今日はパラケルススの命日(1541)。
多くの人にとって、誰それ、って人ですね。死んだのが16世紀ですから、コンピューター関連ではないです。
でも、ゲーム関係ではあるかな。
RPGなんかで出てくる魔物やアイテムなどの元ネタは、結構パラケルススの研究から引用されているのです。
僕が中学から高校の頃って、ドラクエなどのRPG全盛期。
D&DやT&T(いずれもテーブルトークRPG)でもよく遊んだし、こうしたファンタジー世界が大好きでした。
ちなみに、「パラケルスス」は、本人が名乗っていた通称。
「ケルスス」は紀元前ローマの名医の名前。
「パラ」は、超えるという意味です。
パラケルスス、で、伝説の名医を超える、という名前なのです。
本名は、テオフラストゥス・フォン・ホーエンハイムだったようですが、正確にはわかっていません。
実際には、医学に革命をもたらした人…のようです。
それまで伝承として伝わってきた薬の効能を追確認し、効能がない薬を排除し、それまで使われていなかった「鉱物」を薬として使い始めました。
特に、鉱物を薬として使用する際、1つだけを使用するのではなく、数種類を混ぜて科学反応を起こします。
「植物の持つ生命力によって治癒する」というような考え方ではなく、「病気に効く薬を精製する」のです。
水銀とかヒ素とかも薬に使っています。
もちろん毒性を持ちますが、毒だからこそ病原体を殺し、治癒もします。
彼は、それが毒であることも十分承知していましたが、「服用量が毒を作る」と考えていました。
わずかであれば薬となり、多すぎれば毒となるというのです。
これは当時としては全く新しい考え方でした。
現代の薬も、この考え方の延長上にあるため、「用量用法を守る」ことが徹底されます。
病気の原因についても、当時一般に信じられていた「体液のバランスが崩れる」というものを否定し、星の影響(医療占星術)を提唱していますが…まぁ、これは現代的に見ればどちらも間違っている。
他にも、四元素説に代わる三原質説を唱えています。
四元素(火・風・水・土)を否定するものではないが、これらはもっと基本的な三原質(硫黄、水銀、塩)から作られている、というのです。
特に、パラケルススは水銀を「宇宙の始原物質」と考えました。
これ、四元素説よりはよっぽど「科学的」な根拠があります。
錬金術は金の精製が最終目標ですが、水銀は金を精錬する際に使用された物質でした。
その水銀は、辰砂という鉱物を熱し、発生する蒸気を冷やすことで取り出せます。
辰砂は硫化水銀なので、硫黄も一緒に生成されます。
このように取り出した水銀は液体金属で、硫黄は有毒な二酸化硫黄ガスとなります。
しかし、反応時に塩を入れておくと、水銀は塩化第二水銀となり粉に、硫黄は硫化ナトリウムとなり、透明な結晶になります。
これらは、また混ぜたり熱を加えたりすることで、元の水銀や硫黄ガスに戻せます。
つまり、この「三原質」は適当に決められたわけではなく、金と反応しやすい水銀と、さらに水銀と関連の深いものが選ばれているのです。
この点で、根拠がない四元素よりも科学的です。
もっとも、それらが「宇宙の根源物質」かといえばそうではない。
当時の知識だから、今から見ると間違ってる。
でも、それはこの際問題ではありません。
その時の最新の知見を用い、過去に正しいといわれていたことを疑い、再検証する、という方法を確立したことがすごいのです。
ただ、四元素は紀元前から信じられている説で、パラケルススも完全否定はしていません。
三原質の作用で四元素が作られる、としたうえで、この四元素には、それぞれをつかさどる精霊があるとします。
火のサラマンダー、風のシルフ、水のウンディーネ、土のノーム。
これまでの「四元素」は単に物質だったのでが、パラケルススによってそれらに人格が与えられたのです。
#化学的に基本物質として認めがたいが、昔から信じられているものを否定するのも難しいので、精霊という「心の問題」に切り替えた、というべきか。
ちなみに、パラケルススは「錬金術師」といわれますが、金を作ろうという考えはあまり持っていません。
しかし、錬金術の手法で万病に効く薬を作り出せると考えていて、その薬を「賢者の石」と呼んでいます。
さて、ゲームなどに登場するパラケルスス。
まずは、上に書いた四精霊。ファンタジーの世界観には欠かせません。
「賢者の石」も、ファンタジーではよく出てくるアイテムです。
ハリーポッターの第1章も、サブタイトルは「賢者の石」でした。
医学の改革者であり、生命の謎にも興味があったようで、彼が「人工生命」を作り出した、という伝承があります。
著作物に作り方が書いてある、とされるのですが、ちょっと眉唾。
というのも、彼は実地の知見を求めて各国を放浪した医師であり、生前に本など書いていないためです。
もっとも、膨大な文書を残したのは本当のようです。それらは死後、整理され、出版されました。
ただ、この際も「パラケルススの著作だ」と騙った偽物が多数出版されているのですね…
ともかく、この人工生命、ホムンクルスと呼ばれます。
人間の精液をもとに作るとされていて、最終的には人間の赤ちゃんに育つものの、大きさは非常に小さく、フラスコから出すと死んでしまうようです。
ホムンクルスは「小さな人間」として、ファンタジーでは時々見かける魔物。
パラケルススが Azoth と書かれていた剣を持っていた、という伝承があります。
この言葉、意味も発音も不明。
ただ、後の錬金術師が「アゾット」と読むことにして、意味を「A から Z」つまり、始まりであり、終わりである、の意味と解釈しています。
これ、パラケルススがそう言ったり書いたりしたのではなく、彼の死後別の人が解釈しただけ、というのがみそ。
だから、もっと違う意味だという諸説にあふれています。
さらに、剣の柄には宝石が埋め込まれていたとか、その宝石こそが「賢者の石」だとか、剣の中に使い魔を封印していたとか、いろいろな伝説が入り混じっています。
謎が多いからこそ、想像の入り込む隙がある。
パラケルススの持っていた剣は「アゾット剣」と呼ばれ、ファンタジーのアイテムとして登場することがあります。
#剣ではなく杖だという説もある。蛇の巻き付いた杖が、医療のシンボルだからだろう。
でも、アゾット剣を携行していたのはパラケルススが軍医をしていた時代だというので、剣でいいのではないかと思う。
…鋼の錬金術師は読んでないからよく知らない。
錬金術、という世界観をテーマにしているだけに、パラケルスス関連のものたくさん出てくるみたいだけど。
(この文章書くために調べものしていて、時々引っかかる…)
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