを詰めておいても半円が生じることがわかっているので、残りの半円だけを、連鎖するように組んでおけばよいのです。


いま説明に使った図では、縦に4段積んでおり、上の2段には左向きの半円を作ってあります。

下の段は、円はピンク色のブロック以外存在しません。どのようなブロックでも構わない、いわゆる「ゴミ」で構わないという意味です。


先に書いたように、ピンクが消えると、緑がピンクと同じ状態になります。

そして、ピンクが消えたのですから、上から水色が落ちてきます。


その結果、また円が出来上がります。緑の隣がまた半円になり、緑の上の半円が降ってきます。

以下繰り返しです。



このゲームの目的は「円」を作ることですが、ほとんどは「半円」で十分なのです。


半円を作れるブロックが来たら上に積み、それ以外のゴミは下に詰める。

最後に、1か所だけ円を作れば、後は勝手に連鎖します。


この時のバージョンでは、この戦略でエンディングまで延々と遊べました。

気付いてしまえば、誰でも100円で30分遊べる。


ブロックを組んでいく、というパズル性は失われ、非常に作業感の強いゲームになりました。

簡単に言い直せば「つまんない」ってことですが。



また担当者が頭を悩ませ、レポートをまとめます。


業務用のゲームでは、1回たったの100円しか入れてもらえません。

店舗の採算を考えると、100円での平均プレイ時間は3分間が望ましい、とされていました。


1ゲームがだいたい3分で終わるように、難易度調整をお願いします。




これに対しての返答は驚くべきものでした。


「3分で終わらせるっていうのは、タイマーを用意して3分で強制終了でいいでしょうか?」


そんなのゲームじゃねぇって。

担当者氏、あきれ果てて何を言ってよいものやら、周囲に愚痴りました。


#僕はこの時点で経緯を聞いたので、これ以前の記述は間違えているかもしれない、と断っておきます。

 これ以降だって、20年前の記憶によるものだから間違ってるかもしれないけどね。


結局、業務用ゲームにとって難易度調整がいかに重要なものか、難易度調整を敵の強さで行うのだ、という当たり前のことから延々と解説し、理解してもらえたようです。




次のバージョンでは、勝ち進むとだんだん敵が強くなるようになっていました。


…ただ、先に書いたようにこのゲーム、パズルとしては破綻しているのですね。

パズルじゃないから、「敵のあたまがよくなる」ことでの難易度調整はできません。


どうやったかというと、敵側のフィールドだけルールが変わる。


どう変わるのか詳細は覚えてないのですが、自分はある程度連鎖を組まないと攻撃ができないのに、敵は1個消すごとにものすごい数の「お邪魔」を降らせてくるんじゃなかったかな。


これにもまた担当者氏は頭を悩ませていたのですが、やがて吹っ切るように、もういいや、って言ってました。

結局、これ以上はゲーム内容には意見せず、要求仕様(コイン周りの動作など)が正しいか、致命的なバグが無いかなどの確認だけ終わらせて発売したはず。




このゲーム、企画時点で売れないと思われていたのか、「システム16の在庫整理」名目でした。

そんなこと、申し訳ないから作成会社には伝えてないと思うけど。


ゲーム基板って、ある程度まとめて作って、その上にゲームの ROM を載せて販売します。

場合によっては ROM 交換だけ、というのもあります。


で、新しい基板に主力ゲームが移行していくと、古い基板の在庫が残るので一掃しなくてはなりません。

こういう時は、「企画時点であまり売れ無さそうなゲーム」を作って、在庫数が無くなった時点で販売終了にするのね。


登龍門は残る在庫基板の分だけ生産され、全部を売り切って不良在庫になることもなく、特にヒットするわけでもなかったために再生産がかかることもありませんでした。


#在庫整理目的でも、ゲームがヒットしてしまえば基板から再生産することがあります。手相占いがそうだった。

 基板はある程度の単位でまとめて作るので、また在庫が残ることになるのだけど。



システム16は、1985年が第1作だったそうなので、登龍門まで9年間も現役で活躍していたことになります。

(もっとも、機能的に類似だが互換性のない、A/Bの2種類がありました)


古い基板だったから多分販売価格も安く、「ぷよぷよみたいなゲーム」ということで買ってくれたお店もあると思います。


でも、大半はセガの直営店に卸すことで消化したのではないかな。

当時はセガの運営するゲームセンターだけで3千店くらいあったから、そういう調整が可能でした。




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